「勉強しなさい」
「お金、時間は大事にしなさい」
でもきっと子に言う親のだいたいは自分が子どもの頃親に言われていたのだろう。
かれこれ10年前、まだ自分が18.19の浪人時代の話になる。
当時「未完成のカリラ」という名でギター弾き語りをしていたミュージシャンがいた。
当時の自分は音大浪人中。一般大学の浪人と違い予備校もなく、週1回ずつバイオリン、ピアノ、聴音の先生たちの家と自宅の往復、家での練習くらいしかすることの無いつまらない毎日を過ごしていた。
高校卒業した後引越しをしたこともあり近場に会える友人もおらず、家族と各先生たち以外との繋がりは中高時代の友人とのメールや電話やmixiでやりとりくらいしかなかった。
その友人たちも大学やバイト先の友人ができていくにつれてやりとりの回数は減っていった。
1日24時間。睡眠8時間、食事やお風呂やら3時間、練習や楽典の勉強時間を5.6時間とっても7.8時間余る生活。
なんともつまらない毎日。
そんな時、当時全盛期だったmixiの「ヴァイオリンコミュニティ」に書き込みがあった。
「ギター弾き語りでライブをやります、サポートにヴァイオリンやってくれる方募集してます!」
文はうろ覚えだがこんな内容だった。
それを見て「音大浪人中で暇なので自分でよければやってみたいです。」
そんなメッセージを送った。
数日後、レッスン帰りに途中下車をし、池袋の喫茶店で未完成のカリラさんと会った。
見た目はとてつもなくチャラく、第一印象は「やべー奴にメッセージ送っちまった…」と不安になったw
けれど話を聞いてみると見た目とは裏腹に高学歴で芯もしっかりした人だった。
年齢非公開だが少し歳の離れたお兄さんくらいの年齢で色んな話を聞け、一緒にライブに出る事を決めた。
ライブといっても新宿歌舞伎町ゴールデン街にある「すみれの天窓」という20席足らずの小さなお店でのライブ。
思えばお客様からチケット代を払っていただく本番はこれが初めてだった。
その初ライブから約半年後、無事第一志望だった桐朋に合格。一人暮らしを始め新生活で浪人時代とは打って変わってバタバタな毎日が始まった。
そんな中、久しぶりに未完成のカリラさんから連絡がきた。「またライブやるけど出れる?」
忙しい毎日ではあったがその後2、3回サポートで出させてもらった。
当たり前のようにノルマやなんやらはカリラさん持ち。「しゅーともお客さん呼ぶ努力もしてな」とか「組んで一緒に活動しないか?」そんな話もされるようになった。
今にして思えば当時のオレの成長のための優しさでの言葉だったのだと痛感する。
ただ当時の自分は一人暮らしやら恋愛やら飲み会やらバイト(某ファーストフード店)と時間、金銭ともカツカツで、精神的にもキツい状態だった。
そのため未完成のカリラさんからのバンドとしての話は正直重く鬱陶しくも感じていた。
サポートとしての話ももらったが「お金がキツいので…」と1度断り、2度断り
未完成のカリラさんは「しゅーと、音楽業界普通1回断ると2度目の話はこないし本当に無理な場合極力なんとか受けた方がいいよ」
これもまた当時は
「説教くさくて怠いな…」くらいにしか受け取っていなかった。
その出ていなかった2回の間に未完成のカリラさんはnanacoというバイオリニストと組み「想イ解けた琥珀はカリラ」という名でライブを重ねていった。
余談だがnanacoは別の音大に通っており別件の繋がりで知り合いだった。
その後しばらくライブサポート話はなく、お客さんの1人として呼ばれていた。
ある時nanacoがライブに出られないということで代役としてサポートの話をもらい出演した。
その後未完成のカリラさんとnanacoも別々の方向に進む事になり、また話をもらったが
「ちょっと考えさせて下さい」と言ったら
「じゃあいいや、チャンスの見極めは即決しなきゃダメだよ」と言われ、その後カリラさんとの共演はない。
それから色々とライブサポートをやったり、オーケストラに乗ったり、音大の友人の主催するコンサートに出たり、他の人の主催のライブに出たりと本番経験を積んだ。
自分主催でのカルテットコンサート2回、主催ソロコンサートライブ3回、主催ライブ1回も行った。
その中には数回サポートをやったが一度断って以降話がこなくなったこともあったし、主催コンサートやライブでは最初のうちは大赤字を出したりもあった。
その度未完成のカリラさんの言葉がいかに大事な事だったのかを実感した。
主催も慣れてきて、「今度は自分が若い世代にもチャンスを」と後輩たちに「出てみない?」と声をかけるようになっている。
「是非!」と即答の人もいれば
「お金が…」「時間が…」という人もいる。
後者の後輩の言葉を聞く度、未完成のカリラさんを思い出す。
「あぁ、あの時の自分の応えで未完成カリラさんはもどかしい思いをしてたんだなぁ…」と。
途中話に出てきたnanacoは海外を巡り最近は日本で活動している。
未完成のカリラさんは「カリラ」として数年前ニューヨークに渡り活躍している。
自分ももう28歳。どんどん若い世代が出てきて、上の世代からも「若いのに頑張ってて」といったアドバンテージは年々減ってきている。
妻子持ちになり、独り身の時ほどアクティブにチャンスを掴みに行くことも難しくなった。
話が逸れるがそんなアラサー寿原に川口での月1ライブに出させてくださっているキーボーディストの黒さん、色んなオケに誘ってくださる指揮者の藤田さん、サポートに出させてくださっている青木レナさんとアコーディオン弾きのえびさわさんに改めて感謝です( ̄▽ ̄;)
この10年があっという間だったように次の10年もあっという間なんでしょう。
学び、残し、伝えていく。
きっと音楽業界に限った事ではないでしょうが因果応報、善因善果、ぐるぐると歴史は回っていくんでしょう。
苦労をかけた(かけてる)分、苦労をかけられ、頑張ってきた(頑張っている)分、頑張ってもらえる。
多分そういうものなのでしょう。
最後に宣伝。
5/7(土)
18:00オープン
18:30スタート
21:00クローズ
新宿御苑ROSSO198にて
奏でうたえ!!vol.2開催します!
まぁそのキャスティングで後輩に声をかけたところ「お金と時間が…」と断られて昔を思い出し書き出したらこんな長いブログになってしまいました( ̄▽ ̄;)