北朝鮮との緊張を意図的に煽り、自衛隊の派兵と憲法改正を一気に成し遂げたい安倍晋三総理。
そんな折、来日した米国ペンス副大統領の「力による平和」に全面賛同の意を示し、国民に背を向けて軍国化に一目散の安倍晋三の姿勢には怒りを覚えます。
その安倍を支える産経、読売、NHKは今にも北朝鮮からミサイルが飛んでくるかのような報道を繰り返しています。
産経に至っては、ミサイル攻撃から身を守る方法まで掲載する始末です。
目の前に戦争のリスクがある場合、良識あるリーダーなら「和平」の道を探ります。武力に訴えるのは最低、最悪の選択です。何故なら、戦争になれば双方に甚大な人的被害を招くからです。
仮に北朝鮮に対して米軍が先制攻撃を行った場合、双方に数百万人の犠牲が出ると言われています。
アメリカはクリントン政権時代の1994年に一度だけ、北朝鮮への攻撃を真剣に検討したことがありました。クリントン大統領は北朝鮮との全面戦争という最悪のシナリオに備え、統合参謀本部議長らから戦争シミュレーションのブリーフィングを受けましたが、それは以下の様な驚く内容でした。
「戦争が勃発すれば、開戦90日間で
•5万2,000人の米兵が被害を受ける
•韓国軍は49万人の死者を出す
•戦争費用は610億ドルを超える。
•最終的に戦費は1,000億ドルを越す」
という衝撃的なものだったのです。
そのシミュレーション結果がクリントン大統領に北朝鮮攻撃を踏みとどまらせたのですが、今回は更に厳しい状況にあります。北朝鮮が核ミサイル保有国だからです。
もし仮に北朝鮮と米韓が戦争になれば、軍人50万人以上、民間人100万人の犠牲者がでるという予測もあります。更には在日米軍基地に核ミサイルが撃ち込まれ、日本にも甚大な被害が予想されます。
そこまでの犠牲を覚悟でアメリカは北朝鮮攻撃に踏み切るでしょうか?
2003年、イラクが大量破壊兵器を隠しているというCIAからの偽情報を根拠にアメリカはイラク進攻を始めました。
それは石油資源の確保という目的があったからです。それまで「アメリカの石油は、2016年までに枯渇する」と言われており、アメリカには「是が非でも中東の石油を確保する!」という強い動機があったのです。
今回、アメリカが北朝鮮を先制攻撃する事による大きなメリットは見出せません。緊急性もありません。米国本土を射程とするICBM(大陸間弾道弾)はまだ完成していません。
戦争のメリットよりもリスクやデメリットの方が遥かに大きいのです。それは北朝鮮も同じです。
すなわち現下の状況からは朝鮮戦争勃発の可能性は極めて低いと言えると思われます。
平和外交研究所の美根慶樹代表はトランプが北朝鮮を攻撃できない理由を6つ指摘しています。以下、「トランプが北朝鮮を攻撃できない6つの理由」 より。
第1に、北朝鮮の軍事能力は核とミサイルの開発などによって、1990年代とは比較にならないくらい強大になっている。クリントン元大統領時代と同様のシミュレーションをすれば、米国兵の犠牲は何倍、あるいは何十倍にもなるだろう。
第2に、朝鮮半島で米国と北朝鮮の軍事衝突が起これば、必ず韓国が巻き込まれ、壊滅的な打撃をこうむる。北朝鮮・平壌と韓国・ソウルの距離は約200キロメートルにすぎず、攻撃するのにミサイルは必要ではない。北朝鮮は直接ソウルに砲弾を撃ち込める性能の兵器を保有している。
第3に、日本にも被害が及ぶであろうし、そうなると、日本としても単純に米国の決定を支持するとは言えなくなる。少なくとも、軍事作戦の開始以前には、反対せざるをえなくなることもあろう。また、実際に軍事衝突が起こった場合、安保法制によると、自衛隊を朝鮮半島に派遣せざるをえなくなる可能性も出てくる。
