『隅田川社員研修』
近年まれにみる雨にみまわれた隅田川花火大会。さらにそのまえの年、混雑極まりない通りを、浴衣姿の女性がふたり歩いていた。右を視ても、左も視ても、人。人。人。ついでに、上も視たところ、悠長にビルの三階のベランダから酒を呑んでいる男がいたという。その視線に氣がついたのかどうかは知らないが、男は女性ふたりに上から声をかけ、なぜか一緒に花火を観るに至る。そう、空中ナンパ
発祥の地で、私ども社員は光栄にも、今年も花火観戦をさせていただく運びとなったのである。ビルの屋上からはふた手からあがる隅田川花火を同時に楽しむことができ、しかもそのうちのひとつは打ちあげから花火までの過程を凡て堪能することができる。あまりの近さに火薬の香りがあたりをたちこめ、煙のあいだからまた夜空に新たな花が咲く。花は枯れるからではなく、散るから美しいと云ったのは誰だったか。花火には、まさに「散る」という言の葉がふさわしい。

感動さめやらぬままオフィスにもどると、一匹オオカミの寂しがり屋、社員Uが乗馬マシーンを視つけた。電源をいれると、四段階のスピードで馬が暴れる最新テクノロジーである。よほど浅草の夜景をバックにした花火が氣にいったのであろう。社員Uは乗馬しながら倒立し、「スカイツリー」と叫ぶ暴挙にでる。しかし、相手は四速の暴れ馬。かくして、社員Uも夜空に散ったのである。