
お客様のオーダーでベース車が入庫しました。
今見ると端正でスリムでカッコいいですね。
しかし、あの悪名高き80年代のマセラティです。新車の頃から褒められたクオリティーでないものが20年以上経った今どうなっているのか。
それを純正部品を用いて新車の頃の状態に近づけたところで出来上がるものは20年以上前のイタリアン・クオリティーの車。要するに何ら信頼に値するものではありません。
当ショップは何でもかんでもアップデートすることを良しとすると勘違いされることがあります。
しかしそれは違います。例えば燃料噴射に関して言えばキャブレターやKジェトロなど機械式のものはそれなりに魅力のあるものだし、機械ならではのメカニズムに惹かれるものがあると思います。
が、電子制御式インジェクションの場合、80年代のものにそこはかとない魅力を感じるなんてありますか?
PCで例えるならば、Windows 8の時代に98の魅力を忘れられずにそれをO/Hして使うなんて方がいらっしゃいますか?ということです。
増して、80年代初頭の電子制御技術なんてレベルが低く、スピードや精度が追いつかなかったため殆どの車がキャブレターに交換したほうが調子が良かったほどです。

当初は自動車メーカーも試行錯誤を繰り返した様子が窺えます。
当時電子制御インジェクションの開発を担当したエンジニアが「電気式の燃料ポンプやインジェクターその他のシステムがあんなに電気を食うものだとは想像していなかった」らしいです。
現にこのマセラティーもキャブレター時代と同じ容量のバッテリーを積んでいます。もともと容量が足りていない上にエンジンルーム内の狭く熱い場所に設置されたためバッテリー上がりが頻発しました。
その後ギブリ等ではバッテリーがトランクに移設され容量も大きくなったはずです。
とにかく新車の頃からトラブルの巣窟、メカニックの悪魔などと揶揄され、中古車市場をたらい回しにされてきた不運な車ですが、
カッコいい。とにかくカッコいい。
パッケージングもよく、コンベンショナルな足回りで430はホイールベースが長いため乗り心地もいいです。
昔スパイダー・ザガートに乗っていた頃はランエボを中間加速でブッチ切った経験もあります。
ちゃんとしてれば何とも魅力的な車なのです。昔憧れた方も多いことでしょう。
では、こいつをどうすればいいのか?どうすれば安心してアシに使えるのか?
まずは電気周りの刷新です。これをしないとどうにもなりません。
カプラーを一個一個外して磨いて接点復活剤を吹く?一時的にはよくなるかもしれませんね。しかし、元の造りがアレですよ。根本的な解決にはなりません。
リレーを全部取り替えてあの諸悪の根源、フューズ・ボックスを造りなおす?
ウチはそれより先を行かせていただきます。
オーナー様は若い女性。しかも都心のアシに使われます。
それに対応できる車に仕上げることが今回のオーダーです。
内装、外装の補修や機関の整備等はもちろんのこと、いつ何時でもエンジンがかかり、全ての装備品がスムーズに動くように仕上げることが命題です。
オーナー様曰く「今の車はそれが普通でしょ。それをやればいいだけのことなのでは?」
ごもっともなお話です。トホホ・・・・。
Virage development
(ヴィラージュ デヴェロップメント)
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