イキって本を読んでみようと思い385冊目に入りました。

今回読んでみたのは「深泥丘奇談・続」(綾辻行人 作)


以前読んだ「深泥丘奇談」の第二作です。

これに続編あるんだ。という気持ちと同時に確かに無限に話作れそうなフォーマットだなとも思います。

綾辻さん自身らしき人が主人公の嘘エッセイというかなんというか……。


嘘エッセイというジャンルけっこう好きなんですよね。

ありえないことが実話のように書かれていればいるほど好きです。

ありえなければありえないほど良いですね。

漫画の「犬のかがやき」とか。

だいぶ方向性違いますが。

綾辻さんはカニと戦ったりしない…!(しなさすぎるだろ)

それでは感想を書き散らかしていこうと思います。



適当なあらすじ

京都市深泥池付近によく似た街・深泥丘で暮らすミステリー作家の『私』が経験した怪奇な事件を描く連作短編集。

10話の物語を収録。


「鈴」

ある朝『私』が散歩をしていると無人の神社から鈴の音が聞こえてきた。

お賽銭箱の前の鈴を引っ張っている人はもちろんいないし、風も無い。

なぜ音がしたのかを推理していく『私』だったが……。


「コメコネガニ」

『私』夫妻は友達の森月夫妻からかに道楽に招待された。

しかし『私』は子供の頃、祖母が生きたカニをすり潰しているのを目撃して以来カニが苦手だった。

『私』は人間に無残な食べられ方をした甲殻類の怨念について思いを馳せる。


「狂い桜」

冬なのに桜が開花した年、『私』は小中学校時代の同級生と同窓会をした。

同級生の大宮くんがトイレに行くため席を立った途端、みんなが突然大宮くんの訃報について喋り始める。

みんなは『惜しい人を亡くした』とまるで死んだかのように悲しんでいたが、大宮くんが戻ってきたら普通に会話を再開した。

それからも同窓会では奇妙な出来事が……。


「心の闇」

『私』が深泥丘病院に検診に行くと、肝臓の辺りに黒い影が見つかった。

医師の石倉先生によると、これは『心の闇』らしい。

『心の闇』は心じゃなくて全身にあり、なぜか肝臓に貯まるらしく、しかも外科手術で取れるらしい。

とりあえず『私』は手術で取ってもらうことにしたが……。


「ホはホラー映画のホ」

夢の中で刑事になっていた『私』は監察医の石倉先生とバディを組んで連続見立て殺人事件を捜査していた。

一件目は映画「オーメン」の殺人シーンを再現した死体、二件目は「サスペリア」で三件目は「エルム街の悪夢」。

そして最後の事件は「13日の金曜日」かと思いきや……。


「深泥丘三地蔵」

地蔵盆の日、『私』は真っ赤に染まった地蔵を見つけた。

石倉先生によるとこれは『深泥丘三地蔵』のうちの二つ目で、『一つ目』と『三つ目』も存在するらしいが……。


「ソウ」

深泥丘で飛び降り自殺に失敗した女性が何らかの重い凶器で圧殺される事件が発生。

死体のそばには『ソウ』というダイイングメッセージが残されていた。

その次はアル中の男性が圧殺される事件が起き、死体はジグソーパズルのピースを握りしめていた。

ホラー映画マニアの『私』は、この事件は映画「ソウ」に出てくる殺人鬼『ジグソウ』の模倣犯なのではと考えるが……。


「切断」

近所の神社で50のパーツに切断された人体が発見され、犯人として神主が逮捕される。

神主は犯行を認めているが、死体を50回切断したと自供している。

死体を50回切断したならパーツは51個になるはずだが、警察が調べた所、一つも欠けているパーツは無い。

なぜ切断回数が多いのか……?


「夜蠢く」

ある夜、『私』の家の照明カバーにムカデが入り込んできた。

しかも妻にはムカデが見えていないらしい。

格闘の末なんとかムカデを退治したが、ムカデの死体が忽然と消えてしまった。

ムカデに噛まれた所が腫れたので病院に行ってみると、石倉先生は『ムカデの幽霊』じゃないかと言い出す。


「ラジオ塔」

ある日近所の公園に行くと、子供たちが謎の塔を取り囲んで何かを聞いていた。

違うときにはお年寄りたちが塔を取り囲んで何かを聞いている。

妻によるとそれは、ラジオが各家庭に普及していなかった時代に建てられた『ラジオ塔』ではないかという。

もうラジオも置かれていない、スピーカーも無い空のラジオ塔で、あの人たちは何を聞いていたのか……?



この下ネタバレありの感想









怪談寄りだった前作よりもシュールギャグ風味が強くて笑いました。

カニ回とかホラー映画回とか絶対に笑いを取りに来てるよ!

わりと犬のかがやきの絵で脳内再生しても違和感ないのが草です。

カニも出るし。

『甲殻類の怨念がついに臨界点に達する』とかはどっちかというとギャグのセリフだと思うよ。


甲殻類の怨念……。

真面目な文章で出てくるセリフではなさすぎますが、シリアスな幻想文学調の文体で大真面目にお出しされます。

ズワイガニも毛ガニもタラバガニも襲ってくるんだあああ!と大真面目に怯えているシーンでは笑っていいのか困惑しました。

そういうギャグなんですよね?

あと、かに道楽でクトゥルフ神話的な何かが普通に提供されていて笑いました。

こんなかに道楽は嫌だ。

脚が13本もあるサワガニっぽい何かを生でいくのはさすがに嫌です。

せめて殻を剥いてくだされば……。


第4話「心の闇」もギャグ回…なのか?

心の闇がエコー検査で肝臓から見つかるという意味のわからない状況で開幕します。

なんか肝臓で毒物を分解する機能上、心の闇は肝臓に貯まりやすいらしい。

心の闇ってアルコールだったのか……。

まあ似たようなものかもしれませんが。

それはもう肝臓の闇なのでは?


第6話「ソウ」は真面目な殺人鬼スリラーかと思いきや、最後のとんでもないオチで爆笑ギャグと化します。

これがバカミスというやつか……。

ツッコミ所が多いわけではなく、むしろ計算されて丁寧に伏線の貼られたオチなのになんでこんな変なんだよ…!

ホラー映画の殺人鬼の模倣犯を追っていた前半からなんでパワー!パワー!パワー!力こそパワー!みたいなオチに。


第7話「切断」は特殊設定ミステリ風で面白かったです。

犯人はなぜ死体をバラバラにしたのかという謎と、なぜ50回切断してパーツが50個しかないのかという謎があります。

忘れてはいけないのが、この世界には人間でも動物でもない何か邪神的な存在が当たり前にいるということです。

バラバラ死体のパーツの謎が図形問題みたいに綺麗に解決するので、これ系のホラーとミステリーって意外と相性良いんだ!と感動しました。


最終話「ラジオ塔」は打って変わって、終戦記念日に関する切ない話です。

短編集にはこういう話が一つあると締まりますよね……。



トータルで見てこの本がホラーなのかは疑問ですが、わりと怖い回もあったしやっぱりホラーなんかな。

甲殻類の怨念……。

第三作「深泥丘奇談・続々」も読んでみたいと思いました。


深泥丘奇談・続の表紙