「私の人生を返して」

 

 

 

   2025年11月中旬

 

             すりガラス結節の手術を受けた。

 

 

   

 

   前日には多忙な中、

 

   子供が帰国してくれた。

 

 

   家族に迷惑をかけることを

 

   申し訳なく思う。

 

 

   『窮地に陥った時こそ冷静でいること』

 

   母の教えを胸に

 

   必要事項をA4の紙に

 

   箇条書きに書き記し、

 

   一つ一つ横線を引いて

 

         入院準備を進めた。

 

   私のケースでは

 

   手術時間は1時間45分

 

   入院日数は5日間

 

   との説明を拝受した。

 

 

   「手遅れにならない為に今の段階で手術しましょう」

 

   主治医のご英断に基づき

 

   全てをお任せした。

 

 

  『順境は元より可、逆境これまた風流なり』

 

 

   どんな状況も受け入れ、

 

   その中にある美しさや趣(おもむき)を

 

   肯定する。

 

   

  #順境は元より可(じゅんきょうはもとよりか)

 

   物事が思い通りに進む良い状況(順境)は

 

   言うまでもなく良い、

 

   当然受け入れられる。

 

 

   #逆境これまた風流なり(ぎゃっきょうこれまたふうりょうなり)

 

    物事がうまくいかない苦しい状況(逆境)も

 

    また別の味わいや趣がある。

 

    それこそが

 

    「風流(情緒的、芸術的、或いは

 

    精神的な高見)」である。

 

 

    「風流」とは

 

    ただ美しいだけではなく

 

    寂しさ(わび・さび)や

 

    厳しさの中に美を見出すこと。

 

    苦境に立たされた時こそ

 

    気付きや、心の揺らぎを

 

    客観的に愛でる余裕を持つ

 

     

 

    人生で初めて体験する手術。

 

 

    現状維持を保つために

 

    駐在地でも

 

    食事・運動と努力を重ねてきた。

 

    崩れ行く廃墟の中を

 

    散りゆく桜のように

 

    「生」の輝きが

 

    退廃的な「死」の空間に

 

    衰退していく。

 

 

 

    「常に最悪の事態も想定しなさい

 

    自分が泰然自若でいる為に」

 

   

    自分の身体の現状を肯定し

 

    甘受する。

 

 

    手術を拒否することも

 

    逃避することも不可能である。

 

 

 

    手術後の短期の入院生活を

 

    せめて幸せに過ごしてみたい

 

    最低限心穏やかに過ごしたい

 

 

             病室は東銀座の煌めくパノラマ夜景を

 

    贅沢に堪能できる最上階、

 

    宝石箱のような夜の帳の美しさは

 

    筆舌に尽くしがたい苦痛や不安を

 

    きっと和らげてくれるだろう。

 

   

    手術を頑張ったご褒美に

 

    私らしく整えてみることにした

 

   

 

    ・英国スコットランドのロイヤル・スチュワート・タータンチェックの

 

     純毛ウールスローブランケット

 

    ・英国ローラアシュレイのテーブルマット

 

    ・フランス製チュールレースのティッシュカバー

 

            ・バカラ置き時計


    ・英国バッキンガム宮殿プラチナジュビリーマグカップ

 

    ・エミリオ・プッチ・ブルーモカシン(院内歩行用シューズ)

 

    ・フェイラー(入院室内スリッパ)

 

    ・フェイラー(ベッド下にマット)

 

    ・「モネ、睡蓮」の書類ホルダー

 

    ・ローズ柄のパジャマ

 

    ・シャネル(マッサージクリーム、化粧水、乳液&美容液)

 

    ・バラシリーズのボディクリーム

 

    ・英国子供の大学のマスコット人形をパートナーに迎えた

 

     (孤独にならない為に)

 

 

     その他、毎日いただくお庭で摘んだ

 

     ジャーマンカモミール・ローズマリー・ミントの

 

     自家製ハーブを持参した。

 

     そして美しい母と私が1歳の時の写真を

 

     ベッドの横に飾った。

 

 

     私が18歳の時、

 

     ある日帰宅すると

 

     部屋のホワイトマホガニーのドレッサーの上に

 

     クリ-ムの容器が置いてあった

 

 

     「ママ、これなあに?」

 

 

              母は

 

 

     「貴女は女の子だから

 

     お肌が綺麗でいることが大切よ

 

