賢者たちは互いに見つめ合い、抱き合って挨拶し、肩をすくめた。





マーリンが発言した。

「城の土台が小さな湖にかかっているせいで、壁を高く築くにつれて崩れてしまうのです。

土台の下を掘ってみれば、実際に湖が見つかるでしょう。

というわけで、あなた方なら、どうなさりますか?」マーリンは尋ねた。

「ならば、我々はその湖を干上がらせましょう!」





マーリンは少し皮肉な笑いをもらした。

「もう1つあなた方には気づいていないことがあります。

お教えしましょう。湖の底には2匹の竜が眠っているんです!!」





ヴォーティジェンは湖の水を抜かせて、マーリンの言ったことが正しいことに気がついた。

湖の底には2つの巨大な石が横たわっていた。


2つのうちの1つには、白い竜が身を隠していて、

もう1つの石の下には赤い竜がいた。








2匹の竜が湖から出て来て、互いに熾烈な戦いを始めた。

長い炎を吐きながら、ぞっとする吼え声をあげた。

鉤爪のついた巨大な足で非常に荒々しく戦ったので、湖が彼らの血で一杯になった。




最初は、戦いの勝者を予測できなかったが、少しずつ白竜が赤竜を湖岸に追いやって行った。

白竜が、今にも勝利を勝ち取るかに思えた。





観客たちはおびえて後ずさりしたが、マーリンだけはじっと動かずにいて、何やら聞き慣れない言葉をつぶやいた。

それから、赤竜が優位にたった。





赤竜は後ろ足ですっくと立ち上がり、ものすごい力で白竜に一撃を加えたので、

白竜は倒れ、泥沼の中に半分ほど沈んでしまった。

大河と同じくらい巨大な炎が口からほとばしった。





ずいぶんと前に夜になっていた。

湖岸にひしめいている観客の呆然とした視線のもと、2匹の怪物は絶え間なく激突した。





白竜は、今では赤竜を前に1歩1歩後ずさりしていた。

一方、赤竜は少しずつ多く一撃を見舞っていった。





不意に、2匹のファイターは闇に包まれて見えなくなった、

かと思うと、つかの間の後、彼らの雄叫びが沈黙を破った。





ヴォーティジェンは恐怖におののいて、再びマーリンに尋ねた。

「これは一体どういうことなんだ?

我々に説明してもらおうじゃないか。お前の予言のせいで、

私の預言者に恥をかかせたんだからな!」





そこでマーリンは順を追って、ゆっくりと予言の言葉を語り始めた。

その言葉は後世に残すため、白紙の本に一語一句書き写された。





「悟りなさい、陛下。事態が逆転しただけのことだと。

ピクト人とサクソン人との共謀で、あなたは王冠を奪い取り、

あなたの暴政に屈しなければならなかったブリトンの人々を執拗に責めたてました。





それは、白竜が最初のうち、赤竜に優位に立っていたことを表します。

しかしながら、白竜は少しも赤竜を制圧していなかったのです。





あなたは、既に力尽きた赤竜が、暗闇に姿を消す前に、

最後の力を振り絞って、敵に炎を吐くために突然立ち直った姿を目の当たりにしたでしょう。





同様に、あなたが勝利をつかむことは決してありません。

なぜなら、この瞬間、王の息子であるアウレリウス・アンブロシウスとウーゼル・ペンドラゴンが

小ブルターニュを出国し、あなたを倒すため、手強い軍を率いて船に乗り込んだからです。





あなたを守る難攻不落の要塞などありません。

ブリトン人は要塞を包囲し、それは白竜のように燃え尽きるでしょう。








サクソン人ヘンギストは、彼の軍隊であなたを救うことはできないでしょう。

なぜなら、ブリトン人は赤竜が白竜に勝利を収めたようにヘンギスト軍を打ち負かすからです。




いつの日か、ナラの木がコーンウォールの地に新たに芽を出すでしょう。

笑い声が再びカンブリアに鳴り響き、島全体がブルータスの名で呼ばれるでしょう。





なぜなら、島外からの侵略者は島に与えられた名前とともに、永遠に忘れられるからです…」


第2話完→第3話へつづく(いよいよアーサーが…!)