METオーケストラのコンサートを聴きにGCenterに行ってきました。

訳すと、メトロポリタン歌劇場管弦楽団のコンサートを聴きに

兵庫県立芸術文化センターに行って来ました。

2日コンサートがあるうち

土曜(6月22日)のコンサートにしたのは

バルトークの「青髯公の城」が、演奏されるからです

(演奏会形式ですが)。

演奏される機会がまれなので、

これを逃すと生涯実演では聴けなかった曲になりそうなので、

高いチケットを買いました。

前半はワーグナー歌劇『さまよえるオランダ人』序曲と

ドビューシー歌劇『ペレアスとメリザンド』組曲(ラインスドルフ編)と、

すべてオペラがらみのナイスな選曲となっていました。

ちなみに演奏順は、

初演が、『オランダ人』1843年、『ペレアス』1892年、『青髯』1918年、

なので時代順になっています。
 

それだけではなく、

『ペレアスとメリザンド』と『青髯公の城』の

ストーリーには関係があるんです。
ポール・デユカスのオペラ『アリアーヌと青髯』の原作は

メーテルランクですが、

青髯の妻の一人がメリザンドなんですね。

だから正体不明のメリザンドは

実は青髯のもとから逃げてきたのだという解釈がなりたちます。

バルトークのオペラの台本はバラージュですが、

その台本のきっかけとなったのはメーテルランクの戯曲でした。

ちなみにパリのオペラ座公演『アリアーヌと青髯』を

見たのはやはりGCenter大ホールだったと思います。

冒険的プログラムと話題になってましたが、

チケットが売れず、

私が買った4万円以上のチケットが

どこかで1万円で投げ売りされていたとか、

関係していたテレビ局の社員が

無理やり買わされていたとか噂がとんでいたようです。
 

オランダ人は永遠に彷徨うようにと呪われた人物ですし、

3人とも謎めいた存在ではあります。

私の席は3階の右の隅っこでした。

C席28000円。

ちなみにSはジャスト4万円。

契約時には今ほど円安ではなかったでしょうから、

円建てだとMET側が損になったのかな。

今年来日するウィーンフィルのS席は

サントリーホールで45000円、

フェスティバルホールで53000円ですね。

あきらめましょう。
 

C席でもわりと見やすかったのですが、

前の席に座っていた赤い帽子をかぶったじじいが

ときどき前に身を乗り出すのにイラつきました。

この頭(こうべ)に災いよ下れ、

カラスの糞が落下するか、

カラスにつつかれよ、

と心の中で呪っておきました。
 

わりとよく客は入っていましたが、

1階一番前の2列は空けてありました。

とにかくガランチャを近くで見たい

という人もいそうなので、オケ側の要求ですかね。

後半、指揮者の前にスペースが空いていたので

歌手はここかと思ったのですが、

指揮者のヤニック・ネゼ=セガンが登場しても

まだ二人の歌手は出てきません。

吟遊詩人の前口上が始まってしまいました。

古い言い伝えに耳を傾けなされ…という感じの

ナレーションは録音でした。

演奏が始まりしばらくして

おもむろに左から青髯役のクリスチャン・ヴァン・ホーンが、

右からユーディット役のエリーナ・ガランチャが登場します。

空いたスペは通りこしてオーケストラの前に出ます。

前面に、バスバリトン、指揮者、メゾソプラノが並ぶと、

巨人族に小人が挟まれたような絵になってしまいました。

一応説明しておきますと、

43歳でネゼ=セガンはMETの音楽監督に就任した(2018年)、

世界最高の指揮者お一人です。

まあ、だいぶ金髪がまばらになりかけてましたが。

アクションも大きくとてもエネルギッシュな指揮ぶりです。

ガランチャは以前

ザ・シンフォニーホールでのリサイタルを聴きました。

アンコールが7曲という

haricot rougeが聞いた、史上最多アンコールで

記憶と記録に残る演奏会でした。

そのときの印象と比べるととても声が柔らかくなった、と感じました。

キリ・テ・カナワのさよならコンサートのときも

同じように感じたので、

GCenterの大ホールの音響がだいぶ影響しているのかもしれません。

haricot rougeはソプラノのキンキンした、

またはか細く震えるような声は好きではなく、

甘いメゾが好きという19世紀フランスのブルジョワ的趣味なので、

とても心地よく聞けました。

しかし視覚的には、ガランチャはかなりシャープな顔立ちで、

ほとんど真剣に問いただすような堅い表情でした。

 

ここで荒筋を紹介すると、

家族も婚約者も棄て、

ユーディットは青髯の城へとたどり着きます。

暗く湿った城には7つの部屋がありました。

ユーディットは青髯に

部屋を空ける鍵を次々と要求してゆきます。

それぞれの部屋に秘められていたものとは…

1時間ほどのオペラですが、

ほとんどの時間は女が男を攻めてゆく感じになっています。

 

映像で見た『青ひげ公の城』としては、

2012年サイトウ・キネン・フェスティバル松本の公演がありました。

エレーナ・ツィトコーワは華やかなドレスで

表情たっぷりの歌いぶりでした。

ガランチャとは対照的に

女であることをいやがうえにも強調した感じの

ユーディトでした。

 

ガランチャの衣裳は上が胸元が開いた黒で、

裾が広がるスカートは白地に黒で植物柄がプリントされたものでした。

かなり大きなイヤリングに、

両手の薬指に目立つ指輪を嵌めていました。

クリスチャン・ヴァン・ホーンは

濃紺のスーツに同色のシャツ、ネクタイ抜きでした。
 

オケの方は左から

第1バイオリン、チェロ、奥にコントラバス、ビオラ、第2バイオリン。

ウィキペディアによると

バルトークの指定は4巻編成で16型とのことですが、

第1バイオリンは数えてみると⒕でした。

フルート、トランペット、トロンボーンは4。

舞台裏にトランペット4,トロンボーン4の指定があるそうですが、

気がつきませんでした。

カーテンコールのときも出てこなかったようなので、

なかったんでしょう。
舞台奥にハープが2台。

支柱と台座が真っ赤で、

サウンドボードには金色のラインが入っていました。

ハープは大好きな楽器ですが、

ちょっと見たことがない、

真っ赤なハープとは変わった趣味だなー、と思いました。

 

演奏は最高でした。

最初ホルンがちょっと裏返った音をだしたりしていたけれど、

オーディオでは味わえない豊かな響きを楽しめました。
 

カーテンコールの最後にネゼ=セガンが、

こういった曲のあとでアンコールを演奏するのは無理だけど

また明日来て下さい、的なことをいってたようです。

6月23日の公演の曲目は
モンゴメリー:すべての人のための賛歌(日本初演)
 モーツァルト:アリア「私は生きます、でもどこへ」「ベレーニチェに」*
 *ソプラノ:リセット・オロペサ
 マーラー:交響曲第5番
S席36000円、C席24000円とそれぞれ4000円も安い!

ガランチャ+クリスチャン・ヴァン・ホーン-リセット・オロペサファン

=4000円