イキって本を読んでみようと思い332冊目に入りました。

今回読んでみたのは「どんどん橋、落ちた」(綾辻行人 作)

「館シリーズ」で有名な綾辻行人さんによるミステリーの短編集です。


館シリーズはホラー・幻想小説の要素も強い作風でしたが、今回読む作品は100%ミステリーに振り切った『犯人当て』の小説なんだそうです。

私はどっちかというとガチガチの本格ミステリーは苦手ですが、犯人を当てられるように頑張っていきたいです。

それでは感想を書き散らかしていこうと思います。



適当なあらすじ

ミステリー作家である綾辻行人のもとに、謎の若者『U君』が現れる。

Uは自作のミステリー小説を見せにきたらしい。

大学のミステリー研究会の後輩かと思った綾辻は彼を家に上げるが……。

果たして、綾辻はUのミステリー小説の犯人を当てることができるのか!?

5話の物語が入った連作短編集。


「どんどん橋、落ちた」

大学生の伴ダイスケは友人たちと山へキャンプに来たが、悪ガキの弟・ユキトが行方不明になっていることに気づく。

探しに行くと、ユキトは崩落した橋の向こうに取り残されてしまっていた。

一方、山の中のM村の住民たちは〈禁断の谷〉に近寄ってはいけないと長老から言い聞かされていた。

ユキトが取り残された場所はちょうど〈禁断の谷〉だった。

ダイスケが助けを呼んで戻ってくると、ユキトは何者かに突き落とされていて…?


「ぼうぼう森、燃えた」

ぼうぼう森という森の中には住み着いた野良犬たちが村を作っていた。

ある日、悪ガキが山にやってきて犬たちにペンキをぶっかけ始めた。そのうえ偶然山火事まで起こってしまう。

そんな中、ボス犬の『ロス』が殺害されるという殺犬事件が発生。

ロスを殺した犯人または犯犬は誰!?


「フェラーリは見ていた」

ミステリー作家の綾辻行人は昔お世話になった編集者のU山さんの家を訪れた。

U山さんの奥さんによると、この頃近所で事件が起こったらしい。

黒いフェラーリに乗っているカサイさんというお爺さんは猿を飼っていたが、その猿が何者かに殺されたというのだ。

綾辻はU山さんと現担当編集のA元さんとともに推理を繰り広げるが……。


「伊園家の崩壊」

世田谷区の某サエさん的一家は、ある事件から崩壊の危機に瀕していた。

母のネが殺人事件を起こしたあと自殺したのだ。

それ以来、父のミヘイは酒とギャンブルにハマって路上で死に、長女のサエは覚醒剤を打つようになる。

婿のマオは不倫、長男のカオはグレて暴走族に入ってしまった。

次女のワカは事故で大怪我を負って引きこもりに。親戚のイクちゃんは何歳になっても『バブー』『ハーイ』しか喋らない。

そんなある日、サエが自宅の二階で死体になって発見された。

犯人は一家のうちの誰!?


「意外な犯人」

ミステリー作家の綾辻行人はかつて原案を担当したドラマの録画を観るが、ドラマの原案を書いた記憶がまったく無い。

そのドラマには綾辻行人役のキャラも登場するが、それも覚えていない。

綾辻行人は過去の自分が書いたはずのミステリーの真相を当てられるのか…!?



この本はミステリーなのでネタバレが嫌な方はご注意ください。


この下ネタバレありの感想

(叙述トリックのネタバレが含まれます!)











ひどいwwwwww(良い意味で)

何この…何?

こんなふざけまくった短編集だとは予想していませんでした。

上のあらすじの通り、ひどすぎるサザエさんがあります。

ありがちな不幸を並べた露悪パロかと思ったらダメ押しみたいに『バブー』『ハーイ』しか喋らないイクラちゃんが出てきて爆笑してしまいました。

急に出てくる原作要素が一番おもろい。


しかし、ミステリー小説としてはサザエさんパロが一番真面目に見えるぐらい他の回はもっとカオスです。

読者を驚かせるのを通り越して笑わせようとしているとしか思えない展開がバンバン出てきます。

あと細かすぎてわからない推理小説界の内輪ネタが満載だし、そうかと思ったら普通にギャグも満載です。

第二話の「ぼうぼう森」なんて『ちゃうちゃうチャウチャウちゃう』という古典的な関西弁ギャグ言いたかっただけやろ。


「十角館の殺人」に引き続きエラリイ、アガサ、カー、ポウ、オルツィ、ルルウという名前のキャラが登場します。

もちろん十角館の人たちとは別人です。

というか別人じゃないと困る。

いや、別人というか…別犬というか

なぜかヴァンだけ伴ダイスケ(ヴァン・ダインのもじり)という名前になっています。

ヴァンどうして……。


個人的には第三話「フェラーリは見ていた」が好きです。

この短編集の中では一番地味な話ではありますが、一番納得感があります。

まさかフェラーリが車じゃなくて○○だったとは。

伏線の貼り方も一番フェアだったと思います。

だってM村はモンキー村で住民は全員猿だったんだあああ!とか、

犬に育てられた人間は犬語が喋れるんだあああ!とかよりも、『フェラーリという名前の馬です。』って言われるほうがまだ当てられる余地ある気がしますよね。


問題は第四話の「伊園家の崩壊」です。

タイトルを見てわかるように、ひどすぎるサザエさんパロの回です。

いや普通に趣味悪いwww(良い意味で)

何これ……。

なんというか、アンパンマンをムキムキにして喜ぶ中学生のノリを文章の上手いプロの作家が本気でやったらとんでもないものができたみたいな…

シリアスな場面でタラちゃんが『ですぅ』という語尾で喋り始めたとき爆笑していいのかわかりませんでした。

パロディ以外の部分も露悪的で普通に趣味が悪いので人を選ぶ作品です。


第五話「意外な犯人」はテレビドラマという設定の物語なので、登場人物は全員俳優という設定です。

まさか俳優役で霧越邸の劇団の人たちが再登場するとは思いませんでした。

暗色天幕もテレビ出るぐらい有名になったのか。

なぜか暗色天幕のメンバーの中に、いとうせいこうさんが当然のように混ざっていて困惑しました。

なぜいとうせいこう?

なんか実在のドラマとかがあったんでしょうか?


『U君』って結局誰だったんだろう。

描写的には大学時代の綾辻行人さん本人だと思われますが……。

調べたら綾辻さんの本名は内田さんらしいですから、確かに『U』です。

あと「フェラーリ~」に登場するU山さんは宇山さんという実在の編集者さんで、「迷路館」に登場する宇多山さんのモデルでもあるそうです。

他のミステリー小説界の内輪ネタはほとんどわかりませんでした。



なんだか綾辻行人さんに対するイメージが変わりました。

「暗黒館」や「眼球綺譚」のような美しく幻想的な小説のイメージだったんですが…

もう例のひどすぎるサザエさんのこと一生忘れられないよ。

この先どの作品を読み返しても『でもこの人伊園家の崩壊書いてたんだよな…』という気持ちになってしまいそうです。

それだけ作風の幅が広いということでもありますからね……。



どんどん橋、落ちたの表紙