彼女から学んだ事…


世界は善も悪も持っていないと云う事

それは誰かが決めたモノになる事

何の為に自分はそれをするのか!

そこにすでに、答えがあると思うんだ。

自分自身を信じる事。
後ろを振り向かない事。
それはいつも難しいけど、
物事は常に姿を変える。


正義も悪もなく、
誰かや何かではなく、
自分の気持ち次第。


結局は"やるのか、やらないのか"

自分を正当化して、自分は悪く無い!と、
僕は自分自身の悪い所を認めていなかっただけだった…



彼女の真っ直ぐな愛情と、何事にも揺るがない強さが、
僕の心を少しずつ変えていた。









母親と云うものを知らない僕は、
彼女の中に理想の母親像を重ねていた。


彼女だけは信じられると思った。


生まれて初めて、
人生は素晴らしいと思えた。
あの冬の日以降、彼女が来る事が日増しに多くなり、
僕の帰る時間に合わせて電車で来て、
始発で帰る日々が増えていた。


僕は日増しに苛立っていった。


彼女は僕に会える時間が減ると言い、バイトを辞めていた。


電話越しで彼女は言った
『親の仕送りがあるから大丈夫』


彼女の言葉に僕はキレた…


『いい加減にしろ!
会いに来てくれるのは嬉しいけど、親の金で何やってんだ!』


そう言い放ち、僕は携帯を思いっきり投げ捨てた。


しばらくして冷静になり、投げた携帯が気になって見てみたが、
案の定
見事にバラバラに破壊されていた。


それを見て、また怒りが顔を覗かせた…


『結局、人間なんてエゴの塊だな…今日は寝よう』


僕は無理やり寝る事にした。






知らぬ間に寝てしまっていたが、
何かの気配を感じて目が覚めた。


枕元で泣いている彼女の姿に気付いた。


理解出来ない状況だった。

『なんで居るの?』

僕の問いに彼女が答えた。


『電話が繋がらない…』

当然だ。


僕の電話は砕け散って使い物にならなかった。



彼女は続けた

『電話が切れたから…

何回掛け直しても繋がらないし…

心配で、不安で、家まで行けば会えると思ったから…』









こいつは馬鹿なのか?


正直な僕の気持ちだった。

まだ夜は肌寒い季節にアウターも着ていない。

足は血まみれ。


聞けば

『焦ってたから上着も靴も忘れて来た』

と言う始末。


何故そこまで他人を信用出来る?

何故そこまで真っ直ぐでいられる?

何故この娘は自分の事よりも
俺なんかの事で一生懸命になれるんだ?



僕には到底理解出来なかった。


人間が嫌いで、自分自身も嫌いで、
心から誰も信用していなかった僕には彼女が理解出来なかった…


そんな僕に彼女は言う

『好きだからだよ?
それ以上の理由なんか必要ないでしょう?』


泣きながらそう言う彼女を見て、僕は笑った。


笑う僕を見て彼女も笑った。


涙を浮かべながら笑う彼女を見て、
僕は泣いた…


そんな僕を見て、
彼女も泣いた…
その日は風が凄く強くて、2人とも飛ばされてしまいそうなくらいだったけど、
2人で風に向かいながら大声で笑った。


今思えば、そんな他愛ない瞬間が最高の幸せなのかもと思える。


風は強く、寒くて、
だけど2人で寄り添って、繋いだ手の温もりが、
とても暖かかった。