2022年9/3【572】very good!難易度3
2022年ノンフィクション大賞ノミネート作品を読もう第2弾。
目の見えない人と美術館に行く。
さっぱり意味がわからない。
そのうえ本の厚さが予想外に厚く(約3cm)驚く。
一体何をそんなに書くことがあるんだろう?
私にとって美術(特に現代)は『意味がわからないもの』である(~19世紀の西洋美術は好き!)。
ゴッホを見ても「ひまわりだね」。
ピカソを見ても「??」。
マーク・ロスコなんて「こんなのずるい!」。
かろうじてダリの面白さならわかるかも。「この人、狂ってる」
絵画の価値も良さもわからないし、そこから得られる特別な感情もない。
晴眼の私ですらそのレベルである。
そこに盲人が行って何がわかるというのか。
本書の最初でガツンと頭を殴られた衝撃だった。
そうか。そういうことか。
もし盲人と美術館に行ったらどうなるか考えてみればわかることだった。
そこまで考えが及ばなかった想像力の乏しさと『盲人が美術館に行く』ということをハナから意味不明外認定していた自分が恥ずかしくなった。
年に何十回も美術館に通うという全盲の白鳥さんは「わかること」ではなく「わからないこと」を楽しんでいるという。
作品に関する正しい知識や解説に「一直線に正解にたどり着いてしまったらつまらない」。
混乱し、筋書きのない状態から得られる情報こそが面白い。
ひとつの作品にあるものはたったひとつの正解ではなく、様々な見方な解釈なのだ。
そして自分の感情や気付きをきちんと言葉にすることの意味。
言語化する。アウトプットする。
そこで改めて自分の思考を認識する。
場合によっては他人のそれを。
そこから広がる新しい世界。
そういうことか。
コミュニケーションて、人の顔色を伺いながら話をするのではなく自分の思いを素直に吐き出すことって、人の意見を尊重するって、大事ね。
全盲の白鳥さんとアートを見て得られることはこんなにも(他にもたくさん)多かった。
本書を読み美術館と同様それ以上に『盲人』についての興味がわいた。
なぜ白鳥さんは美術館に行くのだろう。
目が見えないのに。
知らない世界は怖くないのか?
居心地が悪いのではないのか?
その答えは盲人に限らず私にも当てはまること。
知らない世界を覗き込んでみること、飛び込んでみることに、前向きになれた気がする。
たくさんのことを新しく知ることのできた本書だが、備忘録として特にマリーナ・アブラモヴィッチをアウトプットしておく。
やはり天才偉人と奇人変人は紙一重と言うか、この人の生き方やパフォーマンスは、戦慄。
というわけで先日早速一人で美術館に行き『目の見えない白鳥さんとアートを見にいくごっこ』をしてみた私である。
以前の私だったら「ふーん」で絵の前を通りすぎていただろう。
隅々まで絵画を注視し、心の中で明確に言語化して鑑賞してみる。
ぬぬ、確かになかなか奥が深いかも!
次はぜひ誰かと一緒に白鳥さんごっこをしたいところだが、あいにく美術館は静かにしなければいけない場所なのが残念である(実際となりの二人組のヒソヒソ声が気になって絵画に集中できなかった)。
《後日追記》
2022年ノンフィクション大賞に本書が選ばれました!納得。
🌼コメント宜しくお願いします😊🌼