卑弥呼とは、言わずと知れた、古代日本史に君臨する邪馬台国の女王。

ビジュアル化された場合には神秘的な美女として描かれることも多いので、日本史登場人物女性編をやったらかなり上位にランクインしますよね、たぶん。

 

ただ、有名な割に、実際のところは何も知られていない女王・卑弥呼。

その卑弥呼があの三国志に登場する、と聞くと、ちょっと驚かれる方も多いのではないでしょうか。

あ、ゲームの無双OROCHIの話ではありません。

れっきとした、陳寿が記した、あの歴史書である「三国志」にです。

 

そうなってくると妄想が広がりますよね~、実は卑弥呼が呪術や魔術を使って曹操を助けたり、孫策と戦ったり、馬超と恋に落ちたりしていたら・・(あっ妄想が広がりすぎてる!)

 

まあ残念ながらそこまでロマンチックではないんですが。

 

義務教育レベルの歴史の知識として、「魏志倭人伝」なる中国の書物にその存在が記されている、というのは皆さんご存じかもしれませんが、この魏志倭人伝の「魏」は、あの「魏」です。曹操の、典韋の、夏侯惇の、徐庶の、あの「魏」です。

ていうかそもそも、「魏志倭人伝」という記録そのものが「三国志」の一部なんです!

そして、卑弥呼および邪馬台国は「親魏倭王」という金印を当時の中国の皇帝から授けられて、宗主国的立場である中国から「日本の王」として認められた、ということになっていますが、このさりげなく出てくる「中国の皇帝」っていうのが曹叡。あの曹操の孫の曹叡!!

バレバレの通り三国志LOVERな私やその同志たちには一気に、歴史とロマンが近づく瞬間ではないでしょうか!!!

 

とはいえ、喜んでばかりはいられないことも。

「卑弥呼」ってなんで「卑しい」の「卑」なの、とか邪馬台国が「邪」で始まってるのってどういうこと?という問題。

その時期はまだ、日本国内では「字」というものが使用されていないので、これは中国(魏)側が当て字として使ったもので間違いありません。

「よろしく」を「夜露死苦」、「チョコレート」を「猪口冷糖」、ローマを「羅馬」などなど、当て字というものにはいつでも作成者の意図と思い入れとセンスが反映されるものですが、

「ひみこ」に「卑弥呼」。

「やまたいこく」に「邪馬台国」。

いや間違いなく悪意あるでしょこれ!

 

それもそのはず、魏志倭人伝というものは三国志の中の「東夷伝」という書物の一部なのですが、この「夷」という文字はそもそも「野蛮人」「蛮族」を表す言葉です。

征夷大将軍の「夷」でもあり、つまり、この魏志倭人伝という歴史の記述そのものが、東のほうに住んでいる蛮族の動向について記したものなんですよね。基本的に中華思想のある漢民族からすると、周りの異民族はたいてい蛮族ということになり、この優越感と上から目線が、ほかの国の名前やその女王に「卑」とか「邪」とか、ひどい名前を付けて当然、というメンタリティになるわけです。

日本も卑弥呼も、舐められてる!!!

 

でもまあ状況を考えれば、三国志の時代、というかそれよりもっとはるかに昔から、中国ではすでにあの広大な領土を認識し、万里の長城なんてものを作り、国を奪い合い、驚くような距離を移動してはちょっとどうかしてるとしかおもえないクレイジーな戦争を繰り広げ、それでも文化は発展し、いったい何文字あるのかわからない世界で最も洗練された象形文字を優雅に使いこなすほどに、文学も歴史も戦争の技術も同時に進歩させてきた当時の先進国。

三国志の英雄たちが詩を吟じ、舞を踊りつつ中国全土を股にかけての一大スペクタクルを繰り広げているその時代、邪馬台国はまだ文字も持たず、いまもってどこにあったかもわからない程度の小国で細々とやってる弱小国。

まあしかたない・・けどそのあとの巻き返しにご期待!というところでしょうか。

 

でもねー文字に残っちゃってるから仕方がないしなんとなくミステリアスな響きだからいいといえばいいけど、この当て字は、変えてあげてもいいと思う。

私の思い入れとセンスでやらせてもらうなら、

「日魅子」と「弥真泰国」かな(笑)

実際のところは、おそらく

「ひみこ」は「日御子」あるいは「日巫女」とか「姫巫女」、

「やまたいこく」は「大和国」

だったんじゃないかな、というファイナルアンサーに近い答えもありますが。

 

もちろんこの卑弥呼、本人が魏に出向いているわけではないので(ていうかそもそも弟にしか姿を見せないという記述があるから弟の妄想とかでっちあげである可能性すら・・)女性であったかどうかもよくわかりません。

でもここまで来ていきなり男性でした、って言われてもすっごい盛りさがるから、これからも卑弥呼は謎の女王、ということで君臨していってほしいと心から思ってます。

 

(でも、記録に残っている段階では美しく若い女王ではなく、相当なおばあさんらしいですけど)

 

麗しの大和の国は、邪馬台国のあった場所ではないかもしれないけれど・・