第4に、中国も間違いなく反対するだろう。
第5に、米国内でも反対意見が強いと思われる。反対論の根拠として挙げられそうなこととして、米国は現実に被害を被っていないこと、中東に比べて北朝鮮問題の優先度は低いこと、全面戦争に発展して米国も核攻撃される危険が生じてくること、などが挙げられる。手段をまだ尽くしていないのに軍事行動に出ることには、特に強い疑問が呈されるだろう。
第6に、先に攻撃すれば、米国が64年前に結ばれた朝鮮戦争の休戦協定に違反することとなる。国際連合においても、安全保障理事会のお墨付きを得るのは、中国やロシアが反対するので、まず不可能と見るべきだ。
--引用ここまで--
北朝鮮は確かにならず者国家でしょう。しかし彼らをならず者にした責任の一端は大国の側にもあります。
小国が核武装を目指すのは、核を持たなければ大国に攻撃される、従属させられるという脅威が存在するからです。
核を有する大国の論理だけで核の廃棄を要求する事にはいささかの疑問を禁じ得ません。先に核を「持ったもの勝ち」の不公平な理屈では説得性に欠けます。
米ロや中国が朝鮮半島の非核化を目指したいのなら、自ら核の廃絶を提唱し、実行する事です。
まして日本は核被爆国でありながら、これまでの態度を翻がえし、核兵器を法的に禁止する『核兵器禁止条約』の制定を目指す交渉への不参加を表明し、各国の失望を招きました。アメリカの顔色をうかがって不参加を決めたのです。
トランプ迎合の安倍政権は北朝鮮の核保有を非難する資格を自ら放棄したのです。
安倍政権がアメリカの北朝鮮先制攻撃を支持するような発言を繰り返すのは、こんな意図があるからだと思います。
・森友学園、加計学園問題から国民の関心を逸らせる。
・戦争危機が高まると、政権支持率が上がる傾向がある。
・自党議員や閣僚の不祥事(ヤク中毒、不倫、ストーキング)隠滅、閣僚の放言・暴言への批判封殺。
・テロ国家の脅威を煽る事で「共謀罪」制定の国民的気運を高めたい。
・昨年制定の安保法制(自衛隊の朝鮮半島派遣)の既成事実化
・緊急事態法(内閣への全権委任)の制定
・憲法改正(改悪)への足掛かり
数十万人の国民の命を危険に晒しながら、戦争政策を推し進める愚かな安倍政権の醜悪さが際立ってきました。
しかし、冷静に考えてみれば、トランプは元々一流のビジネスマンです。
戦争危機を煽り、日本に大量の兵器を高値で売り付ける腹積もりだったのです。ペンス副大統領の来日目的もそこにあったと思われます。
またトランプが中国市場を捨ててまで、北朝鮮攻撃のリスクを犯すとは思えません。
中国も朝鮮半島有事のリスクを恐れています。数百万人の北朝鮮難民が一気に中国領内に逃げ込んでくる事が想定されており、そんな事態は何が何でも食い止めたいところでしょう。
以上から、アメリカによる北朝鮮先制攻撃は起きないと私は信じます。
しかし、軍事的緊張が高まると前線で些細な切っ掛けから軍事衝突が起きる事があります。
日本政府は4万人近いと言われる在韓邦人の命を守る責任も負っています。
在日米軍基地の従業員と家族、米軍基地近辺の住民を危険に晒し、政権の邪(よこしま)な考えでアメリカの戦争に加担するような事があってはなりません。
そんな危険な安倍政権に国の防衛を委ねるような事は到底容認できません。
安倍政権には退陣してもらうしか日本が生き延びる道はないと思います。
PS.既にご存知の方が多いかと思いますが、安倍夫妻らを4月20日に刑事告発するとしていた「森友デモ実行委員会」は告発による弊害を考え、告発の延期を決めました。これで反安倍運動の分断、分裂は回避されました。
一部には険悪な雰囲気も漂っていましたが、賢明な判断を下された関係者の方々には敬意を表したいと思います。