AI同士の核戦争シミュレーション(前)ーペイン教授らの驚愕の研究 | virt_flyのブログ

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AI核戦争シミュレーション、AI同士の対決

↑ペイン教授らの研究チームは、最先端のAIモデルを使って核危機をシミュレーション(イメージ)

 

AIの合理さが核戦争を招くのか⁈

 

■機械らしい話と一笑に付せない

 

AIによる核戦争シミュレーションで、95%の確立で核兵器の使用が選択された」―何ともセンセーショナルなニュースが流れたものです。しかも「降伏や譲歩を一度も選ばなかった 」とも。

 

それだけだと、いかにも機械らしい話だと、一笑に付すこともできます。

 

しかし、英キングス・カレッジ・ロンドンのケネス・ペイン教授らのチームのこの研究論文

AI Arms and Influence: Frontier Models Exhibit Sophisticated Reasoning in Simulated Nuclear CrisesAIの軍備と影響⼒︓フロンティアモデルはシミュレートされた核危機において洗練さ れた推論を⽰す)』の要約部分にある一文を見て、俄然関心が高まりました。

 

AI核戦争シミュレーション画像

↑ペイン教授らの研究論文

 

そこには、「核兵器使用タブーは核エスカレーションの妨げにならない(引用者:核兵器は核抑止力足りえない)」はもちろんのこと、さらに「相互の信頼度が高いほど紛争を抑止するのではなく加速させる」と書かれています。

 

AIは人と違い迷うことなく合理的な判断を下すはずとすれば、これでは紛争は平和外交で解決できず、エスカレートして核戦争を招来するのが必然と思えてきます。

 

しかも、ロシアがウクライナに侵攻し、それにビビり中立の国是を投げ捨てて「力の信奉」者の軍門に下る国がでたり、トランプがグリーンランドの領有を主張し、ベネズエラで味を占めイランと戦争まではじめていますから、まさに今日現実世界に蔓延する「力の支配」の風潮にも符合しているではありませんか。

 

いったいこのシミュレーションはどんな考えのもといかなる方法でおこなわれたのか、確かめたくなりました。ただし、論文は英文46ページ、国際政治や軍事に関わる難しい内容に、簡単に読み下せるような代物でなくて、時間がかかってしまいました。

 

今更ながらの感がおありかもしれませんが、ことはAIの危険性だとかペイン教授らの研究方法の適否にとどまらぬ問題を内包しているように思うのです。門外漢のど素人が何を言うかというところですが、耳を貸してください。

 

■ペイン教授らの研究の概要

 

一応、ペイン教授らの研究の概要を記しておきます。ご存じの方は読み飛ばしてください。

 

 

●研究の目的

 

 大規模言語モデル(LLM)が分析や意思決定支援の役割でますます活用されようになるにつれ、特に壊滅的な結果を招く可能性のある戦略的紛争において、最先端のAIモデルがどのように推論するかを理解することは不可欠であり、AIの安全性と喫緊の戦略的懸念事項の両方に関わる問題である。

 

●研究の方法

 

・最先端のAIモデルであるClaude Sonnet 4Anthropic)、GPT‑5.2OpenAI)、Gemini 3 FlashGoogle)の3つが対戦

 異なる危機シナリオで各ライバルと6回対戦、7回目は自身のコピーと対戦、ターンは1試合最大で40ターン、全21試合(オープンエンド9試合、期限付き12試合)、合計329ターンにわたるプレイで、AIは約78万語の戦略的推論を生成した

 

AIモデルは、核兵器を有するライバル超大国を指揮する国家指導者の役割を担う

 国家プロフィールは冷戦初期の米ソ間の力関係に着想、抽象化した

 技術的に優れているが通常兵器では劣る国と、通常兵器では優位に立ちリスクを許容する指導スタイルを持つライバル

 

・シナリオ-7つ

<表>抑止効果 核兵器使用→相手の反応

シナリオ 説明 主要なダイナミク
v7_alliance 同盟の信頼性テスト 譲歩が同盟崩壊の連鎖を招く
v7_resource 期限のある資源競争 15ターンの期限による緊迫
v7_power _transition _a_rising 台頭勢力としての国家A 国家Aによる現状変更の圧力
v7_power _transition _b_rising 台頭勢力としての国家B 国家Bによる現状変更の圧力
v8_first_strike _fear 先制攻撃の誘因 「使わなければ失う」力学;12~15ターン
v9_regime _survival 存亡の危機 敗北は政権の崩壊を意味する
v10_standoff _crisis ベルリン型対峙 非対称な通常戦力バランス

 

・同時意思決定方式を採用することで、各ターンでは、両プレイヤーは相手のターンの選択を観察することなく、それぞれ独立して行動を選択する—意思決定には本来不確実性がともなうものだからであり、AIはターン終了後に結果をテキストで受け取る

 

・危機のレベルを測る基準は、ハーマン・カーンのエスカレーション階梯に準じ、現代的に調整、30に簡略化した階梯を用いる

 AIモデルは、全面降伏から外交的駆け引き、通常軍事作戦、核シグナル、そして熱核兵器発射に至るまでの全階梯を選択肢として選ぶ

 重要なのは、AIモデルは各段階について数値指標や明示的な順序付けなしに、言葉による説明のみを参照して選択する—AIはターン後に受け取る情報もテキストであり、数値は一切知らされないため勝敗を知ることはなく、例えば劣勢も文章表現から読み取るばかりで、都度ただただ合理的と思われる判断をくだすのみ

 

・各AIモデルは、毎ターン3段階の認知アーキテクチャーをとる—Reflection(振り返り):状況評価、Forecast(予測):相手の行動予測、Decision(決定):宣言と実際の行動の決定)、以上の3段階

Decision では、公開シグナル(宣言された意図)と非公開の行動(実際の選択)の両方を選択する—必ずしも一致する必要はなく、この分離によりブラフ、フェイントなどの戦略的な欺瞞が可能になる

 

・ターンをまたいで相手の行動を記憶するが、減衰あり、一方相手の重大な裏切りなどは顕著なまま

 

・「戦場の霧」をシミュレートするために、ランダムな事故(AIが選択した行動がよりエスカレートした選択肢に置き換えられる)を導入-エスカレーションが偶発的なものだったことを知っているのは当該プレイヤーだけで、相手は行動しか見ておらず、意図的か事故かはわからない

 

 

「AI同士の核戦争シミュレーション(中)―シミュレーション結果」に続きます。