新撰組黙秘録勿忘草~近藤 勇~② | 中島陽子のフリーダムなブログ

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新撰組黙秘録勿忘草~近藤 勇②

*ネタバレございます。
ワタシ目線で勿忘草を語ります。一部創作が入ります事をご了承願います。
大人な内容を含みます。ご注意願います。


$中島 陽子のファッション・コスメ館


*近藤 勇
CV:井上和彦







その日ワタシは、町までお使いに来ていた。
今日は市が開かれていて、混雑していた。

珍しくて、きょろきょろして歩いていると、誰かとぶつかった。

「おいおい、危ないな。」
「す、すいません。」


ぶつかった相手は近藤さんだった。
どうしてこんな所に。
近藤さんも同じように思ったようだった。

「屯所の外で逢うとは奇遇だね。目当ての物はあったのか。」

「いえ、お目当てがあった訳じゃないんです。お使いの帰りに寄っただけで。」

「じゃ、俺に付き合わないか。」

「でも・・帰りが遅くなると、沖田さんに怒られてしまいます。」

「ああ、それなら俺から総司に言っておくよ。それなら総司も許してくれるさ。そうと決まれば、早速行こう!おいで。」

近藤さんはワタシの手を繋いで歩き出した。

(てっ、手をいきなり繋がないで下さい。お父さん、お母さん以外と繋いだ事なんてなくて・・・でも近藤さんの手のぬくもりを感じて何だか心が温かくなった気がする・・)



近藤さんのお目当ては"刀屋"らしい。

屯所を抜け出して来たみたいで、後で又、土方さんにお小言を言われると、嘆いた。


(ぷっ、又、土方さんに怒られるんだ。前に土方さんに近藤さんが怒られてる所を見た事あるけど、大きな近藤さんが小さくなって、土方さんに怒られてるのはなかなか面白い。)

「新しい刀を買うんですか?」

「あ、話してなかったか?俺は刀に目が無いんだ。」
「美しくしなやかで持ち主を魅了するような刀も好きだし、肉と骨を同時に断つような凄みのある刀も好きだ。俺の虎徹は明らかに後者の刀になるだろうな。虎徹は俺の為に生まれてきた刀だと思ってる。」


近藤さんは頬を上気させて、虎徹の事を話し出した。
確か虎徹は、池田屋事件の時にも携えてあった剛剣と聞いた。
ワタシは近藤さんが虎徹を"人"のように言うのが
不思議で仕方なかった。

見つめるワタシに気付いた近藤さんは、ばつ悪そうに虎徹を腰に戻し歩き出した。


刀屋に入った近藤さんとワタシ。

近藤さんは掘り出し物だと言う刀を店主から受け取り
鞘から抜いて刀を見定める
ぶつぶつと一人事を言う近藤さん。

ワタシは近藤さんと刀を交互に見ていた。

(う~ん、ワタシには綺麗だと言う事くらいしか分からないわ)


どうも近藤さんは気に入らないらしく、刀も鞘に戻し店を出た。


「綺麗な刀でしたのに、どうして買わなかったのですか。」

「簡単だ。偽者だからだよ。」

「に、偽物?!」

あれは国光に似せて作った贋作だと近藤さんは言った。
店主は本物だと思っているようだか、目利きがあれでは店も長くは持つまいと
近藤さんは後ろでに店を見た。

「まったくの無駄足だった・・でもないか。お嬢さんと二人連れ立って歩く事が出来たんだ。やはり町まで足を伸ばして良かったよ。」

と微笑んでワタシを見た。

「もう少し早ければ一緒にかんざしや帯飾りなんかを見て回れてたのにな。今日は時間が無いから、、どうだ、次回の市も俺と一緒に行かないか。」

(ワタシは嬉しいんですが、土方さんは・・良いんですか・・又、怒られちゃうんじゃ・・)

「はい、ご一緒させて頂きます。」

「そうかっ、一緒に行ってくれるか!」

「ど、どうしてそんなに、嬉しそうなんです?」

「可愛い妹が他と男と出掛けないように、約束を取り付けたからだよ。」

(可愛い・・妹・・)

近藤さんは屯所の外に男を作るのは構わない。しかしワタシの兄と自負している自分からすると
何やら複雑な心持ちだと言う。

「今は考えないでおこう。その時が来れば考えれば良い。」

日が傾てきた、急いで帰ろうと、近藤さんは又、ワタシの手を繋いで屯所まで歩き出した。


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ある日の夜、近藤さんが部屋に訪ねて来た。

「お嬢さん、今良いか?入るよ。」

その声に緊張があるのを感じた。

「突然、悪いね。君に話しておきたい事がある。」

「は、はい、何でしょう。」

「・・・今夜俺達は討入りに行く。・・夜襲だ。」

「えっ!」

ワタシは手が震えた。

池田屋より派手な討入りにはならないと踏んでいると言う。

それでもワタシには・・。

屯所が手薄になるから、ワタシは外に出てはいけないと近藤さんに強く言われた。


「腕の立つ者を全員連れて行く訳じゃない。お嬢さんに危険が行く事は・・」

「ち、違うんです!・・・近藤さんが危険な目に合うのが・・・嫌なんです。」

近藤さんは、少し驚いた様子で笑いながら
「何を言ってるんだ。俺が輝くのは戦いの最中にいる時だ。元来は俺はそういう男だからな。だから大丈夫。この虎徹とある以上、俺は無敵だ。」

それは、そうかもしれないけど・・。

「今日はもう休みなさい。」

出て行こうする近藤さん。


「どうしても・・どうしても行くんですか。」

「止めてくれるな。この刀と新撰組に日本の未来が、掛かっているんだ。・・行けねばならない。」

「物騒な事は・・嫌いです。」


ワタシの両親が池田屋事件の巻添えで死んだ事を思い出した近藤さん。
それでも大切なものの為に戦わなければならない時もあると・・。

「お嬢さん、君だって俺が守りたい大切なものの一つだ」

近藤さんがワタシの目線まで、降りてくる。
戦う意味を諭す様にワタシに語る。

(分かる・・分かってる・・近藤さん達がこの国の為に戦っている事は・・。)

近藤さんは守るものが沢山あるからこそ、何処までも強くなれると言った。
自分が目指すものをワタシにも信じて欲しいと。

涙が滲んだ・・。

「なぁにお嬢さんが寝てる間に全てが終わってるさ。心配しないで・・それじゃ行って来る。」

近藤さんは出て行った。

(どうか・・ご武運を・・)

ワタシは、寝付けず夜を明かした。