     これは無香料のマッサージクリ-ムよ

 

     今日から洗顔後にマッサージなさい」

 

 

             それから現在まで

 

     1日も欠かすことなく継続している

 

 

     雪のように真っ白な肌

 

     よくそう言われ

 

     肌だけが自慢であった

 

 

     手術前夜

 

     夫が

 

     メスが入らない

 

     私の肌を

 

     写真に収めてくれた

 

 

     不本意な現実を直視し

 

     天命と受容し

 

     リフレーミングにポジティブに切り替え

 

     体内の敵を切除すれば

 

     私は健康体になると信じた。

 

 

 

     無傷(むきず)の人生などないのだから

 

     体に刻印された命の『勲章』だと思えばよい

 

 

   

     日本一の名医でいらっしゃる

 

     主治医が執刀を担当して下さることに

 

     心理的安定が保たれ懸念は全くなかった。

 

     ただ事前に説明を受けた

 

     全身麻酔のほうが一抹の不安を抱いた。

 

 

 

     「全身麻酔のみでは手術の痛みに

 

     十分に耐えられません、

 

     そのため更なる麻酔薬を入れます。

 

     背中から針を刺し

 

     ピアノ線のような針金の

 

     ストリングスを体内に通します。

 

     その背中から針を通す瞬間に

 

     抜歯の時の麻酔注射のような痛みがあります。

 

     また、気管支に

 

     呼吸の為の管を通すときに

 

     なかなか通りにくい場合

 

     激しく押し込むため

 

     歯が折れる場合があります

 

     10万人に1人くらいの割合で

 

     稀に命を落とされる場合もあります」

 

    

 

               歯が折れる!!!

 

    背中から針を通す!!!

 

 

 

     大体私は採血でも

 

     注射針が刺さるときに抵抗があり

 

     必ず目を閉じてしまう

 

     まして

 

 

     背中から針など

 

     歯が折れるなど

 

 

     ホラー映画の解説を聞かされているようであった。

 

    

 

     説明されていらっしゃる麻酔医の目を

 

     私は瞬きもせずに見つめ

 

     戦慄が走り

 

     身体が硬直したまま

 

     説明を聞き入った。

 

 

     私の頭の周りには

 

     恐怖とショックで

 

     億万の綺羅星が燦然と煌めき舞い踊っていた。

 

 

     子供へは

 

 

     『10万人に1人』

 

  

     を想定して

 

     子供の将来、

 

     結婚、

 

     私の両親からの相続、

 

     母から孫(子供)への相続、

 

     伝えたいことを全て説明した。

 

     ナ-スからの手術の報告が入る直前まで

 

     子供とLINEで会話した。

 

 

 

                  

 

    

 

    

                            

 

                       Scriabin Etude Op.42 No.5 (Horowitz)

 

 

 

 

 

     Scriabin Etude Op.42 No.5
 
     Piano by;  Vladimir Horowitz 
 
     1903年10月1日、ロシア帝国(現ウクライナ、キエフ生)
 
     1989年11月5日、(86歳)アメリカ合衆国、ニューヨーク没
 
 
     子供が私の手術前に送ってきた
 
     スクリャービン・練習曲・作品42・第5番(嬰ハ短調)は
 
     8つの練習曲の中でも屈指の難易度を誇る名曲
 
     高度な超絶技法と中期スクリャービン特有の
 
     劇的で官能的な表現が融合されている作品だ。
 
 
     子供の、母親が手術になってしまった苦悩、
 
     何としても手術を乗り越えてほしい
 
     そんな子供の私への強いメッセージが
 
     痛いほど伝わった。
 
    

     子供は国際史・哲学をマスターまで専攻したが

 

     音大のピアノ科を付属からマスターまで専攻した私よりも

 

     作曲家・ピアノ曲・シンフォ二ー・ピアニスト等について

 

     ずっと詳しい。

 

     英国に卒業後も含め8年、

 

              その後オーストリア・ウィーンに移り

 

     4年間に渡りプロフェッサーに就いて

 

     ピアノの勉強を重ねた。

 

 

     子供は

 

     ポーランド出身の世界的ピアニスト

 

     『アルトゥール・ルービンシュタイン』を

 

     敬愛しており

 

 

    

 

     ルービンシュタインのCD・DVD

 

     全てを揃えている。

 

     英国在住時に

 

