皆様はセイレーン、という生き物をご存じでしょうか。

 

トロイ戦争の英雄・オデュッセウスとモテない美魔女キルケのお話はちょっと前にご紹介いたしましたが、このオデュッセウスの女難はまだまだ続きます。

 

美魔女キルケの誘惑を抜け出し、故郷に向けて航海を開始したオデュッセウス一行が出会う次の女難は、セイレーンの歌う海域。

 

セイレーンとは、古代においては半人半鳥、その後は半人半魚の姿で描かれる海にすむ妖怪。しかも、美女。

いわゆる日本人がイメージするところの「人魚」ですね。

そしていわゆる有名な人魚姫(アリエル的な)が人間の王子に恋に落ち、その恋をある意味で全うするというおとぎ話とは違って、セイレーンという人魚は性悪です。

 

旅人が船で通りかかると、世にも美しい歌声で彼らを誘い、自分たちの島に引き寄せるセイレーン。

その歌声には魔力が宿り、どんな人間も惑わずにはいられないという恐ろしいもの。

そしてひとたびセイレーンの島に降りた人間たちは、全員殺されてしまうのです・・

(一説にはセイレーンは女しかいないので子供を作るために男が必要、なので一夜を明かしたのち、用済みになった男は全員殺される、というお話もありますが・・でもそれってアマゾネスの国と一緒だしな・・ていうか人魚とか鳥の場合、生殖行為自体が人間の男とはできないのでは、とか・・いろいろ突っ込みどころはありますが)

 

そんな恐ろしい海域を通過するオデュッセウスに、ここでは親切な美魔女・キルケは忠告をします。

 

「舟をこぐ男たちは必ず耳栓を。そしてオデュッセウス、あなたはどうせ、セイレーンの歌を聴きたい、姿を見たいと思うのでしょう。それならあなたの体を船のマストに丈夫な縄で括り付けてもらいなさい。そしてどんなに暴れ、懇願し、命令したとしても決してその縄を解かないように、部下たちに誓わせなさい」

 

というわけで、こうなります。

 

ハーバート・ジェームズ・ドレイパー ガチに落としに行ってる中央のセイレーンが迫力ある

 

別の角度だとこう。

ウィリアム・エッティ 画面右下に注目です。

 

どちらも、耳栓をしている部下たちは耐えていますがオデュッセウスは狂乱の体。

こんな裸の美女が魔法の歌で誘ってきたらクラっとくる気持ちはわかるような気もしますが、下の絵の右下にご注目ください。

男たちの亡骸が死屍累々です。キルケより性悪だわ・・しかも人魚ですらない、人間の形してるわwww

 

危険とわかっていながらどうしても耳栓をしないオデュッセウスというのもほんと、女難に遭っても自業自得だろう、という気がしますが、ともあれ頑丈な縄と優秀な部下たちのおかげでこの海域を無事、通り抜けられたオデュッセウス。

 

そしてセイレーンたちは、「誘惑しようとした相手を落とせなかったら自分たちが死ぬ」という効率が悪すぎる呪いがかかっていたらしく、死んでしまった、と言われています。

 

でもやっぱり海にすむ女妖は、人魚型が理想ですよね~。

鳥型もいるんですが、あんまり萌えない。

ウィリアム・ジョン・ウォーターハウス 鳥だとなあ・・いくら美女でもちょっと・・

 

人型も、やっぱりなんかちょっと物足りない

グスタフ・レイトハイマー なんかマッパで海水浴してるって若干間抜け感がある。

 

やっぱり魚型でしょう!

フレデリック・レイトン やっぱりこれでしょう!どうやって生殖行為をするのかだけが謎。

 

と思うのですが皆さまはどれがお好みですか?

 

ところでイタリア語でセイレーンは「Sirena」。シレーナ、というとても綺麗な語感の言葉になります。

カプリ島のシレーナの伝説、とか、すごい魅惑的なんですけど・・

 

このSirenaという言葉、なんと、「サイレン」の語源なんですよね~

あの、パトカーとかが鳴らすサイレン。

どちらも「危険を知らせる音」ということでこういう名前がついているようですが、なんかそれ聞くと、魅惑の歌声が急に「ウ~ウ~ウ~」というサイレンの音にかき消されて、ちょっと残念なのはわたしだけでしょうか・・