話題の映画『ファーストキス』
(脚本・坂元裕二、監督・塚原あゆ子)を見ました。
<ストーリー>
カンナ(松たか子)と駈(松村北斗)は
結婚15年目にして、
すれ違いの末離婚することにする。
しかし離婚届を鞄に残したまま、
駈は駅のホームに転落した、
ベビーカーと母親を助けようとして
亡くなってしまう。
カンナは車を運転中、時空のはざまに飛び込み、
初めて駈と出会った、2009年に戻ってしまう。
過去に戻る方法を知ったカンナは、
駈に死を逃れさせようと
何度も過去へ旅するのだが…
<感想>
コメディのセンスがさえて、
松たか子さんのちょっとした閃きが
チャーミングなリアリティを生んでいました。
29歳のカンナはストレートのロングヘアで、そ
こには若く美しい松たか子さんがいました。
CDのジャケットだと
『いつか、桜の雨に…』あたりを思い出しました。
さすがにメーキャップ等よく出来ていて、
時間はわずかですが、
「20代の松たか子」は
この映画の見どころのひとつです。
カンナは過去を書き換えて
駈の死を避けようと懸命に
トライアル・アンド・エラーを繰り返します。
誰でもあの時こうすればよかったという
後悔のポイントはあるもの。
タイムトラベルは別の選択肢を選ぶための
枠組みとして機能しています。
森直人がいう「人生を検証する思考実験の装置」
(朝日新聞2月7日夕刊)。
最近の同様の例としては、
『retakeリテイク』が、
高校生が自主映画を撮影する日々を繰り返す、
というお話で、よく出来ていました。
!!!ここからネタバレあり!!!
ネタバレNGの人は→へ
過去の改変はなかなかうまく行きません。
緊急事態で警報のスイッチを押すことを
教えるというかなり巧妙な作戦の結果は、
たまたま居眠りをしていた電車の運転手が、
警報に驚いて急ブレーキをかけた結果
大事故を引き起こすことになると分かります。
カンナが駈の命を救うため未来から来たのだ
と知った駈は、
結婚生活をていねいに生き直し、
15年の幸福な結婚生活を送った後、
従容として死に向かいます。
前半は明るいラブコメ風の展開だったのが、
最後は難病ものと似た、
避けがたい死までの限定された時間を
生きる物語となっていました。
正直なところ梯子を外された感じでした。
面白くてちょっと切ない映画、
とくくれないシリアスさが待ち構えていました。
避けがたい死、とはいっても、
人命救助をやめれば死なずにすむわけです。
しかし、死の危険にさらされた人を見たら
放っておけない、というのが駈の選択です。
図らずも、運命と自由意志、
運命を受け入れるのか否か、
そもそも運命はあるのか否か、
というギリシア悲劇の昔から続く
問題群に逢着してしまいました。
運命…か。
そうです。
嘘のようですが、
→午前中樟葉で『ファーストキス』を見て、
午後はザ・シンフォニーホールで
ヴェルディの『運命の力』を見たのです。