新撰組黙秘録勿忘草 ~土方歳三~①
ネタバレございます。
ワタシ目線で勿忘草を語ります。一部脚色がございます事をご了承の上お読み下さい。
大人な表現が含まれます。ご注意願います。
それでもOKの方・・どうぞお進み下さいませ~。
*新撰組黙秘録勿忘草 ~土方歳三~
CV:細谷佳正
池田屋騒動後、怪我をしたワタシを斉藤さんが
屯所に連れ帰った。
土方さんは余所者を入れる事に懸念を表した。
いまだ目を覚まさないワタシを間者かもしれないからと
見張りを付けた。
道場で隊士に稽古を付けていた土方さんに、目覚めたワタシは会いに行った。
「おいお前、其処で何をしている。」
「副長の土方さんにお逢いしたくて。」
「・・その土方に何の用がある。きさまのような得体の知れない女が、そう簡単に新撰組の副長にお目通りが叶うとでも思っているのか。」
「此処に置いて頂けるか訪ねたいんです。」
行く所の無いワタシは必死に言った。
何処の誰だかもしれない者を置いておけるかと言われた。
「ちょ、直接聞いてみないと分からないじゃないですかっ。」
「俺がその土方だ、想像していたような慈悲深い男でなくて残念だったな。」
ふんと鼻を鳴らして、土方さんは上からワタシを見下ろした。
「置いて頂けるなら、何でしますっ。お願いしますっ。」
ワタシの手を乱暴に掴み
「っ、この手はなんだ、どこぞの姫君のような手だ。」
手名臭み程度の仕事しかしてなかったんだろうと
明らかに馬鹿にしたように言い放つ。
掴んだ手を振り払い、女が居ると稽古の邪魔になるとその場から離れるように
言われたワタシは、小走りで離れた。
(あれが"鬼の副長"・・整った顔立ちは聞いた通りだったけど、狼みたいな鋭い目と、威圧感で押し潰されそう・・)
別の日、ワタシは土方さんに部屋に来るように言われた。
近藤さんから、屯所で下女として雇い入れると言われて落ち着いた矢先だった。
「失礼します。」
「入れ。」
腕組をした土方さんは、溜息を一つした。
「・・近藤さんから話があったと思うがお前をこの屯所に住まわせる事になった。」
「ありがとうございますっ。」
「礼なら、平助に言え。わざわざ俺の所に頼みに来たのはあいつだからな。」
藤堂さんが・・後でお礼を言わなくちゃ。
自然に顔がほころぶ。
「何を喜んでいる。良いか、俺はお前を信用した訳じゃないっ。新撰組は駆込み寺じゃないんだっ。」
「此処に留まるつもりなら、甘えた考えは全て捨てろっ。女だからと言って容赦はしないっ。」
射るような視線で見られ、きつく言い放つ言葉に
うっかり泪が滲んだ。
(っ、いけないっ。)
すぐ泣く女だと思われたくない。
我慢しようとすればするほど、泪がぽたぽたと落ちる。
「おっおい、泣いているのか。何を泣く事がっ。俺は当然の事を言ったまでだ。誰がなんと言おうと此処では俺の言う事に従ってもらう。それが此処の規律だ。此処に居たいのなら、俺に認められる事を考えろ。」
「分ったか。」
まずは下女としての仕事を充分にこなせと言われた。
土方さんの言う事はもっともで
ワタシは頷いた。
もう仕事に戻るように言われ、部屋を出た。
「・・まったくこれだから女は面倒だ、泣けば許されると思っているのか。それにしても、つまらない女だ、覇気も無ければ色気も無い。斉藤君も拾ってくるならもっとまともなのを、見繕えば良いものを。」
適当に手綱を引き締めておくか・・土方は
女が出て行った襖を見た。
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隊士に伝達が終わった後、部屋までお茶を持ってくるように土方さんに言われ
ワタシは急いで持って言った。
「お茶、お持ちしました。」
「ああ、入れ。」
お茶は盆ごと置いてゆけと言われたと同時に
湯のみを倒してしまい書付を濡れしてしまった。
「あっ、申し訳ありませんっ。」
「・・お前は湯のみの一つも、ろくに置けないのか。」
「土方さんの前だと・・緊張して手が・・」
「俺が怖いのか。」
意地悪く土方さんがワタシを見た。
「おい、床もそうだが、俺の着物にも茶が掛かったんだが、これはどうするつもりだ。」
「・・申し訳・・ありません。」
「まさか、謝れば済むとでも思っているのか。」
「・・どうすれば良いですか・・。」
教えられないと分らないなら、家畜と同じだと言う土方さん。
「分らないんなら、教えてやる。その代わり俺の言うとおりにするんだ良いな。」
ワタシは薄く頷いた。
「まず・・そうだな、この濡れた着物を脱がせろ。」
驚いて顔を見るワタシに
粗相したのはお前だから後始末をするのは当たり前だと言った。
「男の裸を見るのは始めてとでも。そんな事では此処でやって行くのには無理があるな。此処ではその気がなくても男の身体を見たり触れたりする事がいくらでもある。その度にそんな、いやらしい顔をしてみせるのか。」
「っ、そんな顔はしていませんっ。」
土方さんは、ワタシの顎を掴んでそちらに向かせた
「お前が今どんな顔をしているか教えてやる。頬を染めて、唇を開いて、目まで潤んでる。こんな調子では屯所の風紀に関わるな。」
「だって、、慣れてませんから・・。」
ワタシは掴まれていた手を振り解いて答えた。
土方さんは目を細めてワタシを見た。
「だったら・・こうして慣れれば良い。」
土方さんはワタシの肩を引き寄せ、軽く抱き締めた。
ワタシは固まった。
土方さんの見かけより広い胸に囲まれて
身動き出来ない。
「顔を背けるな、こっちを向け。」
(そんなのっ、出来るわけないっ)
振り解いて逃げようとするワタシを、腕の中に閉じ込めたままにして
「大儀を掲げた隊士とは言え、奴らも男だ。手近にいるお前に恋慕う者も現れるかもしれないな。お前の肌を見たいと思う者もいるかもしれない。だとしたらどうする。」
「分りません・・そんなの。」
「だったら・・・お前は俺の側に居ろ。」
「えっ・・。」
ワタシは顔上げて土方さんの顔を見た。
「お前は・・俺の"犬"だ。」
(い、犬・・)
返事はと聞かれて
「は・・い。」
疑問に思いながらも返してしまった。
すると頬に口付けをされた。
(っ!)
やっと閉じ込められた腕から、開放された。
「もう行け。なんだ、酷い・・とでも言いたそうな顔だな。」
ワタシは軽く土方さんを睨んだ。
土方さんはワタシの側まで来て
「脱がせろと言われて従う馬鹿が何処にいる。主人の言う事を真に受け、罰を与えて初めて懲りる。お前は本当に"犬"だ。」
耳元で囁かれた。
ワタシは後ろに退いた。
土方さんは口の端だけ上げて笑った。
「俺に認めて欲しかったらもう少し、賢くなるんだな。」
ワタシは口惜しさと恥かしさで
慌てて部屋から出た。