前回は究極のモテ男、ハイスペックなヒモ代表・オデュッセウスをご紹介しましたが、
このオデュッセウスが20年も家を空けていた間、その美人妻はいったい何をしていたのか、というお話。
あちこちで女神の愛人稼業にいそしんでいたオデュッセウスですが、本来はイタケという国の王。
つまりその妻・ペネロペは、イタケの王妃。
王が不在のまま何年も経過し、行った先の戦争ももう終わったはずなのに一向に帰ってこない・・となったら当然、空席になっている王座を巡る争いが勃発します。
この場合、王座を狙う男たちにとって最も簡単なのは、現王妃であるペネロペと結婚すること。
しかもペネロペは音に聞こえた美女。
当然、ペネロペの前には求婚者が列をなしました。
そして何年も男主人が不在のペネロペの館は次第に求婚者たちであふれかえり、乱暴狼藉も行われるように。ペネロペも、いつ何時、無体な仕打ちに晒されるかわかりません。
女手一つでその身を守れるか、ペネロペ!!
そんな彼女が考えたのは、「今織っている布が出来上がったら、新しい夫を選びます」という牛歩作戦。
織物名人とされているペネロペはそれはそれは素晴らしい布を織っているのですが・・これが一向に出来上がらない。
それもそのはず、なんと彼女は昼に織った分の布を夜にほどいて、決して出来上がらないようにしていたのです・・十年以上の間!!!
群がる男たちに背を向けて機織りしてる風の美人妻byウォーターハウス
でもそりゃバレるよね、バレるよ。
ていうかよく十年以上もったよね、このウソ。
でもバレちゃったらさあ大変。怒り狂い、結婚相手を選べと迫りくる男たちにペネロペの二回目の牛歩作戦が炸裂します。
ペネロペ「でっでも、わたしの本当の夫よりも弱い男と結婚するのは勘弁してほしいの。だから、夫が使っていた弓で矢を射て、12本の斧の柄頭の穴を通せた人と結婚するわ♥」
・・どう考えても無茶ぶりですが、あっさりこれを承諾する男たち。
馬鹿なのかな。馬鹿なんだろうな・・
ところが女神アテナの壮絶えこひいきもあって、この時、求婚者たちの群れに紛れて、貧しい旅人の格好をしたオデュッセウス本人が紛れ込んでいたのです!!!
実はオデュッセウスはこの20年の間に、美しい妻がほかの男のものになってしまったのではないかと(自分のことを棚に上げまくって)心配していたので、旅人に身をやつして様子を見ていたんですね~この辺はちょっと嫌な男ですね~
でも妻の身の証は十分。
というわけでオデュッセウスは颯爽と自分の弓を持ち、彼にしかできない弓技をみんなの前で披露したうえ、
主人不在と思って乱暴狼藉を繰り返していたほかの求婚者たちをサクッと射殺して回ります。
オデュッセウス「俺のカップで酒を飲むとか舐めてんのかコラ、調子に乗った奴は殺す。あ、全員殺す!」
・・急にちょっとキャラ変わってますけど、まあ今までは相手が女、しかも魔女や女神でしたからね~。人間の男相手に舐められるわけにはいかないんでしょう、オデュッセウスも。
そして愛する妻と20年ぶりの再会・・かと思いきや!
20年間男たちからの求婚と無茶ぶりを交わし続けたペネロペのリスク管理スキルは半端ではありません。
ペネロペ「いや・・でもこの人本当にうちの夫?20年とか長すぎてもう誰だかよくわかんないし!あの弓を射られるのは確かに人間ではオデュッセウスだけだけど、もしかしてどこかの神様とかあの(エロい)ゼウスとかが変身してたりしない?それで騙されて女神ヘラにひどい目にあわされた人間の美女ってやたらたくさんいるんだけど!いやこれマジ危険なやつ、騙されたらやばい!!」
というわけで
ペネロペ「メイドや、こちらの方に寝室を整えて差し上げて。私の寝室のベッドを客間に動かしてご用意しなさい」
と、カマをかけます。
オデュッセウスの反応は・・
オデュッセウス「愛する妻よ、何を言っているんだい。あのベッドはこの僕が作ったものだからよく覚えているよ。ベッドの4本の足のうち一本は、生えているままのオリーブの樹をつかっているんじゃないか。だからあのベッドを動かすことなんてできないはずだよ」
これぞ満額回答!
夫婦二人の秘密である「生えてるオリーブの樹で作ったベッド」を知っているオデュッセウスを本物と認めたペネロペは、晴れて20年ぶりに、愛する夫の胸に飛び込むのでした。
あんまりうれしそうじゃないけどね・・byプリマティッチョ
と、いうモテモテだしいろいろ不倫したけど一応20年間妻を思い続けた夫と、
モテモテだったけど貞操を守り続けて20年間夫を待ち続けた妻のハッピーエンディング。
どうなのかなーこれつりあってんのかなー
男はいろいろ遊んでよくて、女は20年牛歩し続けなくちゃいけないってどうなのかなー
だいぶ男側に有利なお話のような気もしますが、だがしかし。
昨今の芸能界不倫問題でもしみじみ思うんですけど、夫婦のことは夫婦がいいと思えば言わけで、外野があれこれ言うのってマジ無粋ですよね。
ま、まあ神話というものは、外野があれこれいうためにこの世に存在しているようなものではありますが、この件に関しては、戒めも込めて
夫婦のことは夫婦で解決すべき。本人たちが良ければそれでいい。
という結論にしたいと思います!