2022年1/20【510・511】very good 難易度2


なんもしないサービス。
何ソレ?
一体どんな需要があってそんなサービスが成り立つの?
と思って読んでみた。


本書は『レンタルなんもしない人』さんの、Twitter初投稿から半年後のテレビ出演、そして一年後のドラマ化決定(!)までの出来事を綴った、ノンフィクション・エッセイ。


信じられないがサービス開始直後からほぼ毎日2~3件の『なんもしないレンタル』依頼があるという。


本書を読み、個性的すぎる依頼内容を見て思ったこと。

当たり前だけれども、人間は多種多様で一人一人が違う生き物なんだということ。
私だけ?それでいいじゃない!
皆と同じでなくて当然。

そして矛盾しているようだが、皆が『皆と同じ』人間なんだということ。



自分以外の人はみんな人生上手くやっていそうな顔をしている。
特別大きな悩みもなく人生を謳歌している。
ように見える。

だけれども。

本当はきっと誰もがどうしようもないことで悩み、
自分一人で勝手にストレスを作り出しそれに苦しめられ、
自分にも理由のわからない変なフェチがあり、
誰にも言えない秘密を抱え、
人の目を気にしすぎ、
みんなに認められたいけれど評価されるのは気に入らなくて、
何かを乗り越えたくてでも乗り越えられなくて、
一人でいたいけれど一人でいるのが嫌で、
ただ誰かに側にいてほしくて、
ただ「大丈夫だよ」と言ってほしい。

誰だって本当は淋しいんだ。


一人でクリームソーダが飲みたいけれど飲めないおっさん。
著者に度々Amazonギフト券を送っては少額で無駄遣い欲を発散している借金滞納者。
孤独な風俗嬢。
惚気話がしたいレズビアンカップル。
散歩に行きたい自宅療養中のうつ病患者。
閉鎖病棟にいる自殺未遂の女性。
客の来ないお店の店長。
自分の臭いが気になって仕方がない対人恐怖症。
レンタルさんの活動を「新手のヒモ」「新手の乞食」呼ばわりしいちいち噛みつき批判してくる匿名の人々。
オウムの元信者に、元人殺しに。


色んな人がいて、みんな誰にも言えない自分を持っている。
誰にも言えなくて、でも一人で抱え込むのは辛すぎて。
(だから匿名で誰かを攻撃したり、つるんで誰かをいじめたりして)。


そんな依頼者たちが頼るのは、家族や親友といった自分をよく知る人ではなく、全くの赤の他人の『レンタルなんもしない人』(厳密に言えばTwitterを通して微妙に知ってる人なところがポイントらしい)。


依頼のあとに呟く依頼者たちの感想には、とっても深イイものが多い。

『一人で静かに考えたり現実から解放される時間が今の自分には重要だとわかりました。一人だけど一人じゃない、一人にさせてくれる自分のための他人がいることはとても贅沢だと思いました。』

なかなか考えさせられる哲学的な本でもあった。


人との繋がりは大切だけれども、その繋がりがかえってストレスになることもある。
そのバランスはなかなか難しい。

なんもしなくていい、ただそばにいてくれるだけで。
ただ私の話に耳を傾け『わたしがここにいること』を知ってくれる人が隣にいてくれれば。
それだけでいいのだ。


凹んでるときは世界が狭くなる。
けれど本書を読んだら少し楽になる気がする。
世の中、
いろーーんな人がいて、
いろーーんなことで悩んでいるんだな、
って。


🌼コメント宜しくお願いします😊🌼