イキって本を読んでみようと思い69冊目に入りました。

今回読んでみたのは「シャーロック・ホームズの凱旋」(森見登美彦 作)。

こんなタイトルですがミステリーではありません。

スランプで推理力を失ったホームズがうろうろするコメディです。

そのうえなぜか全員京都に住んでいます。

えっ京都?

それでは感想を書き散らかしていこうと思います。


適当なあらすじ

舞台はヴィクトリア朝京都。19世紀イギリスにそっくりだが鴨川や大文字山が存在する世界。

スランプに陥って推理力を失ってしまったホームズは、ワトソンやレストレード警部とともに奮闘するがなかなか上手くいかない。

それにはどうやら12年前に解決できなかったある事件が関係しているようで……?

5つの物語が入った連作短編集。


第一章「ジェイムズ・モリアーティの彷徨」

ワトソンと妻のメアリは最近関係がギスギスしつつあった。

原因はスランプ以降ふてくされてアパートに引きこもっているホームズだ。

なんとかしようとホームズのアパートを訪れたワトソンだったが、ホームズはヴァイオリンを爆音でかき鳴らすなどの変な行動に出るばかりで動こうとしない。

そんな中 アパートの上の階に住む偏屈なお爺さん、モリアーティ教授が近所迷惑だと怒鳴り込みに来る。


第二章「アイリーン・アドラーの挑戦」

ホームズのアパートの向かいに新しい探偵事務所ができる。開業したのはアイリーン・アドラーという元女優の女性探偵だ。

アイリーンはホームズにどっちが多く依頼を解決するか競争を申し込む。

ライバルが現れたというのにホームズは一向にやる気を出す様子がない。

そのうえメアリまでもがアイリーンの味方をしている。

ワトソンはなんとかやる気を出させようとするが……。


第三章「レイチェル・マスグレーヴの失踪」

ワトソンは、スランプの原因は12年前にホームズが解決できなかったマスグレーヴ家の失踪事件にあると突き止める。

12年前 マスグレーヴ家の娘、レイチェルが密室から忽然と消えたのだ。

そして現在、マスグレーヴ家では霊媒のリッチボロウ夫人による交霊会が行われようとしていた。

交霊会にはホームズとワトソンの他に、アイリーンとメアリ、モリアーティ教授と教え子のカートライトも招待されていた。

招待客たちが見守るなか交霊会が始まるが、再び人間消失事件が……!


第四章「メアリ・モースタンの決意」

モリアーティ教授の自己犠牲によってマスグレーヴ家の事件は解決したが、ホームズは探偵を引退することを宣言する。

そんな中、モリアーティ教授の部屋を片付けに行ったワトソンは"ロンドン"という街の模型を発見した。

その頃ヴィクトリア朝京都の心霊主義者たちの間ではロンドンという異世界の存在が噂になっていた。

"ロンドン"に隠された世界の秘密とは……!?


第五章「シャーロック・ホームズの凱旋」

イギリスのロンドンに住むワトソンは『シャーロック・ホームズの凱旋』という小説を書き上げる。

その小説の中では すでに亡くなったメアリや疎遠になったホームズたちがヴィクトリア朝京都という異世界で仲良く暮らしていた。

ある夜、ワトソンは宿敵モリアーティ教授の主催する『黒の祭典』に招待される。

ワトソンはそこであることを思い出し……。

果たしてワトソンはホームズを救えるのか!?








ヴィクトリア朝京都って何なんだろう……?

イギリスっぽいのに当然のように寺町通りとか南座が出てきます。

京都警視庁に〈スコットランド・ヤード〉ってルビ振ってあるのヤバいw

それに京都府警じゃないのか……。

出町柳にアヘン窟があるの怖。本当はそんな治安悪い所じゃないですよ!

なぜか京都に住んでいるというギャグかと思っていたら、かなりシリアスな展開への伏線になっていてびっくりしました。

ツッコんだら負けなやつじゃないんだ!?

この世界にロンドンが存在しないとわかってから第五章に突入するまでの緊張感がすごかったです。


今回はコメディだから明るいノリかと思って油断していたら、第三章の辺りから一気に雰囲気が変わってきました。

本当にミステリーみたいになってきたんですけど…っていうかこれちょっと怖いやつじゃないですか?

闇の森見さんが漏れ出てきてる……。

でもホームズさんとワトソンさんの掛け合いはずっと楽しそうな雰囲気で安心しました。


ホームズさんが竹林で世捨て人ファッションしてた辺りでめちゃくちゃ笑いました。

『ツチノコだと思ってくれたまえ』のところ好きです。

この本では最後までほとんど推理しないけど素敵なおじさんでした。


ワトソンさんの友情が熱くて感動しました。

やっぱり相棒あっての名探偵ですよね。

第四章のラストで"東の東の部屋"に突入するときカッコよかったです。

うおー!絶対帰って来いよー!ってなります。

ロンドンのほうのワトソンさんはあまりにも悲しすぎて、あそこで終わりじゃなくてよかった〜と思いました。


モリアーティ教授はただの偏屈なだけの良い人と化していました。

あなた自己犠牲とかする人だったんですね。

最後に帰ってきてくれて良かった……。


メアリさんとアイリーンさんの友情も良かったです。

男子ーズがわちゃわちゃしている間この2人が代わりに名探偵みたいに活躍していて面白かったです。

やっぱり奥さんは元気なのが一番ですよね!

アイリーン・アドラーは原典では「ボヘミアの醜聞」という短編にだけ登場するキャラクターらしいのですが、

この作品ではメアリ・モースタンの学生時代の友人という設定で、女性版ホームズとワトソンのような関係になっています。

2人が仲違いしたときはすごく悲しかったけどラストでまた一緒に探偵を始めてて良かったです。

このバディの友情がずっと続きますように。


レジナルドさんとレイチェルさんも原典の「マスグレーヴ家の儀式」という短編に登場するキャラクターで、サイモン卿は「独身の貴族」という短編に登場するキャラクターだそうです。

全然知らなかった……。

私、ホームズシリーズは子供の頃に「赤毛連盟」か何かを一冊だけ読んだのと映画を2本観ただけなので全然知らないんですよね……。

原典をちゃんと追ってる方なら楽しめる小ネタ満載な感じの本なので、追ってなかったことを後悔してます。


真相はSFっぽい感じでしたね。

パラレルワールドとか世界の破れ目とかが出てくる感じの話だったんだ……。

でも荒唐無稽ではなくてめちゃくちゃ筋は通っていました。

あれ、やっぱりこれミステリーなのでは?


みんなー!帰ってきてくれてありがとうー!

全員未来に進んでいくラストで良かったです。

やっぱりハッピーエンドが最高ですよね。



本の表紙のヴィクトリア朝京都マップめっちゃ可愛いですね。

確かに寺町通りとかのあの辺って19世紀イギリスっぽい洋風の建物多いですよね。

こんど南座の近くに行くのでヴィクトリア朝を感じてきます。


シャーロック・ホームズの凱旋の表紙