僕らは付き合うようになった。


正確には"なんとなく"と云う言葉が正しいのかも知れないが、
結果としては交際はいつの間にか始まっていた。


ある冬の日、海が見たくなり僕は車を走らせた。

僕の住む街には海が無かったが、
時々無性に海が見たくなり1人で行っていた。


その日もそんな日だった。


しばらく走らせた時、
彼女から電話。


『今何してるの?』

焦った感じで、今にも泣きそうな声で彼女は問いかけてきた。

『海に向かってる』


僕は言う


『家に来たんだけど…』
少しの沈黙の後に彼女は言った


『はぁ?意味解んないんだけど…』


当時彼女が住んで居た所は、
僕の街から2時間以上はかかる場所…


彼女曰わく、いきなり来て、僕を驚かせるつもりだったらしい。


しかたなく僕は引き返した。


そして、2人で海に行った事は言うまでもない。
『おい、今からカラオケ行くから一緒に行こうぜ』


ヒロからの電話で起こされた。


時計は2時を少し回った所…


『はぁ?今から?』

『おー、今から迎えに行くから支度して待ってろよ』

『ちょっ…』

それだけ言って切れた。

ヒロは頭がいい奴で、色々分かっていながらも、
人の心に踏み込んでくる。


そうゆう奴は嫌いじゃない。


面倒くさくなくて助かった。



ほどなくして迎えが来た。

『早ぇな!』

玄関を開けた先には真理が立っていた。

『迎えに来たんだけど…』

僕が状況を理解するのにさほど時間は掛からなかった。


要するに、ヒロが最近お気に入りの娘を誘い出す為に、僕も彼女も利用されたわけだ。


『ゴメンね』

口をついて出た言葉だったが、彼女は迎えに来た事への言葉だと受け取ったのだろう。


『気にしないで、近所だから』

笑顔で答えた彼女だったけど、
後で知った彼女の家は僕の家から遠い所だった。




指定された店につくと

『おー悪いな』


笑顔のヒロが待っていた。


『いつかぶっ飛ばす』


僕は笑顔でそう答えた。

それから何度となく4人で会う事も増えて、
彼女と2人で会う事も増えて行った。
つまらない…


くだらない…


毎日が同じ事の繰り返しで、きっと人生のゴールは死ぬ事なんだと思い込んで決め付けてた。


僕は人間が嫌いだった。

そう…

自分自身でさえも。


誰も頼らず、誰も心から信用する事が出来なかった。

それでも仲間や友達は居て、なんとなくゴールまでの時間を消化してるにすぎなかった。


先天的な疾患。

僕は生まれつき体が弱く、白血球が普通の人の半分くらいしかないらしく、
風邪を拗らせては寝込む人生を21年間過ごしていた。


『ホントに?大変だね…』

この話をすると、皆同様に言う。


反吐が出る。

僕は決まってこう答えた
『嘘ついてどうすんだ?
大変でも何でもねえよ?』


僕の世界ではそれが普通で、何も特別では無かった。


『偽善者め…』

僕は笑いながら心の中で呟いていた。


そんな自分が嫌いだった…


『みんな死ねばいい…』
『自分すら死ねばいい!』と、本気で思っていた。




そんな日々の中で彼女に出会った。


彼女は向日葵の様に、明るく素直で僕とは住む世界が違う娘だった。


彼女の名は"真理"

友達の友達の友達?


言わば他人もいい所。


その時は、きっと二度と会う事も、僕の人生にこれほどまでに影響を及ぼす人だとは、
僕にはまだ知るよしも無かった。