     あるコンサートで子供が

 

     フレデリック・ショパンの

 

     「ポロネーズ第6番・変イ短調・作品53

 

     『英雄ポロネーズ』」を演奏し

 

     それをたまたま聞いた

 

     『ルービンシュタイン協会』のメンバーの方が

 

     子供にお声がけくださり、

 

     ロンドン在住の

 

     伯爵夫人で

 

     アルトゥール・ルービンシュタイン氏の

 

     『最後の恋人』に

 

     子供の演奏を送ってくださり、

 

     自宅にお招きいただき

 

     子供はロンドンの伯爵夫人のご自宅を訪問したことがある。

 

     生前のルービンシュタインの逸話

 

     ピアノ曲について

 

     歴史学・哲学について

 

     絵画について

 

     6時間にわたり

 

              時間を共有して

 

     伯爵夫人と談笑した

 

     そして子供に

 

     ルービンシュタインの生前録音された

 

     非売品のプライベートビデオを

 

     プレゼントして下さった。

 

     『一生の宝物』だと

 

     子供は大切に保管している。

 

     ピアノ専攻の私からしたら

 

     夢のようなお話である。

 

     これが最初の訪問となる。

 

     そのルービンシュタインの最後の恋人、

 

     伯爵夫人宅へは

 

     現在の世界的ロシアのピアニスト、

 

     私の最も好きなピアニストの一人でもある

 

     『エフゲニー・キーシン』も

 

     夫人宅のピアノで演奏したそうである。

 

 

     image  image

 

 

     子供には豊かに人生を生きてほしい。

 

 

    

     手術当日、

 

     早朝8時主治医、麻酔医等

 

     私を担当される医師たちが

 

     病室にお立ち寄りくださった。

 

 

     「大丈夫ですか?

 

     頑張りましょう!」

 

 

     手術開始前にナースが

 

     お迎えにいらっしゃるとのこと。

 

    ・Tchaikovsky's Violin Concert in D major,Op.35

 

     Violin ;Jascha Heifetz

 

 

    ・Ravel Bolero

 

     Vienna philharmonic( Gustavo Dudamel)

 

 

    ・Dvorak New World Symphony

 

     Berlin Philharmonic(Herbert Karajan)

 

 

    ・Bach Partita

 

     Piano ; Glenn Gould

 

                 etc.....

 

     そして

 

     子供が送ってくれた

 

    ・Scriabin Etude Op.42 No.5

 

 

                     ナースからのコールが入るまで

 

     平常心を保ち音楽で心の準備を整えた。

 

 

     午前9時半頃の予定が

 

     前の方の手術が長引き

 

     結局午後3時半

 

     漸くナースコールとなった。

 

             途轍もなく

 

     長い時間であった

 

     手術室へ向かうエレベーターの手前で

 

     一瞬家族と再会できる。

 

     夫と子供が

 

     とても優しい眼差しで私を迎えた。

 

    

 

     「それでは

 

     ちょっと、

 

     行ってまいります」

 

 

     「頑張ってね!」

 

 

     " Good Luck!"

 

 

 

              二人はエレベーター手前の自動ガラス扉の外までで

 

             ガラス扉にピタリと張り付いている

 

     ナースと私がガラス扉の中に入り

 

     エレベーター前に行っても

 

     まだ二人とも動かない。

 

     そして

 

     子供はガラス扉に

 

     両手と顔を押し付けて

 

     私がエレベーターに乗るまで見送った。

 

   

     ナースが

 

     「お母さん、命!

 

     凄い!!」

 

 

     手術室前では

 

     主治医、麻酔医たちが出迎えた。

 

 

 

     いよいよこの瞬間となった。

 

 

     『放下』

 

 

     「いかなる場合も絶対に取り乱さない」

 

 

 

     主治医が

 

     「長くお待たせしてしまいましたね

 

     頑張りましょう!」

 

 

     「本日は

 

     どうぞよろしくお願い申し上げます」

 

 

     手術台に座り

 

     事前説明通り

 

     背中に針が刺さった。

 

 

     多人数 対 独り

 

 

     一切の抵抗は許されない

 

     殺戮的な孤独であり

 

     逃げ場のない極限の孤立状態は

 

     自己肯定感を削り取るように破壊していく。

 

 

     『俎板の上の鯉』

 

     どころではない

 

             

 

 

 

    『八角磨盤空裏走』

 

