小児貧血が示す行動の変化に注目しましょう | 髭の拝さんのブログ

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近年、子供たちの体力は昔の子の体力と比べて低下している、その低下原因は今の子たちの運動不足にある、と結論づけている。それはあるかもしれないが、果たして、それだけに起因して良いのだろうか? 

食の変化に伴う鉄欠乏と関係しているかもしれません。

鉄欠乏小児の運動能力低下はよく知られているけれど、それだけではなく、無気力で、注意集中時間が短い、倦怠感、集中力、抑うつ気分、これらは(ヘム)鉄補給で改善する。

鉄欠乏小児における影響として最も注目を浴びているのは、これが乳児の認知能力に影響を及ぼす、と云う報告です。

鉄欠乏の乳児は精神発達指数が低値を示し、Walter(ウォルター)によれば少なくとも3ヶ月間貧血を呈する乳児はパフォーマンススコアーが低く、ヘモグロビン値が10.4g/dl以下であることが観察された、と報告している。

しかも、貧血が改善してもパフォーマンス低下が短期観察、長期観察でも(精神発達指数が低値を示すのを)持続することが示された。

このことは、小児期に脳が発達・分化する途上で、鉄欠乏が影響を及ぼす重要な時期があるのではないだろうか、ということを示唆しています。

(・・・小児期では、脳が生物学的な発達をするのに鉄の充足が必要である。・・・と言う意味を表しています。たくさん意味不明の専門用語が出てきます。これは解説しますので、読み流しながら理解してください。)

上記、無気力で、注意・集中時間が短い、倦怠感、集中力、抑うつ気分など、行動の変化は、鉄欠乏のセロトニン、ドーパミン、ギャバなどの生化学的変化(減少)によるものではないかと推定されています。

ドーパミンは、鉄分布の多い錐体外路系の神経伝達物質であり、認知や感情の調節、或いは運動などに関する重要な役割を担っています。

一方、セロトニンは心や体に加わる過剰な刺激や、行動への抑制作用を持ちます。(怒りや不安を抑える作用です。) 実際、セロトニンの変化(減少)は、気分、睡眠、サーカディアンリズム(睡眠や覚醒を刻む生物時計)、神経内分泌機能、不安、ストレス、などの抑制に関係します。

もう一つ、鉄は神経伝達物質の抑制作用を持つギャバの利用にも関連していて、これらとの関係が鉄欠乏の中枢神経への影響と関連することを示唆している。ギャバもセロトニン同様に、神経興奮の抑制に関係しています。

これらの抑制物質の減少・欠乏は、可愛いはずの幼い子が暴れて止まらなくなる原因ともなっています。もちろん、子供だけではなく、若者、成人、老人に至っても同じです。

セロトニンの代謝、及び、血中カテコールアミンのレベルの変化は、鉄欠乏症と関連する行動の変化の理論的根拠として、十分説得力をもつものである、と思います。これらの代謝障害の急激な矯正は、鉄補給(貧血改善)による患者の感情や、行動の変化のドラマチックな改善とも一致します。

1988年、スイスのジュネーブで鉄欠乏の小児の脳障害に及ぼす影響に関するWHOの国際会議が開催され、小児の発達に影響を与え得る鉄欠乏改善の重要性を宣言しています。

乳幼児のみならず、思春期貧血で発見される中・高校生の貧血生徒は意欲に乏しく、運動・就学上、著しいハンディキャップを持つことは明らかです。小児期の鉄欠乏対策は小児の健全な成長、発達には不可欠なものであり、従って、これを積極的に発見して、この障害を改善することは私たち大人の役割なのだろう、と思っている。