新撰組黙秘録勿忘草 ~藤堂平助~④ | 中島陽子のフリーダムなブログ

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新撰組黙秘録勿忘草 ~藤堂平助~④

注意ネタバレございます。
ワタシ目線で勿忘草を語ります。一部脚色がございます事をご了承の上お読み下さい。
大人な表現が含まれます。ご注意願います。
それでもOKの方・・どうぞお進み下さいませ~。



$中島 陽子の〔And ...〕


*新撰組黙秘録勿忘草 ~藤堂平助~
CV:下野 紘



隊士も集まり、明日にでも京に戻ると言う藤堂さん。
又長旅になるから、荷物は最小限にしとくようにと。

「なぁ・・俺の部屋に来ないか。江戸の夜も今日が最後だからなぁ。久々に月を見ながら、ゆっくり茶でも飲もうぜ。」

「あ、はい。」

ワタシは頷いた。

荷物をまとめ、その後、藤堂さんの部屋に
お茶を運んだ。
すっかり夜は更け、月が輝いていた。

「とうぞ。」

藤堂さんにお茶を勧めた。


「あ、ありがとう。京に帰れば、こうしてゆっくり二人で茶を飲む時間も無くなるかもしれねーな。」


「そうなると、ちょっと淋しいですね・・。」


藤堂さんは月を見上げ
「淋しい・・か・・。綺麗だな、月。」

「ええ、本当に。」

二人の間で、静かに時間が流れた。


屯所にいた時より、今の方が月が美しく感じるとポツリと彼は言う。

京に戻れば、きっとこんな風に二人で、ゆっくり過ごす事も
無くなる。
ずっと・・このまま居られれば良いのに・・。

「虫の声にすら、泪が出そうになる・・・。」

(そんな事、言わないで下さい・・。辛い・・。)

「ただお前が隣に居るってだけなのに、全部が煌いて見えるのは何でなんだろう。」

ワタシの方を見る藤堂さん。
月の光に照らされて
妖艶に見える。

「もっと、こっちへ来いよ。」

手を取られ、引き寄せられる。
その弾みで、ワタシの髪が乱れた。

「・・・邪魔だな・・髪・・。」

ワタシの髪を梳くような仕草で直して、首筋に手を伸ばす。

「もっと、その顔を良く見せろ・・。」

視線を合わせられないワタシの口の端に、唇を寄せる藤堂さん。
少し、手に力を入れてワタシの顔を自分の方に寄せる。


「お前が、好きだ。」

唇を捕らわれた。

「やっぱり俺、ちょっとおかしいかも、しれねーな。」
「なぁ・・俺が死んだらお前はどうする。ずっと一人で生きて行くのか。他の男とこうして口付を交わしたりするのかっ。」

彼の瞳に紅く嫉妬が滲む。

「俺の事なんて、忘れちまうのかっ。どうなんだよ・・どうなんだよっ。」
「俺の事なんて忘れんのかよっ。お前はっ。俺の事なんて忘れて他の男と愛し合ったり、すんのかよっ。」

激しく口付けをされて、息ができない。

「嫌だ・・そんなの許さねぇっ。」

急に立ち上がりワタシの手を取り、立ち上がらせる。

「来いよっ、俺の事を、もっと教えてやるよ。お前に、俺の全てを教え込んでやるっ。」

藤堂さんに引き摺られるように部屋に連れ込まれた。

「別に乱暴ようって訳じゃねーんだ。それとも思いあってるってんのは、俺の勘違いか。なぁ、俺の事、好きって言ってただろう。なっ、そうだよなっ。もう一回聞かせてくれよ。俺の事どう思ってんのかっ。」

「・・何度でも言います。藤堂さんの事が好き。」

緊張していた彼の表情が緩んだ。

「良かった・・。やっぱお前も俺の事、思ってくれてんだよな。」

「だったらさ、頼む・・俺の事、受け入れてくれっ。俺と言う存在がお前の中にいつまでも残るように。」

「俺の心をお前に宿してくれよっ。それなら俺が死んだ後も、お前は俺のもんだろっ。なっ、そうだよなっ。」

藤堂さんは自分の身体に触れて欲しいと
いつでも思い出せるようにと言う。


互いの身体に触れ合いながらも、どうしてこんなに
苦しいの・・
こんなに側にいるのに。

このまま月の光と一緒に溶けてしまえたら
・・良いのに。


「愛してる。お前を愛してる。」


「こうして口付けても、後一歩、お前は遠くに居るんだよ。もっと深くに俺に入ってきてくれよ。なぁ、もっと一つになれるはずだろ?」

「駄目だっ、もっとっ、もっとだよっ。いくら唇を重ねても足りねーんだよ。どうしても足りねぇ。お前に深く嵌れば嵌るほど、どうして良いか分らなくなるっ。・・どうすればお前は俺だけのもんになる。どうすればお前の記憶の中から、俺を一瞬でも消えないように出来るっ。」