    (はっかくのまばん くうりをはしる)

 

 

                  ・八角磨盤;

 

     穀物を挽く八角形の重い石臼

 

    ・空裏走;

 

     空中を走り回る

 

    

     あり得ないことがおこるように、

 

     理性や論理では理解できない「悟り」の世界では

 

     日頃の固定概念を打ち砕くことを意味する。

 

 

     執着や慢心、ダメだという思い込みを

 

     石臼が全てを粉砕するように

 

     取り除く強い力を表す。

 

 

     大宇宙を八角の磨盤(石臼)が

 

     自由自在に縦横無尽に駆け回り

 

     ああでもない、こうでもないと

 

     心をしばる邪念をも

 

     ガリガリと磨盤が削ぎ落すように

 

     『無心』の境地であること。

 

 

 

     私は手術が開始され

 

     手術台で私の背中に針が刺さるとき

 

     恐怖に支配されていく

 

     自分に言い続けた。

 

    

 

     

     まさに

 

     「ホラ-」

 

 

              麻酔が効いて

 

     意識がなくなるまで

 

     体にかけられた

 

     保温性のブランケットが

 

     緊張で硬直した

 

     私の心身を

 

     温めて癒してくれた

 

     朦朧と意識が消えていった

 

 

               施術後

 

     集中治療室に移され

 

     麻酔が覚めると

 

     主治医がいらっしゃった

 

 

     「終わりましたよ

 

     綺麗に取りましたよ

 

     もう大丈夫ですよ」

 

 

     お優しい笑顔だった。

 

 

     「ご家族が病室で 待っていらっしゃいます」

 

    

 

         

 

     入院前日、

 

     わざわざ海外から

 

     私の為に帰国した子供に

 

     せめて手作りを渡したいと

 

     前日に焼いた

 

     幼いころから子供が大好きな『キャロットケーキ』と

 

     お庭で摘んだ

 

     ウィーンのヴァイオレット(ニオイスミレ)を

 

     砂糖漬けにして乾燥させた

 

     ヴァイオレットキャンディーを

 

     病室のリビングルームのテ-ブルから

 

     忘れずに持ち帰るよう伝えた。

 

 

 

image

 

 

 

   

    「フライト、キャンセルしようか?」

 

 

             「行きなさい!」

 

 

     「、、、」

 

 

     「来てくれてありがとう」

 

 

 

     このまま傍にいてくれたら

 

     どんなに良いだろう

 

     私心を捨て去り

 

              長時間のフライトで

 

     海外へ戻る

 

     子供の無事だけを祈る。

 

 

     忍の一字

 

 

       夫は私の入院時

 

     共に付き添いとして

 

     夫も病院に泊まることを

 

     主治医から許可を得ていた。

 

     しかし

 

     外国人、または認知症など

 

     対応が不可能なケ-スのみに限り、

 

     許可されるとの説明を

 

     威厳ある婦長様より拝受した。

 

     夜10時過ぎ、

 

     明日の面会を約束して

 

     夫は病室を出て帰路に就いた。

 

 

    「二人とも、どうもありがとう」

 

 

             点滴の針だらけの体と

 

     酸素マスク 

 

     何も身動きが取れない。

 

 

     「これが手術か!」

 

 

     まさに

 

 

     「ホラ-」

 

 

     独りになった広い病室で

 

     脳と瞳だけが

 

     午前零時を迎えても

 

     冴え渡っていた。

 

     そして

 

 

     『命』

 

 

     を実感した。

 

 

 

       

     思い返せば

 

     苦闘し続けた日々。

 

 

     あまりにも攻撃的で理不尽な

 

     40歳独身女部下「前田百合子」の

 

     1年4ヶ月に及ぶ

 

     「仕事」を盾にした

 

     品格を失った

 

           不道徳な堕落行為に

 

     精神的に計り知れない

 

     胸がつぶれる思いを経験した。

 

 

     疾風怒涛の如く

 

     早朝、日中の度を越したメ-ル連投、チャット

 

     夫は直接の上司ではないにもかかわらず

 

     個人的「ご相談」

 

     勤務時間外の夜間、夜中の

 

     1対1のリモ-ト会話の依頼の連続、

 

     「仕事」を盾に夫に近づき

 

     家庭の領域まで入り込み続けた。

 

 

     痛ましい前田の『適齢期焦燥』による

 

