イキって本を読んでみようと思い383冊目に入りました。

今回読んでみたのは「めざすは飛鳥の千年瓦」(山本清一 作)

めざすは飛鳥の千年瓦の表紙


館ものミステリーに憧れて建築の本を読み始めたのも9冊目に入りました。

前回↓

今回は『瓦』だそうです。

和風…です。

再び館から離れていっているような気がしますが、まあ瓦のある館もあるし……。

それでは感想を書き散らかしていこうと思います。



適当な概要

戦後まもなくの時代に屋根職人の父親に弟子入りした著者は、修行を経て20代で一人前の屋根職人として独立。

その後、法隆寺金堂、東大寺大仏殿、平城宮大極殿、松本城などの修復に参加する。

『良い瓦』を求めて瓦の制作にも力を入れるようになった著者は飛鳥時代の瓦の製法を再現する研究もしている。

そんな著者が『良い瓦』とは何か、弟子を育てるとは何かについて語る本。



この下ネタバレありの感想









みなさん瓦は好きですかー?

私は別にどっちでも……。

この本を読むまでは瓦のことを好きでも嫌いでもありませんでした。

というか、好きとか嫌いとか以前に瓦のことを知りませんでした。

今回読んでみて、いやー、瓦って深いんですねェ…と思いましたね。


『屋根に瓦を葺く職人』という職業を師匠から弟子へ代々受け継いでいる人たちの人生について書かれています。

著者の山本清一さんも戦後すぐに父親に弟子入りして瓦葺きの技術を受け継ぎました。

8人兄弟の4番目として生まれた山本さんは跡継ぎになる予定ではありませんでしたが、兄が戦争で怪我を負ったり、他の兄弟も別の仕事を選んだので山本さんが継ぐことになったそうです。