「なぁっ、どうしたらっ。」

もっとしっかり抱き締めてくれと言う。
泣きながらお互いを痛いほど
掻き抱く。
何処までも、この人と落ちよう・・
ワタシは思う。

「俺が居なくなった時、お前がどうなるんだとか考えるだけでさ、気が狂いそうなるっ。今日だけで良い。一緒に眠ってくれないか。なぁ、良いか。手・・握っても・・」

彼は遠慮がちにワタシの手を握る。

「・・安心するんだ。お前の手に触れてると」

「俺はお前を一生掛けて愛すよ。俺が死ぬ時も、お前の手を握りながらが・・良いな。そしたら。安心して眠れるような・・そんな気がするんだ。」

「こっちを向いてくれ。」

「・・愛してる・・」

(ワタシも・・貴方を・・・愛してる)

ワタシ達は肌を合わせたまま
眠りに付いた。

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京に戻り、暫く時間が過ぎた・・

「京の風は江戸の風と、少し違う気がするな。」

屯所に戻ってから、慌しいと藤堂さんは言った。
屯所の雰囲気も変わった。


「益荒男の七世をかけて誓ひてし ことばたがはじ大君のため」

「ん?どういう・・意味の句ですか。」

「・・気にすんな。何でもねぇ。たださ・・最近、思うんだよ。俺の居るべき場所って此処なのかなっ・・て。」

(えっ・・それは・・どういう・・)

新撰組も隊士が増え、組織が大きくなった。
そうなると意見の食い違いが目立つ。

「今まで同じだと思ってた理想が、新撰組として活動するうちに、皆少しずつ変わってきちまったみたいで。それって結局、新撰組の思想が分裂してるって事だろう。だったらその根源は早めに取り除かないと組の為にならねぇ。」