     駐在支社の条件の良い既婚男性上司に狙いを定め

 

     見境なく、誰彼構わずに色仕掛けで追い回し、

 

     日中の会議でも

 

     気怠い喘ぎ声を出し、

 

     既婚男性ばかりの飲み会では

 

     一人女性で参加し

 

     色眼鏡をかけて

 

     寸胴な腰を振りながら

 

     ビール瓶片手に一人一人に

 

     酌をして追い掛け回す行為、

 

     通常なら40歳といえば

 

     もう既に

 

     中学生、高校生の母親である

 

     最早

 

     より取り見取りの既婚者上司の『標的様』を前に

 

     垂涎しすぎた

 

     頭のねじが外れた、乱心した「プレデター(捕食者)」の

 

     おひとり様芝居だ。

 

 

 

     私を取り巻くお姫様育ちの全ての方々は

 

     破廉恥な「前田百合子」の行為は

 

     断じてやらない。

 

     自分を落とすからだ。

 

     そのような教育は受けていない。

 

     脳裏の片隅にも浮かばない。

 

 

 

 

     標的の一人となった仕事一筋の夫

 

     あくまでも仕事と判断したと言い、

 

     勤務時間外の夜間、夜中に

 

     前田百合子からの依頼による

 

     1対1のリモート会話では

 

     決して

 

     40歳行けず後家の『毒血』は見せず

 

     夫の名前を艶めかしく連呼し

 

     甘えるように笑い

 

     前田の公私混同した

 

     『仕事を盾』に

 

     既婚上司の

 

     家庭の領域に

 

     勝者の陶酔にしたり

 

     侵略し続けた

 

     正に

 

     『逆ハラスメント・スト-カ-行為』

 

     であった。

 

  

 

     前田自身からの夫への

 

     「ご相談」依頼メールは夫のみへ

 

     夫からの

 

     「全てサポートします」

 

     返信メールは

 

     駐在支社日本人全員へCC(貼り付け)して

 

     もっとも影響力がある夫が

 

     完璧に前田をサポートすることを

 

     全員に認識させて

 

     新しい駐在地での前田自身の立ち位置を

 

     着実に整えていったのだ。

 

     利用されていることも見抜けずに

 

     『仕事』と判断して対応する

 

     間抜け夫に疑念が生じた。

 

     今迄の人生で

 

     経験したことのない

 

     心臓にナイフを指すような

 

     不条理な苦しみであった。

 

 

     邪念の引力に巻き付かれ

 

     引き摺り込まれるように

 

     駐在地のレジデンスでの

 

     辛い一齣一齣が

 

     残酷にも

 

     鮮明に

 

     寂寥の「どん底」に

 

     私独りを突き落としていく。

 

 

     壮絶なフラッシュバック・ストレスに

 

     心が折れてしまいそうな

 

     現在までの日々であった。

 

 

     すりガラス結節は

 

     2年間変化もなく

 

     現状維持が可能であったのが

 

     唐突に直視した衝撃に対し

 

     過度なストレスの連続に

 

     拒食状態となり

 

     眠れない日々が続き

 

     免疫力も狂い始め

 

     著しく低下していったのかもしれない

 

 

     苦しみから

 

     もっと強く、毅然と

 

 

     自分自身を守れなかったことも

 

     原因に繋がったのかもしれない。

 

 

     夫と共に30年

 

     国から国へ

 

     新天地を切り拓き

 

     手を取り合い

 

     駆け抜けてきた

 

     サバイバル駐在生活に

 

     前田如きに

 

     抉り入り込むことは

 

     断固としてあってはならない。

 

   

 

 

     身の程もわきまえず

 

     色仕掛けで

 

     『仕事を盾』に

 

     35年の経験と実績を築いた

 

     トップ海外企業戦士の夫に

 

     軽々と近づき

 

     夫の名前を呼び続けた

 

     40歳にもなる行けず後家

 

 

    「前田百合子」

 

 

     ふざけた淫乱女の

 

     支離滅裂な

 

           常識から逸脱した

 

     断じて許容できない

 

     言語道断な行為の連続であった。

 

 

 

           苦しみに押し潰されそうになり

 

     耐えきれず

 

     眠れずに

 

     赤ワインを飲むことで

 

     自分自身を楽にさせた

 

 

 

     強くなれず

 

     週末に

 

