「太るのが怖い」…スポーツ女子が陥る摂食障害  治療が必要な心の病気、「勇気出し相談を」と専門家 | あなたの健康が未来を左右する!!

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中高生のスポーツ女子が健康を守るための基礎知識2

「食べて太るのが怖い」「体重のことが気になって仕方がない」

 スポーツをがんばりたいと考え、体重や体形を気にするあまり、そんな心理状態になって、おそるおそる食べたり、食事を抜いたりしている中高生のスポーツ女子はいませんか。

 そんな状態がエスカレートして、必要な食事量を食べられず、極端にやせてしまう人がいます。逆に、食べなかった反動から、「むちゃ食い」してしまう人もいます。

 こうして、食行動の乱れから心と体の健康が損なわれてしまう病気を「摂食障害」といいます。精神科医で日本摂食障害協会理事の西園マーハ文・明治学院大教授は「早く病気を見つけて、早めに治すことがとても大切」と話します。
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食事制限が引き金、完璧主義も影響

 一生の間に、摂食障害やその疑いのある症状にかかる割合は、男性が大体100人に1人なのに対し、女性は10人に1人。中でもスポーツをやっている女性は、一般の人に比べて、リスクが2~3倍高いといわれています。

 スポーツ女子の場合、「速く走るために体を軽くしたい」「演技の印象をよくするために体形を細く見せたい」などと考え、食事を制限することが、摂食障害を発症しやすくするといわれています。

 ただ、西園マーハ先生は「決してスポーツだけが発症の引き金になっているわけではない」とも言います。「受験勉強や楽器の練習などに完全を求める中で発症したり、家族関係が引き金となって発症したりすることもあります」と説明します。
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怖い拒食症、やせ始めは達成感

 食事をあまり取らずに極端にやせてしまう「神経性やせ症」は、一般には「拒食症」と呼ばれています。小学生のうちから見られ、中高生に多い病気です。成長期なのに低体重が続き、身長も伸びなくなってしまいます。

 やせ始めのとき、以前と比べ、「長い距離を速く走れる」とか「演技で体がよく動く」と感じた経験を持つ人は、皆さんの中にもいるかもしれません。その一時的な達成感が、「もっとやせよう」いった心理状態になる拒食症の「落とし穴」になることがあります。

実は多い過食症、見た目では気づきにくい

 拒食症にかかり、あまり食べないまま低栄養状態が続くと、低体温や低血圧になり、心拍数が低下します。次第に筋力が低下して、体が疲れやすくなります。便秘がひどくなったり、髪の毛が抜けたり、肌がかさかさになったりすることもあります。

 それなのに、本人がなかなか「病気だ」と考えず、治療を受け入れない場合があるのが、摂食障害の怖いところです。

 

西園先生は「拒食症だと分かり、『運動を休みましょう』と本人に勧めても、『休むのは嫌」と言って聞かないことが多い。そのまま運動をストップできないと、重症化し、命に関わることもあります」と注意をうながします。

 こうした拒食症よりも患者が数倍多いとみられているのが「過食症」です。正式には「神経性過食症」と言います。

 発症年齢のピークは大学生くらいの年齢で、中高生のスポーツ女子ももちろん注意が必要です。西園マーハ先生は「見た目の体形があまり変わらない人がほとんどで、周囲の人にも気づかれにくい病気」と説明します。

 たまにおやつのお菓子を大食いしたり、「やけ食い」したりするのはよくあることですが、過食症と診断された人は、「むちゃ食い」をコントロールできなくなる「過食」を頻繁に繰り返しています。

 

「食べた物をわざと吐いてはまた食べる」「下剤を乱用する」といった行動をやめられなくなってしまうことも多く、胃酸で歯の表面が溶けたり、体の中のカリウムが失われて心臓に不整脈が出る人までいます。

 拒食と過食を繰り返す人もいます。

 

「拒食症が治る過程で、過食気味になり、『体重が増えてしまった』とあせって、また拒食状態になると、摂食障害が長引きます」(西園マーハ先生)。思春期にかかった摂食障害が長引き、大人になっても治らず、長い間、苦しんでいる人も中にはいます。

長引かせないため、受診をためらわないで

 しかし、摂食障害は精神科医や心療内科医といった専門家の診察と適切な治療を受ければ、十分治る病気です。スポーツ女子の場合、練習を制限したり、食事を増やしたりして、心と体の健康を取り戻していきます。

 早い回復のためには、早めの治療がやはり、何より大切です。西園マーハ先生は「スポーツ女子には、スポーツのトレーニングだけでなく、健康管理にも興味を持ってほしい。

 

摂食障害かもしれないと思ったら、勇気を出して、まず家族や部活の指導者、学校の養護教諭の先生といった周りの人に相談してください」と勧めています。(水口郁雄)

◇西園マーハ文先生

 にしぞのまーは・あや 九州大学医学部卒。英国への留学経験もある精神科医で、東京都精神医学総合研究所勤務、白梅学園大教授などを経て、2019年4月から明治学院大教授。摂食障害の専門家で、一般社団法人日本摂食障害協会理事。