イキって本を読んでみようと思い239冊目に入りました。

今回読んでみたのは「『まじない』の民俗」(神崎宣武 作)。

タイトルが怪しすぎますよね……。

まじない民俗ですよ。あまりにも字面が強い。

表紙の写真を見てください。

まじないの民俗の表紙

この絵馬の人の髪型すごくない?
さっそく読むのが楽しみになってきました。
それでは感想を書き散らかしていこうと思います。


適当な概要
日本各地では昔から災害を避けることや病気を治すことを目的にさまざまな『まじない』が行われてきた。
いろいろな地域に伝わる『まじない』から昔の人々の生活や考え方を解説する本。

第一章「天災に対するまじない」
雷が鳴っているときに唱える『くわばらくわばら』という言葉や、巨大なナマズが地震を起こすという伝承の由来とは!?
自然災害にまつわるまじないを解説。

第二章「病気癒しのまじないと願かけ」
全国各地で伝わる出血の怪我を治すおまじないの呪文に共通する『アブラオンケンソワカ』という言葉は何なのか!?
消毒液の『赤チン』の赤色を見ると安心するのは、疱瘡除けのおまじないで赤い布や紙を吊るしていたから!?
病気や怪我にまつわるまじないを解説。

第三章「門口での魔除けとまじない札」
風邪が流行ったときに『久松は留守』と書いた紙を玄関に貼るおまじないの"久松"とは誰なのか!?
魔除けのお札によく書き込まれる『急々如律令』という言葉の由来とは!?
玄関に貼る魔除けのまじないを解説。

第四章「村境での防塞のまじない」
全国各地で村や町の境目にある『道祖神』はどういう神様!?
畑や田んぼの害虫を追い払うことを祈願する行事・虫送りで使われる巨大な藁の人形『サネモリドン』とは何者!?。
地域の境目にまつわるまじないを解説。

第五章「農・漁・猟、仕事のまじない」
果実の豊作を願うために刃物で少しだけ木に傷をつけるのはなぜ!?
海女さんが海の中で身を守るためのおまじないとは!?
農家、漁師、狩人など自然を相手にする仕事のまじないを解説。


この下ネタバレありの感想







聞いたこともないような呪文がたくさん載っていてワクワクしてきました。
そんな緊急事態に呪文唱えられるか!?みたいなのもあって面白かったです。

雷が鳴ったときに言う『くわばらくわばら』も呪文だとは知りませんでした。
当たり前にありすぎて普通の慣用句かと思ってた……。
雷神が空から落ちて民家の井戸に閉じ込められてしまったとき、『俺は桑の木が嫌いだから桑原には落ちない』と住人に教えたことで井戸から出してもらえたという昔話があるんだそうです。
もう一つの由来には、菅原道真が怨霊になって都に雷を落としたとき、自分の領地の桑原にだけは雷を落とさなかったからという話があります。
桑の木は低木だから雷が落ちにくいのでそう言われるようになったのではないかといわれているそうです。

地震避けの呪文も載っています。
揺るぐとも よもや抜けじの 要石
鹿島の神の あらん限りは
なんでも、地震は地下に住む巨大なナマズが起こしているという言い伝えがあり、そのナマズが動かないように抑えていてくれるのが鹿島の神なんだそうです。
江戸時代の絵になると、地震を起こしているはずのナマズがなぜか逆にヒーローのように被災者を救出していたりします。
このヒーロー・ナマズ男もまた復興を祈る一種のまじないなのだそうです。

足のしびれを治す呪文が載っています。
しびれしびれ 京へ行け と唱えながら額に唾で藁しべをつけると治るそうです。
京都がとばっちりすぎる。
他人のしびれを送ってこないでください。

しゃっくりが止まらないときは、
朝顔 朝顔 朝顔 と唱えるとしゃっくりが止まるらしい。
本当に…?

