【楽園映画感想文】ソードフィッシュ
いかにもアメリカ。いかにもバカ映画! 65点ソードフィッシュ 特別版¥1,000楽天同時期にガイ・リッチーの「ロックンローラ」を見たのですが、ロックンローラは、それはそれはイギリス風バカ映画。そしてこちら、ソードフィッシュはそれはそれはアメリカ風バカ映画。同じ英語圏の(ちょっと製作時期は違うけど)バカ映画、クライム映画であるというのに、もう全然違って、だからそれが面白かったです。ジョン・トラボルタは、パルプ・フィクションのせいで、というかおかげで、というか、この髪型とこの雰囲気が定着しちゃってたんだなあ、と改めて。今はどうなってるのかよくわからないけど。ところであるときから私は、アメリカの映画を素直に見ることができなくなっていて、というのは、アメリカ的正義、アメリカ的ヒロイズム、アメリカ的歴史観、アメリカ的世界への貢献、などなどを、おとなしく受け入れることができなくなってしまったからなのだと思う。ハリウッド映画は、もちろん世界市場向けに作っているのでしょうけれども、それにしたってやっぱり、「アメリカ人にとってのコンセンサス」なしには語れません。そして、それをわからずに見ても、よくわからないことは山のようにあるはずです。逆を考えればあまりにもあたりまえなことですが、日本映画を、完全に理解することは、外国人にはほぼ不可能でしょう。世界が認める「おくりびと」が、日本の「お葬式」という風習を知らない人々にどのように刺さったのかは、日本人である私たちに推し量ることは不可能だし、日本が世界に誇る「北野武」映画にしても、彼が「ビートたけし」であることを当然のごとく受け入れている私たちと、それを「コメディアンもやっているらしい」としか認識していない海外での受け入れられ方は、絶対に、物凄く違う。もちろん、「よく知らないからこその見方、味わい方」というのもあるけれど、それは、時刻の人間が見ているものとは違う、ということは、あまりにも当たり前で、当たり前すぎて誰も触れないことでもあるのですが。とはいえ、アメリカ映画に関しては、日本人はかなり「無条件に」受け入れる癖がついてしまっていると思います。ハリウッド的文脈に慣れちゃってるから、「私たちには理解できない何かがあるのかもしれない」という視点を見失いがち。いい悪いではなく、そこがハリウッド文化のすごいところでもあるけれど。当然私も、かなりながいあいだ、それがアメリカで作られたものである、ということを意識せずに、「映画ってこういうもの」という受け入れ方をしてきたのですが、なんか最近、それができないのよねー。結局のところアメリカという国の誇大妄想というか、アメリカンドリームというか、もしくは自己批判を含めて、そういうものを当然のように垂れ流してくるアメリカ映画の傲慢さというものにあてられてしまうのです。ひええ、なんという長い前置きでしょう。それを踏まえて、ソードフィッシュはやっぱり、アメリカの誇大妄想炸裂のすごい映画なわけです。内容は、なんていうか、やたらスマートでクール(でもデブ)、けれど自らの正義のためには手段を選らばないカリスマブラックヒーロー(でもデブ)ジョン・トラボルタと、やたらガタイがよくていい男で運動神経抜群の天才ハッカー(でも服装はださい)、そして妙に色仕掛けにはウブで子煩悩なヒュー・ジャックマンの、騙し騙され知恵比べ、というか、結局のところ自分のしたいことを成し遂げるためには二人ともやりたい放題っていうか、トラボルタのヒュー・ジャックマンへの片思いが仄見えるというか、ハル・ベリーはほんとどこ行っても色仕掛けしてるなあ、というか、あんまり必要のないカーチェイスや銃撃戦、がけから転がり落ちるシーンとか空飛ぶバスとか、凝りまくった爆発シーンとか、いやー、アメリカ! これぞアメリカ!!の、バカ映画!!!両スターはどちらも、対極にありながら、「アメリカ人の理想の男性像」なんでしょうねえ。一応、「悪役側」のトラボルタも、ジャックマンとの約束はいちいち守ってくれるし、なんか可愛らしい。でもちょっとキレてるところとか、いかにも、な感じ。「善人側」のジャックマンにいたっては、知力体力外見行動力ユーモア人格全て兼ね備えたスーパーマン。紅一点であるハル・ベリーは、無意味なところで下着になったりヌードになったり、なにやってんだ、この人。「IQは高いけどセックスは上手よ」とかいって色仕掛けするあたりとか、失笑をさそうし、全編にそこはかとなく漂う田舎くささ、演出過剰さ、洗練されてない感じは、果たして狙ったものなのか。だがそれがいい。というやつです。これはこれで楽しい。けれど・・結局のところトラボルタ演じる自称「正義の味方」は、果たしてほんとうに悪なのかそれとも正義なのか、的なことを考えさせる作りにしたかったんだと思われるのですが、そしてそれは世界の矛盾を描く深遠なテーマになることができる話題だけれども、描き方がバカすぎて、どうでもよくなってしまうところがまたアメリカっぽい。最後、どんでん返し的な終わり方なんだけど、まーなんていうか予想通りというか、ひとつもどんでん返ってないのは時代のせいなのかな・・当時はこれも、衝撃のラスト、ということだったのでしょうか。今見ると、むしろこれ以外の終り方だったら驚く、というくらいのものだけど。悪くはない。というか面白い。見ているあいだは、特にドキドキするでもなく、アメリカ的価値観から見た「かっこいい」登場人物が繰り広げる、「かっこいい」映像がご都合主義に展開するのを安心して見ていられます。非現実的すぎて全然ハラハラしないんだけど、私はハラハラするの好きじゃないので、むしろ見やすかった。でもやっぱり70点はつけられないかなー。バカ映画に徹するにしても、もうちょっと、「観客は賢いかもしれない、洗練されているかもしれない」という危機感というか、プレッシャーを持ってくれたらもっと面白かったのにな。なんとなく、あまりにも観客を舐めているような気がして。「お前ら、こういうの見せとけば喜ぶだろ?」という感じの、これまたアメリカ的上から目線が若干気に触ったということも、大きいかと思います。とはいえ、結構前の作品だから、当時の観客のレベルがそのくらいだった、ということなのかもしれないけれど。バカ映画好きには文句なくお勧めです。