夢の中にいるように、ベイリンはほんの少し前まで生きていた2人の恋人同士を見入っていた。
と、彼は突然アヴァロンの乙女の呪いの言葉が現実となったような気がした。
「おまえはこの剣を手に入れるべきではなかったのだ」
彼の後ろで、穏やかでほっとする声が聞こえた。
振り返ると、そこには灰色のマントを着たマーリンがいた。
「さしあたって今おまえができる唯一のことは、この若い2人に敬意を表して埋葬することです」
彼らは、2人の恋人を埋葬するためふさわしい場所を探し始めたが、適当な場所が見つからなかった。
そこで彼らは、偶然出会ったコーンウォールのマーク王に助けを求め、王は近くの教会の素晴らしい地下納骨堂を見つけてくれた。
それでもまだ、マーク王は同情心に燃えていて、2人の恋人に対して思いやりを示していた。
後に、王は他の事情であからさまにいらつきを見せ始めるのだが、ベイリンに話を戻そう。
葬儀が終了し、コーンウォールの王は2人に別れを告げた。
マーリンはベイリンに言った。
「おまえの運命を変えられるかどうかわからないが、もし望むなら、呪われた運命を修復する方法を教えてあげよう」
「望まないわけがありません!どうぞ教えてください」若者は魔法使いの手を握り締めながら声をあげた。
「よろしい、では聞きなさい。
ここから遠くないところの森の下草に、ヴァンスの女性に会うため、リアンス王が数人の家臣とともに1ヶ月に1度利用する秘密の小道があります。その小道の上で、彼を捕らえてアーサーに捕虜として連れて行きなさい。
が、しかし、くれぐれも王を殺してはいけませんよ」
ベイリンは、新しい剣にかけて、たとえ何が起ころうとそのようなことは決してしないと、マーリンに誓った。
続いてマーリンは、王を待ち伏せきでる場所のあたりまで彼を連れて行った。
リアンス王とその家臣がその小道に現れた時間は、ほとんど夜中の12時近くだった。
王が、彼の前を通り過ぎる瞬間、ベイリンは茂みの後ろから不意に現れて、主君を守るために進み出た兵士たちと剣を交え始めた。
彼らは次々と倒されていき、その結果、残ったのは王1人となった。
約束を忘れて、ベイリンは彼を殺すため剣を振り上げた。
「やめなさい、このろくでなし!」
憤慨した声が叫んだ。それはマーリンの声だった。
騎士は身動きできずに、動きを止めた。
そこでマーリンは、脇で恐怖におののく王を引き起こし、ベイリンを厳しく叱責した。
「私には、おまえの運命が何も変わらないのがわかる。
無抵抗の捕虜を殺すよう言ったかね?
今後、おまえには何も言うまい。
さあ、少なくともアーサー王がおまえを良く思うよう、リアンス王をキャメロットへ連れて行きなさい」
そう言ってから、マーリンは夜の中へと消えていった。
ベイリンは、高貴な捕虜を従え、アーサー王の城へと向かった。
つづく