2023年4/29【640】very good 難易度2

あまりに凄惨な事件のため当時から報道規制が敷かれていたという『北九州連続監禁殺人事件』。
その主犯格の息子へのインタビュー。
 



上手く言えないけれど、なんてできた人なんだろう、と思った。

異常な環境で育った彼にとってはその『異常』こそが通常であった。
保護されて以降、当然心に大きな闇を抱えているし、理不尽な環境に耐えながら生きている。

それなのに、どうしてこんなにも前向きに生きていられるのだろう。

主犯格である実の父親から自身も虐待されて育ち、保護された後も周りと馴染めず『保護者がいない未成年』という理由で社会から弾かれ八方塞がりになりつつも、自暴自棄になることなく今をただ懸命に生きる。

今に至る道のりはきっと壮絶なものだったに違いない。
どれだけの苦しみを味わったのか想像すら及ばない。

けれど、彼が今を強く生きていられるのは、本人も言っているが、それは周りの人に恵まれたからに他ならないのでは思った。


頻繁に連絡を取り合うわけでなくとも決して離れることなくいつも気にかけてくれる。
困ったときはいつでも相談にのってくれる。
大勢でなくていい、常に一緒にいなくてもいい、『友達』や『親友』なんてネーミングも必要ない、ただ、心の片隅でいいから、お互いに思いやれる。
そんな相手が、彼には多いのだ。


人とのご縁に恵まれた彼がただラッキーだったのか?
違うと思う。
たぶん彼は、いつも真摯に相手に向き合っていたのではないだろうか。
だから相手も彼に真摯に向き合ってくれる。

人間関係はキャッチボール。
たとえ変な方向に球が飛んでいったとしても、芯のあるボールを投げれば、きっと相手も返してくれるのだ。

彼は言う。
『どういう家庭環境で育ったかはたいした理由じゃない』。
親のせい、環境のせい、社会のせい。
確かにその影響も決して無視はできないだろうが、それでも未来を切り開くのは、自分自身なのである。


彼のように異常な環境で育てられた子どもをどうケアするのか。
そのシステムが整っていないというのは、罪を犯した親本人以上に苦しまなければいけない彼らの厳しすぎる現実だと感じた。

また、逮捕後に謝罪の言葉を口にした母親に対しては嫌悪感を抱く一方で、決して自らの非を認めない主犯格の父親に対しては、嫌悪感を持ちつつも認めてほしいというかどこかですがっている感情が見受けられるように感じた。
人間の心はとても複雑なのだ。
その感情が何なのか、自分でもわからない感情もある。


そして主犯の男のように、人の気持ちを読み取ることに天才的なスキルを持つ者も実際に存在する。

そんな男の実子として生を受けた彼も、ある意味で人の気持ちを読み取るスキルに長けているのだろう。

相手が差し向けてくれる眼差しを素直に受け止め、父親とは反対に、自らの人生を豊かにするために、彼は生まれ持った素質をポジティブに生かしている。

生まれ持った素質をどう生かすかは、自分次第。
生きていくとは、他人と関わっていくということ。


それが読了後の感想である。


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