2万人もの患者と一緒に悩んだ医師だからこそわかる、意外な患者の心理も描かれている。
たとえば、がんと診断され、立ち直れないと悩んでいたある患者が「治るかもしれない」と思えたきっかけは、“些細なこと”だった。町内放送で流れてきた「熊が現れて畑を荒らしました。ご注意ください」というアナウンス。その日の日記に、こう書かれていたという。
「熊だってドングリが少ないと山から下りてくる。熊も生きたいんだろうなあ」
奈落の底を知った患者の数々の言葉や考えが登場する。それらはきっとがんと向き合い生きるためのヒントを与えてくれることだろう。(田幸和歌子)
■佐々木医師が勧める奈落の底から這い上がる法
(1)気持ちの整理…書いたものを誰かに見せる、シュレッダーにかけるなどは、自由。その時その時で書くことが、心を少し楽にしてくれる
(2)泣ける、話せる相手を見つける…泣ける相手、あるいは何でも話せる相手がいることは、心を外に出せて楽になれる方法の1つ
(3)死の問題は、頭で考えても決着がつかないから「体に聞く」…自分の人生を振り返るようにして、過ごした場所を順々に巡り、人生を再体験する。そうすることで死の恐怖が乗り越えられる
(4)奈落に日常を持ち込む…細々としたやらなければいけないことに囲まれた日常を維持することで、死という非日常を乗り越える、あるいはやり過ごす