新撰組黙秘録勿忘草~山崎烝④
*ネタバレございます。
ワタシが勝手に気持ちや言葉を語ります。一部創作が入ります。ご了承願います。
大人な内容を含みます。ご注意願います。
*山崎烝
CV:森川智之
ワタシはこの間、山崎さんに教えてもらった山に来ていた。
自分の朝餉を持って動物達にあげていた。
「ああ、やっぱり無事に見つけましたよ。近藤さんが心配していましたよ。貴女の姿が見えないと。居場所なら検討がつくから連れ戻して来ますと伝えました。」
「まさか本当にこの間教えた山にいるとはね。予想通り過ぎて驚きましたよ。」
「鳥に・・餌をあげていました。」
(ううっ・・顔をまともに見られない)
山崎さんは、居場所をちゃんと言って行くようにとワタシに言った。
「僕もこの場所は好きなんです。付き合いますよ。あっ、この蝶を見た事ありますか?」
「ただの蝶じゃないんですか?」
「いいえ、羽を広げたら違います。良く見ていてください。ね?綺麗でしょ?外側の羽が見る角度によって青や緑に輝くんです。毎年夏になるとこの辺りで見られるんです。あの蝶が一斉に空へ向かって飛び立つ様はなんとも言えず美しいんです。何度か此処にくれば見る事が出来るでしょう。」
他の隊士には此処は教えてないと言う山崎さん。
「なら、どうしてワタシには教えてくれたんですか?」
「貴女なら純粋に喜んでくれると・・思ったんでしょうね。」
「ありがとうございます。」
ただ、此処の事は誰にも教えないと約束して欲しいと山崎さんは言う。
・・でないとワタシを手に掛けてしまうかもしれないと・・
驚くワタシに
「ふふっ、冗談ですよ」
と笑った。
ワタシもこの蝶が一斉に此処から空へ飛び立つところを見てみたいと思った。
この人と一緒に
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最近嫌な夢を見る事が多くて眠れず、ぼんやりしていると
山崎さんが部屋に入って来た。
「どうしたのですか。こんな夜中まで灯りを点けて。」
どきりと心が鳴った。
夜中に好きな人が突然部屋に入ってくると
どうして良いのか、分からなくなる。
挙動不審になってないか心配だ。
「嫌な・・夢を見るので眠れないのです。」
「・・そうですか。僕でよければ眠れるまでお側に居ましょう。」
灯りを見ていると神経が興奮して眠れないから、灯りを消し
今日は満月だから月明かりだけの方が良いと言った。
薬箱から眠れる薬だといってワタシに白い包を渡した。
「苦いのは、嫌・・・。」
「ふっ、そんな子供みたいな我侭をいうんですね。これは最終手段として使うと良いでしょう。・・夜は色んな記憶を引きずりだす。楽しかった思い出や美しい景色までもが何故か切ないものに思えてしまう。」
「一人では眠れない夜もあるでしょう。ですが・・・今は僕が側にいます。」
山崎さんがワタシの手を取った。
「こうして手を繋げば、少しは安心出来るのではないですか。」
人の温かさは気持ちを落ち着かせると思うと言う。
それが大切な人なら・・
「今だけでも、僕を大切だと思って下さい。こんな僕の手でも安心出来るのかもしれません。」
(すでに大切な人だと・・貴方を大切と思っています)
目を閉じて、呼吸を深くして、僕の心臓の音を聞いてと言われた。
月明かりが、山崎さんの丹精な横顔を照らす。
ああ・・なんて綺麗なんだろうと思いながら
少しずつ意識が無くなった。
「・・ようやく眠りについたようですね。名残惜しいですが、この手を離しましょう。」
山崎さんがワタシの手を解いた。
ワタシの手から、熱が逃げて行くのを感じた。