昭和の頃はヘルメットも命綱もせずに作業するのが当たり前だったらしい。

山本さんも3回落ちたことがあるそうです。

昭和って大変な時代だったんですね……。


弟子時代から独立してすぐは住宅の屋根を手がけていましたが、文化財の屋根をやりたいと思うようになっていったそうです。

当時は文化財の仕事をするよりも住宅をしたほうがお金をもらえたので、文化財修復をやりたがる人は少なかったそう。

そんな中で文化財修復を多く担当していた親方・井上新太郎氏と出会って、井上さんの元で松本城や法隆寺などの仕事を経験されました。


父から子に、師から弟子にという伝統工芸の世界というのはすごいですね……。

『屋根瓦』という目立たない世界にも歌舞伎や茶道、華道のような継承のドラマが存在しているんですね。

屋根瓦の職人の中にもいろいろな職種があります。

山本さんのように屋根に瓦を葺いていく職人さんや、瓦を焼く職人さん、鬼瓦を造る職人さんなど…

昔ながらの建物には様々な伝統工芸が関わっているのを実感しました。


そんな屋根職人業界も高度経済成長で変わりつつありました。

『金の卵』と呼ばれた集団就職の若者たちがたくさん屋根職人に就職してくるため、これまで通りの『親方と弟子』の組織から正式な会社の形式にしなければならなくなります。

当時は農家と兼業で職人をしている人が多かったので、社員として登録されたら所得税を余計に取られると嫌がる人も多かったのだそうです。

その当時にはもう多くの職人を束ねていた山本さんは、職人さんたちを一人一人説得してなんとか会社の形式にしました。


親方と弟子の関係性が社長と社員に変わっても大切なものは、『良い屋根を造りたいという気持ちを金儲けよりも大事にする』ということで変わりないそうです。

現代は何でもコストカット、コストカットの世の中と言いますが、今でも良いものを造るためにこだわり抜いている職人さんたちが存在しているんですね……。


そんな瓦は家を建てるときに一回葺いて終わりではないんです。

凍害などで傷むので定期的に葺き直さななければなりません。

凍害というのは、瓦の中の水分が冬の寒さで凍って瓦がひび割れることです。

葺き直しの時期がくれば仕事が増えるとは言っても、やっぱり自分の葺いた瓦がダメになるのは悲しいのだそうです。

それで山本さんは凍てない瓦を造るための試行錯誤も始めました。


また、雨漏りも屋根を葺き直さなければならなくなる大きな原因だそうです。

瓦と瓦の間を漆喰で固めているから水が浸みなさそうに見えますが、漆喰も水を吸い込むのだそう。

むしろ、漆喰を多く盛りすぎるのは屋根によくないらしいです。

知らなかった。

少なく盛っていたら施主さんに漆喰をケチっていると勘違いされて揉めたこともあるんだそうです。



ということはですよ……。

※ここからガチで関係ない話

全然関係ない話になりますが、ミステリーに出てくる山奥や孤島のお屋敷でも瓦が使われている以上定期的な葺き直しが必要だということに……。

来る者を拒む呪われた城…みたいな感じ出してても瓦がある以上定期的なお手入れが必要なんだなあと。

いやでも、意外とちゃんと定期的に瓦を葺き直してそうではありますよね。ミステリーの建物って。

「獄門島」の本鬼頭邸も「悪魔の手毬唄」の由良邸・仁礼邸も、格式ある棟梁を呼んで直してもらっていそう。

迷路荘もホテルですし屋根は綺麗に直しているんでしょうね……。

 

他に屋根が瓦葺きのミステリーの館って私がこれまで読んだ中で何があったっけ…

「凶鳥の如き忌むもの」の鵺敷神社とか?

(館じゃなくない?)

まあ由緒ある神社だから本土から立派な棟梁さんが来て直してるんでしょうね。

 

あと日本家屋の館といえば「人形館の殺人」の人形館とか……。

普通に京都市の街中に建ってるし、入居者に貸し出してる賃貸物件だから、やっぱり屋根は綺麗に直しているんでしょうね。

この表紙の絵を見て気づきましたが、人形館の屋根瓦って青い釉薬瓦なんだ。

今回読んだ本によると、陶器みたいに色がついていて光沢のある瓦を『釉薬瓦』と言うらしいです。

釉薬瓦は光沢があるから水を弾きそうに見えますが、やはり水が浸みないわけでは無いのだそう。


そういえば「暗黒館の殺人」の暗黒館は擬洋風建築だから瓦が使われていたはず。

ほんまや! 2巻の表紙に瓦描いてある!

浦登家って外から職人さんを呼ぶイメージが全然ないし、どうやってお手入れしているんでしょうね……。

やっぱり使用人さんたちが自分で屋根瓦を葺き直しているんだろうか…

蛭山さんは体が不自由だし、鶴子さんや羽取さんは力が足りなさそうだし、宍戸さんが直しているのかな。


他にも瓦葺きのミステリーの館が出てくる本をこれから探してみたいです。

和風の洋館いいよね……。

※関係ない話終わり



著者の山本さんは文化財修復をする中で様々な時代の瓦を見てきました。

飛鳥時代の伝来したばかりの瓦は技術は荒削りながらも彫刻が細かくて丁寧に作られているそうです。

平安時代の瓦はなぜか質が悪いそうです。

室町時代~鎌倉時代の瓦はすごく質が良いそうで、裏側までしっかりヤスリがかけられていて水を弾くらしい。

平安時代の仏像はあんなに丁寧に作られているのに瓦は雑だなんて意外です。


歴史上で一番瓦の質が落ちたのは戦中~戦後まもなくで、焼け野原から立ち直るために大量の建物を必要としていたので、安くて大量生産の瓦ばかりだったのだそう。

ちょうどその時代が山本さんが屋根職人の修行をしていた時代で、瓦を葺くために屋根に登っただけで体重で瓦が割れるというほどだったらしいです。

そんな大変な時代に修行をされていたんですね……。


時代が変わっても山本さんは『瓦づくりは人づくり』という信念を持って弟子を育成していくそうです。

山本さんは2018年に亡くなられたそうですが(この本の発行は2006年)今でも瓦職人さんたちはこだわりを持って仕事をされていらっしゃるんだと実感しました。

今建物を直すだけではなく、後進を育成すること、次世代に技術を継承することを大切にされているんですね……。



『瓦』についての本を初めて読みましたが勉強になりました。

全編関西弁の口語で書かれていて、関西のお爺さんが語っている感じが出ていて面白かったです。

また住宅街を歩くとき瓦に注目して見てみようと思います。


あと、瓦葺きの館が出てくるミステリーを読みたいです。

ためしに『ミステリー 瓦葺き』で検索してみたら「ミステリと言う勿れ」のロケ地が出てきました。

瓦葺きではありますが……。