うちの医院の衛生士は、能力が低い? | 歯科医院が最短距離でマネジメントを仕組化するブログ

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歯科医院のマネジメントをサポートしている渥美が、コンサルティングの現場や日常を通じて感じたことなどを記するブログ。

自分が変われば人と組織が変わる、

変人経営コンサルタントの渥美です。

 

 

ある医院での話です。

 

中途採用のベテラン衛生士で、

院長やチーフからも一目を置かれている

Aさんとの面談にて。

 

 

Aさんから、

 

「初期の歯周病は大丈夫ですけど、

 この医院には中度~重度の歯周病を

 治せる衛生士が居ません」

 

と言われました。

 

具体的にはどういうことか?

私が尋ねたところ、

 

 

「重度になると、どうしてもポケットの

 歯周病菌を取り残してしまいます。

 

 私は、本当の治療とは技術以上に

 “患者の意識や行動を変容させられるか?”

 だと思います。

 

 今、目の前の施術がしっかりできるのは

 当たり前。でもそれだけではダメです。

 

 その患者さんが私と会わない時間、

 つまり3ヶ月毎の来院であれば、

 残り2ヶ月29日と23時間にセルフケアを

 して貰えるか、生活習慣を改善して貰えるか、

 が大事なんです」

 

 

Aさんは熱く語りだし、こう続けました。

 

 

「相手を行動させることができて

 本当のプロです。じゃないと重度の

 歯周病が治るはずがないんです。

 

 そして、実は技術より精神論の方が

 大事なんです。私達より患者さんの方が

 IQが高かったり、人生経験豊富だったり、

 社会的地位が高かったりする。

 

 その相手に私達衛生士がどうやって

 聞く耳を持って貰うか?

 

 そこと向き合える、『あなたが言うなら』と、

 患者さんの納得を引き出せる衛生士が、

 当院にどれだけいるか?疑問なんです」

 

と。

 

 

私はAさんの話を聞きながら、

学習塾を経営している友人のことを

思い出しました。

 

友人がかつて私に、

こんな話をしてくれました。

 

 

「学習塾は勉強を教える場所、

 親御さんはそのために月謝を払うので

 授業内容が当然求められる。

 

 でも、週1時間と限られた枠で

 どんなに分かり易い授業を提供しても

 それだけじゃダメ。

 

 本当に学力を上げるには、生徒達と

 接していない6日と23時間の方が大事。

 

 この間にいかに勉強に興味をもたせるか、

 勉強をやってようと行動を促せるか?

 が本当のプロです」

 

こんな話でした。

 

私もこれまで何百人ものスタッフさん

と面談してきましたが、その中でも

Aさんは群を抜いています。

 

 

ですから、Aさんから同様の発言が出た

ことに、「さすがプロ意識が高いなぁー」と

感心したのでした。

 

 

が、

 

その一方で、

ふとこんな疑問も頭をよぎりました。

 

 

確かにAさんの言うことはもっとも。

 

だけど、実際にここまで考え実践できる

衛生士さんって、果たしてどれくらいいるだろうか…?

 

 

 

 

 

Aさん、前職場ではスタッフのまとめ役だけで

なく、副院長的な立場で経営数字も管理し、

お給与もかなり貰っていたとか…

 

もちろん全ての衛生士(スタッフ)が

卓越したプロフェッショナルを目指すのが

理想でしょうし、院長として、また患者さんの

立場としてこれほど頼もしいことはない。

 

しかし、例えば同じ衛生士でも

独身者もいれば既婚者、子育て中の人も

いるし、正社員もいればパートもいる。

 

 

人生における仕事の優先順位も人それぞれ。

すると当然、働き方も変わってくる。

 

なので、現実問題として、Aさんが言う内容

を全スタッフに求めるのは難しいだろうな、、、

 

という思いでした。

 

 

※なお、誤解のないようお伝えしますと、

 この医院は私が過去に関わった中でも

 職場の雰囲気、スタッフ皆さんの意識とも

 総じて高いです。

 

 

そして、Aさんとのこの話を院長先生へ

伝えました。

 

すると、院長先生はこう仰いました。

 

 

「Aさんのプロ意識は素晴らしいですし

 尊敬しています。

 が、現時点では当院では、衛生士に

 重度の歯周治療までは求めておらず、

 それはドクターが担うべきと考えてます」

 

 

 

 

院長はどこまでを衛生士に求め、

どこからは求めていないのかを明確に

語ってくれました。

 

 

Aさんのある意味、医院批判とも受け取れ

かねない発言にも動揺することなく、

 

そう言い切った院長先生の考えを聞き、

私自身も納得することができたのでした。

 

 

 

これは極端な例えかもしれませんが、

 

同じ『先生』という職業でも、

 

『幼稚園教諭』と、『大学教授』とでは

対象者も、求められる役割も、そして必要な

知識やスキルも大きく異ります。

 

 

それは、どちらが良い・悪いでは決してなく、

提供する価値の立ち位置が違うだけです。

 

 

また、同じ医療機関でも、

『地域のかかりつけ医』な医院と

『先進医療を扱う』医院では、

求められる知識やスキルも変わるでしょう。

 

 

当然、どちらも社会に必要です。

 

 

同様に、

予防管理型歯科を掲げる医院でも、

 

 

例えば

 

・患者の歯科への心理ハードルを下げ、

 通いたくなる工夫を追求している歯科

 

・最先端の検査が受けられる歯科

 

は、どちらも必要で正解だと私は思います。

 

※もちろん医療機関として最低限のモラル、

 質の担保は言うまでもありません。

 

 

 

結局のところ、

 

「自院がどの分野で誰のお役に立つのか?」

を、院長先生がどれだけ明確にしているか?

 

また、それを働くスタッフが理解できているか?

 

これが大事なような気がします。

 

 

注力したい分野や、理想とする患者さん像、

来院者との関わり方などをしっかり決めておくことも、

 

スタッフが余計な心配をせず、迷わず

安心して働ける職場環境の一つの要素

かもしれません。

 

 

そしてこれは歯科医院に限らず、

全ての職種に言える気がしました。