すごいすごい。
 昨日の夜、ミラノの事務所を閉めて、自宅に帰ろうとして、建物の門を出ようとしたときのことだ。なんと、周辺は真っ白。雪が積もっていたのだ。
 今朝、窓から外を見ても、うちの庭も、広大な畑も銀世界。どうりでここ数日寒いと思った。日本からのメールによると、数日前まで雪が降っていたとのこと。イタリアでも毎年、この時期は、1年で最も寒いころだ。

 今朝は、ヴィータフェリーチェのパンフレットを、日本に送ろうと自宅近くの郵便局に行く。
 これまで日本への小包は送ったことがあるので、記憶では、小包一個分の重量制限は30kgだと信じていた。
 そのためにも重さを考え、30kgを超えないよう考えてパッキングしたつもりである。

 このパンフレットは、印刷代が安く、そのクオリティーを点検できるためイタリアで印刷したもので、配布するのは日本であるから、約1ヵ月後に帰国する際に、それを置いてくれるところの人たちに手渡しするか、日本国内で郵送するつもりでいた。
 パンフレットの重さは、1部1gだから、それが、200束ずつゴムで留めてある。残念なことにちょうどこの時期、車がなく、これから買おうとしているところだから、奥さん方がよく使っている買い物キャリーに、2箱積んで、オッチラホ、エッチラホ運びながらも、この雪が降る寒さで、すごい暑さ!
 手は、引きちぎれそうに痛くなるので、少しずつ休みながら進んだ。
 郵便局に到着。4枚の用紙に、差出人、宛先、内容など書き込み、さて、重量を測る。「30キロを超えていると言わないでくれ」半ば祈るような気持ちでいると、郵便局のおばさんによると、「1箱の重量限度は20kgです」と言う言葉を聞き、日本で小包を開けて点検しているイメージがガラガラガラと崩れていった。僕は言葉を失い、力が出なくなった。このデパートがやるような丁寧な小包用の茶色い包み紙を再び開け、荷物の3分の1をもう一度出し、作り直すのかと途方にくれていた。その場で、パンフレットを引っ張り出して作り直なおそうか?でもテープがない。
 局内になるベンチに座り、数分過ぎた。考えても仕方がない。「土曜日に送ろう。」と考え、荷物を再びもって、そとへ出たときに、女性の声がした。
 「どこに住んでいるの?」僕は住んでいるストリート名を言ったが知らないけど送ってあげようと言う。捨てる神あり、拾う神あり。である。
 車はBMWである。車に乗ってから彼女は「私は50年ここに住んでいるけど、あなたが来たのを知らないわ」と言う。住んでいるところは、人口1700人ほどの大きさだから、どんな事だって知れ渡ると言ったところだ。そして、この女性が50歳以上だということもわかる。
 「私は日本とも仕事をしているわ」興味を示した僕は「何の仕事ですか?」「バルサミコ酢関係」彼女はそれ以上の説明はしなかった。
 家の前に到着して、荷物を降ろし、自己紹介をしたが、彼女はしなかった。かわりに「グラツィエ、アリヴェデルチ(有難う、さようなら)と言っていってしまった。「有難う」と言うのは僕の方じゃないかな?家まで送ってくれたのだから・・・。

 車が言ってしまったあと考えた。「僕が言うはずの有難うを彼女が間違えていうなんて、あがっていたのかな?人前であがるような人には見えないけど・・・。」ひとまず考えた。

 あたりは、まだ雪が残っていた。でも、空は雲ひとつない青空の快晴である。僕は、家のガレージに小包を置いて、シャッターを閉めた。

肖像画を描いたのはAKIRA氏です。