「アンサンブル」(土曜10時)
かつて恋愛ドラマには、

親が許さないとか、身分の差とか、外的な障害があった。

それがなくなってドラマづくりが

難しくなったと言われて久しい。

なんだかんだと障害は見つかるものである。
 

「アンサンブル」では過去のトラウマが障害だ。

人気弁護士小川瀬奈(川口春奈)は

8年前恋人に突然去られたという過去がある。

同棲していた部屋がからっぽになったことに

ショックを受けた瞬間、踏切の警報音が響いた。

以来警報音がトラウマの引き金になる。

新人弁護士真戸原(松村北斗)は

5歳の時母親に棄てられた過去があり、

愛する人との別れが怖くて、

なかなか瀬奈との恋愛にも踏み出せない。
 

同じ弁護士事務所に勤めて、

周囲も温かく見守っているのに、

スムーズに進んでゆかないラブストーリー。

近年一番もどかしいドラマかもしれない。

 

持ち込まれる案件が男女間の問題なので、

二人の関係を反映している構図になっている。

しかし、「リーガル・ハイ」とか過去に

弁護士ものの傑作ドラマがいくつもあったので、

弁護士ドラマとしてはものたらない。

瀬奈は有能な弁護士という設定で、

確かに熱心かつ誠実に仕事に取り組んではいると思うが、

胸のすく活躍をするわけではない。
 

 結句、お仕事ドラマとしても、

ラブストーリーとしても、不完全燃焼。
 

 2月10日に30歳を迎えた、川口春奈も

年上の女になってしまった。

 

松村北斗は松本若菜、松たか子に続いて、

年下の恋人役。

実年齢はどのくらいの差なのか調べてみた。
 

    生年月日は    2025.3.3.現在での年齢差
松村北斗  1995.6.18
松たか子  1977.6.10       18歳差
松本若菜  1984.2.25       12歳差
川口春奈  1995.2.10.       1歳差というか、たった4ヶ月差

実年齢では、松村と川口はほぼ同年代。

松-松村、松本-松村といった

松だらけの本格的(?)年齢差とは違う。

ドラマでは瀬奈は真戸原を優しく抱いて

慰めるシーンなどあって、

年上感を出そうとしていた。

が、なんか仕事でやってるように見えた。

このあたりにも「アンサンブル」の

不完全燃焼感の一因がありそうだ。

ドラマがCMタイムに入ったと思ったら、

また川口春奈が出ている。

また出ている。

結局3社のCM

(JCB, 小田急グループ、MUFGナンタラカンタラ三菱)

にも主演だ。
 

干渉しすぎの瀬奈の母親役で瀬戸朝香が出ている。

かつてはザ・肉食系といった印象を与える、

いい女だった人である。

 

その他、光石研、板谷由夏、八木亜希子、田中圭、

と共演陣はなかなか豪華。

それだけにしっかりとした出来になっているところもあるが、

全体的には失望の一作だった。

「クジャクのダンス、誰が見た?」(金曜10時)
何年か前、「表現者」という言葉が流行った。

去年は「女優」という言葉が言葉狩りにあったようだ。

言いたい者には言わせておけばいい。

若手の女優の中で一番「女優」

という言葉が似合う女優、

それが広瀬すずだ。

 

松風(松山ケンイチ)に向けた、

理性的な信頼感でも、甘えでもなく、

内心の扉を無防備に開いて見せてしまったような表情に、

その片鱗が見えた。

<ストーリー>
山下心麦(広瀬すず)は愛する父晴生を殺害された。

犯人は晴生が22年前に逮捕した

資産家一家惨殺事件の

犯人・遠藤力郎の息子・友哉(成田凌)とされる。

父の遺した遺書に従って、心麦は弁護士・松風とともに事件の真相を追う。

信頼できると思っていた人が信頼できなくなる、

という不信感のドミノ現象が起きている。

 

そもそも自分は、心麦ではなく林川歌ではないのか、

という自己のアイデンティティまで疑惑の俎上にのぼる。

特別な能力のない平凡な娘が運命に翻弄されながら、

真相に迫ってゆく。

そして平凡な娘は

そもそも何者であるのか。

 

 

 

 

 

原作は人気漫画だそうだ。
「クジャクのダンス、誰が見た?」は、

誰も見ていなかったクジャクのダンスはあったと言えるのか、

というインド哲学の問い。

存在論と認識論の谷間で孔雀は踊る。
 

孔雀はともかく、広瀬すずのダンスなら

主演映画「ゆきてからぬ」の中で見ることができる。