喉に魚の骨が刺さったときは、
天竺の 七つが池の 白鯰
鵜の喉通る 鯛の骨かな
アブラオンケンソワカ 
と唱えると大丈夫になるらしいです。
いや、喉に骨刺さってるのにそんな長いこと喋れんって。

やけどをしたときは、
奥山の 池の大蛇が 火にくばり
焼けもせず 燃えもせず
水がじくじく
アビラオンケンソワカ 
と唱えると早く治るらしいです。
水がじくじく……。
やけどしたときに唱えてみてはどうでしょうか?
『水が…じくじくッ!』みたいな感じで。

血が出たときは、
血の道や 父と母との血の道や
血の道止める 血の道の神 
オナギラオンケンソワカ 
と唱えたら血が止まるそうです。
アブラからオナギラにパワーアップしましたよ……。
微妙に強そうです。

この『アブラオンケンソワカ』という呪文は全国各地に伝わっていますが、もとは仏教の真言の『アビラウンケンソワカ』というものだったのだといいます。
この真言が日本各地に伝わる中でいろいろ変化して『アブラ』とか『オナギラ』とか言うようになったそうです。
変化しすぎて『油桶(あぶらおけ)ソワカ』と言うようになった地域もあるそうです。

消毒液の赤チンの赤色を見て安心するのは昔から疫病封じのまじないに赤色が使われてきたからなんだそうです。
安心…する…?
赤チン見たことないです……。
昭和生まれの方には馴染みがあるのでしょうか?
なんでも、疫病の神を追い払う『疱瘡神送り』という行事では、赤色の御幣(神社とかにあるひらひらの紙)を使うそうです。
また疫病にかかった人に赤い肌着を着せたり赤い蚊帳の中で寝させたりする習慣があったのだといいます。

なんと昔は薬として飲む用のお札があったのだそうです。
みなさんは『六三ジ除け』というものをご存知でしょうか?
私は初めて聞きました……。
なんでも体の不調を占うまじないなんだそうで、まず年齢の数え年を9で割ります。
割った数に6か3があったら、その数にあたる体の部位が悪いのだといいます。
もし悪い部位があったら、六三ジ除けのお札を紙が真っ黒になるまで重ね書きし、紙の真っ黒の部分を切り取って飲みます。
そんな占いがあるんですね……。
紙食べて大丈夫なの…?

妊娠したときのおまじないに、夫のふんどしを腹に巻くと安産になるというものがあって困惑しました。
夫のふんどしは巻きたくないなぁ……。

お札に書く『急々如律令』という呪文はもともと昔の中国の法律用語で、『律令に則って速やかに事をなせ』という意味の言葉だったのだそうです。
それが道教のお札に取り入れられて、そこから日本にも入ってきたのだといいます。
道教由来のまじないですが神道にも取り入れられたのだそうで、方位を改めるときの祝詞の中に、
かんごんしんそん りこんだけん
急々如律令 
という文章が入っているものがあるのだそうです。
そういえば皆さんは『急々如律令』という言葉を初めて聞いたのってどの漫画ですか?
私のファースト急々如律令は子供の頃に水曜の夕方にやってた「双星の陰陽師」というアニメでした。
アレって原作とだいぶストーリー違うらしいですね…
ギャルみたいな敵キャラが一番好きだったんですが、ウィキペディア見たらアニオリだと書いてあってびっくりしました。
ジャンプ読んでないから原作知らないんですよね……。

皆さんはサネモリドンという人をご存知でしょうか?
この人は『虫送り』という、畑の害虫を追い払うことを祈願する行事で使われる巨大な藁の人形です。
鎧を着た武士の姿をしています。
サネモリドンは村や町の入り口に立てられたり、わっしょいわっしょいと担いで川に放り込まれたりします。
そんなサネモリドンは、斎藤実盛という平安時代の武士が元ネタ?なのだそうです。
斎藤実盛は源義仲追討のために北陸へ下っていたとき、稲の株につまづいてしまい、その隙に敵に殺されました。
それで稲を恨んで、稲を食い尽くす害虫に生まれ変わったのだといいます。
逆恨みがすぎる。

著者によるまえがきとあとがきでは現代のまじないについて書かれていました。
ミサンガのことを『薄汚い紐』と言っていてあまりの身も蓋もなさに笑いました。
薄汚い紐て。
見た目は薄汚いけど若者の夢と友情と努力が詰まっているんですよ……。


日本全国にはまだまだ私たちの知らないおまじないがたくさんあるんだなぁとなんだか感動しました。
子供の頃、「恋のおまじない100選」みたいな本ばかり読んでいたのでこういうのを見るとワクワクします。
まあこの本に載っているのは、夫のふんどしを巻けだの、童子の尿を飲めだの可愛さのかけらもないやつばかりですが……。
飲尿健康法やめろ。
リアリティ(?)があってある意味良いですよね。

喉に骨が刺さったときや火傷をしたときには呪文を唱えている余裕はなさそうです。
でも、しゃっくりが止まらないときに朝顔朝顔朝顔は唱えてみたいです。