赤毛のアンをはじめとする、1900年代初頭の少女たちを熱狂させたシャロット姫。
その背後には、「女性は家の中だけで生きるべき、自由恋愛なんてもってのほか!」という女性に向けた呪いがあった、というお話を前回書いたのですが
このシャロットの姫は、アーサー王伝説の「外伝」のようなもので、正確にはヴィクトリア朝(19世紀中ごろ)のイギリスの詩人、テニスンによる「アーサー王伝説をもとにしたいわゆる二次創作」です。
そもそものアーサー王伝説はもっともっと昔からあるもので、いろんな伝説がごっちゃになっているしいつ頃作られたものかもさっぱりわかりませんが、とりあえずアーサー王自身は西暦500年前後の人?
お話としての舞台設定は中世ヨーロッパ(1200-1300とか?)っていうイメージ??
だから、キリスト教以前の神話由来成分などもたっぷり混入していて、ヒロインたちは儚く散る乙女というよりもなんていうか、いい意味でも悪い意味でも、ビッチ妖姫だらけです。
なにしろ、主人公であるアーサー王の妻、一応正ヒロインの座にある王妃グィネヴィアからしてすごい。
というか・・いきなり物語が破綻しているような気がするのですが、
アーサー王最愛の妻、グィネヴィアは物語のほとんどの時間、不倫してます(えっ)
その相手は、アーサー王の腹心の部下であり親友であり最高の騎士、ランスロットです。(えっ!)
そのランスロットこそ、シャロットの姫が窓から見かけて勝手に恋に落ちた相手です(えっっ!)
アーサー王はこの不倫を知っていて知らないふりをしています(えっっっっ!)
でもいろいろあって不倫が公にバレてしまい、そのせいでアーサー王とランスロットの戦いに発展。そしてそのとばっちりでアーサー王は死にます(えええええええええええええええええええええ!)
絶世の美男美女ですが・・不倫です!でも一番のイケメンは馬!
超絶無敵主人公であるアーサー王の妻であり、ヒロインであるグィネヴィア不倫に始まり不倫に終わる伝説ってすごくないですか。なんなのそれ。
しかも不倫相手がよりによってランスロット、って。
当代最高の騎士であり、アーサー王に忠誠を誓うランスロットがその妻と不倫、って。
ランスロットは(一応)未婚なので、人妻と独身男の不倫沙汰、しかも夫と独身男は親友同士。
夫はその不倫を知りながら黙認・・ってどこの昼ドラよ。
窓から外を見ただけで呪われて死んじゃう乙女もいる世界と同じ場所のお話とはとても思えません。
これはさ・・どうなの・・?ちょっと不倫が発覚したら地獄の底まで叩き落されるカルチャーが全盛を誇っている現代日本においては、このパターンの不倫はどうなの・・?
最近、既婚男が独身女と不倫して、独身女が社会的に抹殺される話しか見ていない気がするから、ちょっといまどういうまとめ方をすればいいのか戸惑っているのですが・・
これ、一番悪いの誰?
まあでもそうだなあ、グィネヴィアはファム・ファタールの系列ってことなんでしょうね。
二人の男に致命的な打撃を与えているし、息をするように破滅させているあたり、女三宮と同系列ってことでいいのかな・・
そしてそれを言ったら源氏と朧月夜はどうなるのかっていう話も…そしてあっちは、破滅しないという奇跡が起きてるしなあ、むしろそっちのほうがすごい(これについても今度ゆっくり!)
興味深いところとしては、
シャロットの姫もグィネヴィアも、ランスロットに一目ぼれして死ぬほど惚れまくる、という役どころで、裏表のような関係なんですよね。
同じようにランスロットに恋をしながら、
「家に閉じ込められた乙女」であるシャロットの姫は、ランスロットから一切顧みられることもなく、
「宮廷に君臨する人妻」であるグイネヴィア王妃は、ランスロットから熱烈に愛される。
20世紀初頭、赤毛のアンの心をとらえたのはシャロットの姫のほうだったわけですが、21世紀初頭の女子たちはどう思うのかなー。
あ、私は、赤毛のアンの年齢のころから、この二人とは別の姫に首ったけなのでどっちもいやです! 私が好きな妖姫についてはまた次回以降に!