2020年 2/16【315】very good!
難易度3


我々が抱いている楽聖ベートーベン像とは捏造されたものである。
一体誰が、どうやって、何故に捏造を?

本書はその真相に迫る!


我が敬愛するマエストロ。
彼は優れた音楽家になるため幼少期から厳しすぎる練習に耐えてきたのだが、20代半ばから徐々に聴力を失ってしまう。

そして誰にも悩みを打ち明けることができず、やがて人を遠ざけるように。

それゆえ周囲からは気難しい変人と噂され、耳が聴こえないなか、それでも、それ故に!?

…人類の至宝ともいえる名曲の数々を作曲する。
(くぅ~泣ける~ぅ!)


そんなマエストロが晩年使用していた『会話帳』なるものに改竄が加えられた。
犯人は彼の『無給の秘書』であるシンドラー。
 

そのシンドラーがまた。
ねぇ!!
『事実は小説よりも奇なり』
ここでも出ました。
(ある意味本書も限りなく小説に近いのかもしれないけれど)

シンドラーに翻弄されるマエストロ。
名曲誕生の影に、この苦労あり。
しかし今日のベートーベン人気も、名プロデューサー・シンドラーがいたからこそ、なのではないか。


テーマが非常に学術的な本書。
こういうのは本場ドイツの研究者によって発表されたものを日本語翻訳で読むものでは?と初めは訝しく思っていたのだが、全くの杞憂だった。

人の心の中は推測するしかない。
根拠のある資料を元に考察されているとは言え、登場人物の心の声はあくまで著者の想像力の賜物である。

しかし著者の文章がまた痛快で、翻訳物では決して伝えきれないであろう絶妙なニュアンスはまるで登場人物が憑依したのかと思えるほど。

翻訳特有の堅苦しいお上品な言葉…ではない、親近感溢れるマエストロの心のツッコミには何度も笑わさせられたし、なにより彼の苦悩、そう、耳疾以外の『人間だもの』な苦悩に、時代を越えてものすごく共感。

でもね~、
巨匠に尽くし頼られたいシンドラーの気持ちも痛いほどわかるのよ、我が最愛のマエストロ~!


ハラハラドキドキの展開は推理小説さながらで読む手が止まらない。

天才に出会ってしまったという、最大の幸福にして最大の悲劇。

『愛』とは、『真実』とは、
『伝記を書くこということ』とは、
一体何なのか?!


本書が取り扱っている時代背景としては、晩年の交響曲第九番(年末に必ず流れるアレ)初演~ベートーベン死後数十年にわたる伝記執筆戦争がメインではあるが、終盤、某イケメンカリスマピアニストも参戦し、ロマン・ロランでは味わえない面白さ満載!!



今年はベートーベン生誕250周年メモリアルイヤー。
もう一度改めて彼の作品をじっくり聴いてみようと思う。
本書に思いを巡らせながら。


《追記》

と思って
ベートーベン作曲◆ピアノソナタ第8番《悲愴》
絶賛練習&凹み中✌️




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