ワタシは難しい事は分らないけど
彼が悩んでいるのは、此処最近の態度で感じていた。

土方さんの掲げる思想と
藤堂さんの考えるソレとは
食い違いを見せていた。

刀に、土方さんと共に行くと誓った士道が
揺らいでいた。

「けど、俺は信じてる。俺が自分で選ぶ道は、絶対間違ってねぇって。」

ワタシは彼の意志の強さを、分らないながらも
感じていた。

不安そうな顔をしていたらしいワタシを見て

お前がそんな顔する事じゃないと藤堂さんは言う。

「俺は俺を貫く。ただ、それだけだ。なんの心配もいらねぇよ。」

こっちに来いと言われ、側に寄り添う。

「何があっても、お前を守るって言っただろう。俺はお前を絶対裏切ったりしない。信じてくれ。」

腕に抱き締められながら、頷く。

「・・・・たとえ俺が、お前の前から居なくなったとしても、俺が居る事を・・・お前を愛してる人が居るって事を忘れるな。」

抱きしめた腕を緩め、ワタシの顔を見る藤堂さん。

「だから、そんな顔すんなって。たとえばって言ってんじゃねーかよ。ほぉら笑え。俺はお前の笑顔が一番好きなんだ。」

そういって、ワタシの頬を軽く引っ張る。

「痛いっ。もうっ。」

ワタシも釣られて笑う。

「こっち向け。」


軽く口付けを落とされる。

「ずっと・・この唇で俺の名前だけを・・呼んでいてくれ。良いな。」

ワタシは頷いた。
泣きそうなる気持ちを封じ込めた。

「愛してるよ。これからもずっと・・。」

屯所内でこんなところを見られたら
切腹もんだと彼は言った。

「っ、さぁっ、そろそろ飯の時間だなっ。今日の飯はなんだ。」

「き、今日は焼魚ですよ。」

気付かれないように、目尻の泪を袂でぬぐう。


「またかよっ。」

「文句言わないのっ。」

ワタシは軽く藤堂さんの腕を叩いた。

「いてっ、分ったっ、我侭いわねーよっ。出逢った時からずっと変わんねーな、お前はっ。」

誰かがワタシの名前を呼んでいる。
戻らなくちゃ。

「さっさと行ってこい。」

「はい・・じゃ・・。」

ワタシは所内に小走りで戻った。


「本当、乱暴な女・・・」






風が藤堂の髪を乱す。


その後、暫く
俺は何処までも続く青空を眺めていた。
宛ての無いその先へ
俺は歩いて行けるだろうか。

池田屋で負った額の怪我はいつの間にか治っていた。
俺の身体は、俺を歩かせようと、日々"生"を繰り返している。

生きろ 生きろと

俺自身にそう伝えている。
ずっと膿んでた心の引っかき傷だって
お前と居れば、治るのかもしれない。

自分を信じてくれてる人が居る
と言うのは 本当に心地が良い。

それがたとえ
重く大きなものを 背負う事なのだとしても。

俺はそれを幸せに思う

咲き誇る花は
いずれ地上に舞い落ち 土へと還るだろう

俺も同じだろうか

生きてどこかで
"死"へと加速し 突然消えていくだろうか
だとしたら
俺はこの一秒、一秒を
絶対守らなければいけない。

刀を振り下ろすその一瞬に
俺の意思を 刻み込まなければならない

土方さんの為 新撰組の為
そして・・
お前の為に 俺は何が出来る

いくら考えても
正解だと言ってくれる人はいない。
それなら
全て自分で道を選び出さなければ

俺は 俺を貫く

それが新撰組の為になるのだと
そう 信じてる

弱い俺は きっと一人では逃げ出してしまうだろう
だから
お前と手を取り合って お前の笑顔を頼りに

なぁ
お前と居れば 俺は何処まででも強くなれる
そんな気がするんだ
この身がある限り
いや たとえこの身が朽ち果てたって

俺がお前を守ると 約束するよ

絶対に忘れないでくれ
突然 目の前から
俺が居なくなったとしても
俺はお前の中に永遠に生き続ける

愛してる

これからもずっと


-完-


※『益荒男の七世をかけて誓ひてし ことばたがはじ大君のため』
訳:「立派な男が来世にまでかけて誓う言葉は
  決して違えるものではない。
   天皇のために」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


◆総評◆

かなり・・堪えました。

平助君はワタシに会うまで
"死ぬ"事にあまり関心が無かったというか
真剣に捉えてなかったように思います。
なので『魁先生』の異名をとったほど、どの戦いでも
真っ先に切り込む事が出来たのではないでしょうか。。

ワタシに出逢い、一緒に生きていきたいと
強く思うほど、"死"が重く圧し掛かったきたのでしょうね。

彼は"死ぬ"事より、その後、皆、自分を忘れてしまうのでないか、
彼女も自分を忘れ、知らぬ誰かのものになってしまうのではないか
と言う不安に押し潰されそうになります。

逢瀬のシーンが一番、辛く、悲しい隊士だと思います。
自分を忘れないで・・
この言葉が一番色濃く、肌を重ねながらも、一つになれない
切なさが聴いていて胸が痛かったです。


江戸から京に戻り、新撰組が変化していた。
CDにはありませんが、彼が江戸に行ってる間に
山南が自刃し、この異常な状況に藤堂は
近藤・土方に不信感を募られせます。

史実通りであれば、彼は新撰組を離脱します。
そして、24歳の若さで討ち死にします。

そこは勿忘草
史実通りでなく、フィクションですからねっ。



今回のワタシはとても自然体でした。
藤堂さんと一緒に居て、同級生のような
幼馴染のような・・そんな雰囲気でしたね。
書いていて楽でした。
彼と楽しそうに江戸の町を散策するところは
私も一緒に楽しんでいました^^


下野さんの藤堂さん。

すいません・・下野さん
存じ上げなくて。。
本当に若い声優さん、、知らない・・・
これから勉強しますっ。
でも藤堂さんにピッタリでした!
今回、トラックの数が多かったと思いますが
気持ちの変化も演じ分けられていて
「愛してる」
って言葉が、もうとっても切なくて・・
聴く度に泣けてきました。
逢瀬と場面とラストで2回
この台詞出てきますが、BGMがここだけf.o(フェードアウト)するんですね
聴かれた乙女の皆さんは多分、泣いたかと思われます。

どうしょ・・下野さんのファンになりそ・・。


長くなりました。
読んで下さってありがとうございますっ。

後、お二人の隊士様残っております。

聴きこんでUPしますねぇ~。



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