「それにしても貴女は愚かな方だ。僕にこんな無防備な姿を自らから見せるなんて。忘れたわけではないでしょう?咄嗟の出来事ではいえ、貴女の唇奪ったではありませんか。それなのにどうして・・・僕を警戒しないんですか。」
そんなワタシを愛しいと思ってしまう。
貴女に触れさせてください。
と山崎さんはワタシの頬にそっと触れた。
「貴女の唇をまた・・奪いたくなる」
山崎さんはワタシに軽く口付けをした。
「ねぇ・・・起きて・・いるんでしょう?分かりますよ。貴女の事は全て。」
(やっぱり知られる事になってしまった。。。すぐ分かると思っていたけど)
「何故、逃げようとしないんですか。僕の口付けを待ちわびていたように睫毛が震えていた。もう・・目を開けてください。」
ゆっくりと瞼を持ち上げたワタシ。
「何時から起きていたんですか。」
「山崎さんが手を離した時から、起きていました。」
「ふぅ・・ゆっくり離したつもりでしたが眠りを邪魔してしまいましたね。目を覚ましていたのならどうして逃げようとしないのですか。危険を感じていたのなら僕が頬に触れた時に逃げるべきだった。違いますか?」
「・・・・」
「もし今、貴女が逃げないのなら僕は、容赦なく貴女を抱きます。」
「気付いているのでしょう。僕が貴女を慕ってる事くらい。」
目を伏せるワタシ。
貴方も、ワタシの気持ち、分かってるのでしょう?
そうでなければ容赦なく・・等、貴方の口から出る訳がない
「夕べ夜遅くまで剣術の稽古をしていた斉藤さんに、夜食を作ってあげていましたね。僕がそれをどんな気持ちで見ていたか・・貴女には分からないでしょうね。」
「ハラワタが煮えくり返るかと思いましたよ。どうして僕以外の人にも笑顔を向けるんだろうって」
「僕は確信しました。僕は貴女を自分だけのものにしたいのだと。」
「貴女が他の人のものになるくらいなら・・殺したっていい・・。」
これは・・嫉妬・・だ。
本当に殺めるのかは別として、この言葉は
狂おしいほど愛しいと言う気持ちの裏返しの表現なんだろう。
ワタシも・・この人と誰かが
一緒に居たなら、きっと殺めたいほどの感情を持ってしまうだろう。
「貴女は・・僕じゃ駄目ですか。・・ずっと黙っているつもりですか。・・前にも言ったはずです。嫌なときは嫌だと言うべきだと。」
「分かりました。無言は同意と受け取りますよ。」
山崎さんに、しっかりと抱きすくめられてしまった。
口移しに何かを飲まされた。
「な・・にを飲ましたの?」
「媚薬ですよ。貴女は僕の口付けを受け入れた。それならばこれからも貴女の唇は僕のものです。他の人間と口付けたりなんかしたら僕は容赦なく・・貴女を殺すでしょう。・・・口付けの仕方を教えて差し上げます。」
「こうして顔を近づけて・・唇が触れるか触れないかぎりぎりの所でこう囁くんです。」
「愛しています。」
何も考えられなくなってゆくワタシ。
「ねぇ・・本当の僕を、僕の全てを受け入れてくれますか。僕の事を愛していると言ってくれますか。」
「貴方を 愛しています」
やっと言えた・・。
本当はずっと言いたかった。伝えたかった。
ワタシの気持ちを。
「嬉しい。もう知りませんよ。ん・・貴女がいけないんです。貴女が・・・いけないんです。」
山崎の瞳にも、ワタシの瞳にも少し涙が滲んだ。
互いの身体におぼれてゆく。
自分の身体に傷を付けてと言う山崎。
どうして・・この人は自分を傷つけたがるのだろう。
此処に居る事を、生きている事を確かめるように。
何を不安に思っているのだろうか。
ワタシは彼を抱きしめた。
そして傷を付けた部分に口付けた。
貴方がワタシにそうしたように。
ワタシの首に紅い花を散らす山崎。
「僕は何度でも貴女を奪いに来ます。今夜貴女は僕のものになったのですから。」