イキって本を読んでみようと思い327冊目に入りました。
今回読んでみたのは「人間椅子」(江戸川乱歩 作)
横溝正史と並んで日本を代表する推理作家の江戸川乱歩ですが、これまであまり読んでこなかったなあと思い手に取りました。
子供の頃に「怪人二十面相」「少年探偵団」を読んだことはありますが、大人になってからしっかり読んだのは「孤島の鬼」の一冊だけです。
そんなわけで一番有名そうなタイトルのこの本を購入したのですが、なんか読んだことがある気もする……。
それでは感想を書き散らかしていこうと思います。
適当なあらすじ
「人間椅子」
外務省官僚の妻で女流作家でもある佳子のもとに一通のファンレターが届く。
その手紙にはある椅子職人の男による罪の告白が書かれていた。
男はホテルから注文された椅子を中に人が入れるように改造し、椅子の中に入って、そこに座ったいろいろな宿泊客の体の感触を楽しんでいたらしいが……。
「お勢登場」
格太郎は妻・お勢の不倫に悩んでいた。
ある日、格太郎は子供たちとかくれんぼをしていて長持(木でできた箱形の家具)の中に隠れたが、箱の金具がずれて中に閉じ込められてしまった。
格太郎はちょうど帰ってきたお勢に助けを求めるが、逆に鍵をかけられて永遠に出られなくなってしまう……。
「毒草」
『私』の家のそばの原っぱには、江戸時代に中絶に使われていた薬草が生えている。
近所に住んでいる貧しい大家族の奥さんに薬草のことを教えた『私』だったが、しばらくして近くの貧しい家の女性が相次いで流産していることに気づく。
「双生児」
強盗殺人で死刑が決まった『私』は教誨師に人を殺したときのことを打ち明ける。
それは強盗殺人を犯すより前に、初めて殺した実の兄の話だった。
子供の頃から双子の兄と比べられ、自分の恋人も家のしきたりで兄と結婚させられることになった『私』は、兄を殺して入れ替わることを思いつくが……。
「夢遊病者の死」
彦太郎は子供の頃からの夢遊病が悪化して奉公先を追い出されてしまった。
実家に戻ることになったが、夢遊病のことを誰にも言えず、父親からは脛かじりの怠け者だと思われて肩身の狭い思いをする。
そんなある日、父親は頭から血を流して死んでいた。
まさか、眠っている間に自分が殺してしまったのか…?
「灰神楽」
庄太朗は恋敵の一郎をピストルで撃って殺害した。
そのとき家には一郎の弟・二郎がいたが、庭で遊んでいたので気づかれていないだろうとその場を逃げだす。
数日後、あるトリックを思いついた庄太朗はそれを使って二郎に罪をなすりつけようと考えるが……。
「木馬は廻る」
遊園地で働く格二郎は、貧乏な家で3人の子供を養う生活に嫌気がさしていた。
格二郎は同僚のお冬という女性に片思いしている。
ある日格二郎は、お冬の後ろポケットに男が謎の封筒を挟むのを目撃する。
男性客からのラブレターかと思って開けてみた格二郎だったが、中には盗んできたと思われる大金が入っていた。
「指環」
列車の中で女性の指輪を盗んだスリが捕まった。
しかし、車掌がどれだけ身体検査をしても指輪は見つからなかった。
スリはどこに指輪を隠したのか…?