     海外の子供へ

 

     電話をかけていた

 

   

     耐えられなかった

 

 

     声を抑えて泣く私に

 

     子供は

 

     1枚の写真を

 

     LINE で送付してくれた。

 

 

 

 

 

   

     子供と一緒に暮らしている

 

     イングリッシュ血統種の

 

     『ゴ-ルデンレトリバー』だ。

 

   

     美しさと愛らしさに

 

     心から癒された。

 

 

 

     母親でありながら

 

     有るまじき「脆弱性」を

 

     露呈していた。

 

 

 

 

     手術後、予定より2日順延して

 

     7日目の退院であった。

 

 

     陽光に反射する隅田川の緩やかな流れと

 

     雄大な眺望が

 

 

     「よく頑張りましたね!」

 

 

           と、労いの言葉をかけているようだった。

 

 

     連日、早朝に自宅を出て

 

     午前9時には病院に到着して

 

     1階のカフェで

 

     面会可能時間の午後1時まで

 

     待機して

 

     面会時間の午後4時半まで

 

     病室で過ごしてくれた。

 

     毎日、

 

     白衣の天使様達から

 

 

     「お時間ですよ〜」

 

 

         と、𠮟責されて

 

     退出の命が降るまで

 

     病室に屁ばりついて

 

     共に時間を共有してくれた。

 

     そして1階のカフェが

 

     閉店となる

 

     午後7時まで

 

     病院で過ごして

 

 

     「一緒にいるからね!」

 

    と、LINEのメッセージで

 

    私を支え続けてくれた。

 

 

    退院の日

 

    夫もまた喜びで満ち溢れる

 

    至福に浸る

 

    優しく、

 

    弾けるような輝く笑顔だった。

 

 

    それはかつて

 

    駐在地のレジデンスで

 

    夜間、前田に向けた

 

    包み込むような笑顔よりも

 

    優しく、

 

    暖かく、

 

    そして

 

    より深い

 

    私に向けた

 

    夫の愛が溢れていた。

 

 

 

    

 

 

    退院後の生検検査で

 

    ・手術時のすりガラス結節は9ミリ

 

    ・他臓器への転移無し

 

    ・抗癌剤治療・放射線治療、共に必要なし

 

    ・完治

 

   

     悪化により苦しんでいらっしゃる方が多くおられる。

 

 

 

     入院説明を拝受する待合室でお見かけした

 

     まだお若い女性

 

     私の手術後

 

     レントゲン室の前で

 

     ナースが車いすを押していらした。

 

     ふと目を向けると

 

     両足が切断されていた。

 

 

 

     言葉を失った。

 

     断腸の思いであった。

 

 

     手術前も何方も

 

     付き添いの方はいらっしゃらなかった

 

     退院後どうされているのだろうか、、、

 

     これからどうやって生きていくのだろうか、、、

 

 

 

    『皆がんばっている』

 

        

 

    喫煙歴も全くない私が

 

    肺腺がんになった。

 

    術後、

 

    咳き込むこともなく

 

    呼吸が乱れることもなく 

 

    痛みに苦しむこともなく

 

    主治医からは

 

 

    「順調すぎるくらい順調な回復ぶりです」

 

 

    ただ心からの深謝を申し上げた。

 

    

    夫と子供の

 

    大きな深い愛に包まれ

 

    一日一日を乗り越えている

 

    幸せに感謝する。

 

 

 

     

 

    

 

 

    駐在地で初めて知ったリモート会話での

 

    前田百合子の存在

 

    小細工をした

 

    卑劣で陰惨な手段に

 

    はらわたが煮えくり返るように

 

    血が逆流する思いを経験した。

 

 

    前田の既婚上司に近寄り

 

    家庭の領域にまで

 

    仕事を盾に抉り入り込む行為に

 

    理解に苦しみ続け

 

    地獄のような精神的虐待を浴びた。

 

 

    コロナ以降、企業では在宅勤務が一般的になり

 

    「リモートワーク」が導入されるようになった。

 

    その結果、

 

    これまでにない新しい形の不倫が急増している

 

    オンライン会議から始める

 

    実に巧みな手法で

 

    男性上司に近づく

 

    落とし穴に気付きにくく、

 

    気付いた時には

 

    深みに嵌ってしまう

 

 

    『リモートワーク不倫』

 

 

    である。

 

 



       

 

 

   

   

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