「幽霊」
実業家の平田は辻堂という男から恨みを買っていた。
ある日、平田のもとに辻堂が死んだという知らせが入るが、辻堂は『幽霊になってつきまとってやる』という遺言を残していた。
それ以来本当に辻堂の幽霊が現れるようになり……。
「人でなしの恋」
門野という青年に嫁いだ京子は、しばらくは幸せな結婚生活を送っていたが、夫の浮気を疑うようになる。
ある夜、毎晩のように蔵に入っていく門野のあとをつけた京子は、夫が『何』と不倫しているのか気づいてしまう。
この下ネタバレありの感想
↓
推理小説・怪奇小説・幻想小説が混然一体となった短編集です。
最初の「人間椅子」があまりにも変態的怪奇小説だったからそういう方向性の本なのねと思っていたら、
ガチガチの本格ミステリーもあれば、中年男性が悶々とするだけの回(?)もあり、最後は純文学のような美しい話で終わります。
作風の幅が広いですね……。
どのジャンルの話を読んでも独特の味を感じることができて面白かったです。
第一話「人間椅子」は本当にド迫力の変態が出てきます。
ただ女性のお尻に触って喜んでいるみたいなライトな変態ではなく、もっと性癖を拗らせた濃い変態という感じです。
地位の高い西洋人男性に座られて、たくましい体格にコンプレックスを感じつつ、椅子の中から刺したらいつでも殺せるということに優越感を感じて興奮するというあまりにも濃い性癖を見せられて困惑しました。
太った人に座られても興奮してガリガリの人に座られても興奮しています。
ストライクゾーンの広すぎる変態なのでしょうか…?
第二話「お勢登場」は殺人は起こるけど別に推理は無いし、ただ悪人が勝ち逃げするだけという後味の悪い話です。
しかしこの『登場』というタイトルがいい感じを出していますね……。
お勢さんは最初からずっと登場しているのですが、なんだかこの『登場』という言葉が良い感じを出しています。
第三話「毒草」はミステリーでもホラーでもありませんが、重苦しくて暗い話です。
大正ロマンの時代の陰にあった貧困や格差などの闇が描かれています。
当時を実際に生きていた人だから書ける小説だと思いました。
第四話「双生児」は兄弟の愛憎を描いた怪奇小説…かと思いきや、途中から入れ替わりトリックをテーマにした本格ミステリーへと変わってきます。
主人公の仕組んだ完全犯罪がどうやって見破られるのか!?とハラハラします。
最後は あ~~なるほど! って感じ。
第五話「夢遊病者の死」は主人公の冤罪を晴らすミステリー小説…なんだけど……。
とにかく精神的にキツい。
病気で働けなくなった主人公が周りから理解されずニート扱いされる描写がキツすぎて読むのがしんどいです。
カフカの「変身」を読んでいるときと同じしんどさがある。
しかも生きている間に冤罪を晴らすことはできず、絶望したまま死んでいくという救いのなさです。
第六話「灰神楽」は逆に、他人に冤罪をなすりつけた主人公がどうやって見破られるのかという倒叙ミステリーです。
でもこんなトリックで本当に人に罪なすりつけられるかなあ!?というぐらい『そうはならんやろ』感満載です。
そんなピタゴラスイッチみたいな死に方。
まあだからあっさり見破られるんですが…
第七話「木馬は廻る」は殺人事件も起こらなければ、怪奇事件も起こらない普通の日常の物語です。
なのにこの短編集の中で一番何かの迫力を感じた作品でした。
普通の中年男性が悶々とする心情描写が圧倒的すぎて、読んでいるとなぜか息苦しくなってくる。
なんというか…『中年の危機』というか…
文豪の人間描写のすごさが実感できます。
第八話「指環」はたった6ページしかない超短編で、そのうえ台本形式で書かれているという小説です。
こういう形式の作品もあるんだ~と驚きました。
最後の一行でスリが指輪を隠したトリックが判明するというのもドキドキしました。
第九話「幽霊」は途中でいきなり良いキャラが出てくると思ったら、まさかのあの人!
この人他の作品にも出てくるのかな~と思っていたら、もうすでにめちゃくちゃ長いシリーズになってました。
最終話「人でなしの恋」はひたすら美しい幻想小説です。
こんなのもう純文学じゃないですか……。
本当にすごいのでみんな読んでください(語彙力消滅)
これから戦前の探偵小説・怪奇小説もたくさん読んでいきたいと思います。
大正から昭和初期辺りって絶対に実際に暮らしたくは無い時代ですが、なんとなくロマンを感じますよね。
また 江戸川乱歩・横溝正史・夢野久作などの作品を集めていきたいです。

