「光る君へ」を見て

「源氏物語」を読み始めた人もいることでしょう。

たいていは現代語訳でしょうが、

原文に挑戦という人も

いくらかはおられるでしょうが、

なにしろ長い。

 

小学館の新編日本古典文学全集全88巻のうち

6巻が「源氏物語」です。

4巻を要しているのが

「萬葉集」、「今昔物語集」、「太平記」です。

物語では「うつほ物語」が3巻。

量的にも「源氏物語」が圧倒的な存在感を示しています。

古典は「誰でも題名は知っているが、

誰も読んだことのない作品」

などという言葉もあるくらいです。

なかなか読めないのが普通。

とはいっても、普通のままじゃつまりません。

テレビドラマが読むきっかけになるなら、けっこうなことです。

私は2002年から2004年にかけて

「源氏物語」を全巻をひととおり読みました。

当時週5日勤務で

朝5時40分に目覚まし時計をセットしていました。

しかし毎朝5時には目が覚め、

どうしても二度寝ができません。

その時間を有効に使おうと、

5時40分になるまで

寝床で日本の古典を読み始めたのが発端です。

小学館の新編日本古典文学全集というのは

注釈/本文/現代語訳と三段組みになっています。

それほど古文を読む学力がなくても

これなら読んでいけそうだと思いました。

全集88巻のうち66巻くらい読んでみようと考え、

それを「マイ古典プロジェクト」と名付けました。

(高校生の頃読んだ本も含めて)

ざっと32冊くらい読んだところで、

いったんやめて、

今年大河ドラマに影響されて「大鏡」を読んでいるところです。

いったんやめたのは漢詩がとても好きになって、

漢詩と古文と両方読む余裕がなくなったからです。

話を「源氏物語」に戻しますと、

40分でだいたい4頁読めたので、

1日4頁をノルマと決めて読むことにしました。

1冊が480頁なら120日、

1年で3冊、

2年で全巻読める計算になります。

そして計算通りに読み切れた、

というだけのことです。

4頁だと2回頁をめくることになります。

頁をめくって先へ進むというのがポイントだと思います。

小学館の全集版では、

1頁か2頁に1回、

赤い文字で内容を要約した

タイトルのようなものをつけてくれくれているので、

頁数とその赤い文字を目印にして

その日に読むのはここまで、と決めました。

実はこのノルマ制読書は

中学2年生のとき「聖書」を

1日50頁をノルマとして、

1ヶ月かけて通読した頃にさかのぼります。

別に信仰の道を求めたわけではなく、

「西洋の文化を理解するには

『聖書』、ギリシア・ローマ神話、中世の騎士道物語

を知らねばならない」と何かで読んだからです。

haricot rougeは

根っからの教養主義者だったんですね。

世界文学の中でも第一級の作品とされている

「源氏物語」ですが、

とにかく1回は読んでおかないと、

自分なりの評価を持てません。

原文で読みかけて途中で挫折するよりは、

現代語訳で最後の「夢の浮橋」まで読んだ方がいいと思います。

なぜなら最後の「宇治十帖」は

これぞ傑作中の傑作だからです。

大きな物語のうねりがあって、一つの長編小説として読めます。

「須磨」あたりでだれて

読むのをやめてしまうのは惜しい。

最初に、光源氏の登場しない「宇治十帖」を

読むのもいいかもしれません。

小学館版では第5巻途中からと第6巻ですね。

さて、haricot rougeの考える「源氏物語」の評価とは

全体が長すぎる。

結局光源氏と女たちの物語なので、

途中から新鮮味がなくなってくる。

宇治十帖以外は連作短編集なので

長編小説を読んだときのような、

大河に悠々然と運ばれている感じはない。
 

各編だいたいある程度のレベルを保っている点は評価できる。
もちろん、

登場人物も多い大長編を破綻なく

書き通せたというだけでも立派。

文章が長すぎて読みにくい。

現代文ならいったんその辺で切っておきましょう、

と指導が入りそうな文が多い。

文章は「枕草子」の方がずっといい。

女性作家の作品なのに、

それほど女性心理が微細に描かれていない。

その点、「夜の目覚め」では

微細な心理分析がなされいるが、

それはそれで物語の進行を阻害する。

光源氏が父だと知った冷泉帝と

光源氏が対面する場面は、

小説的興趣をそそる面白い場面だ。

しかし、光源氏の内面は描かれず、

現代の作家ならもっと面白く盛り上げられそう。

着物の色についての細かい描写がよく出てくるが、

「紫式部日記」にも同様の描写があって、

なんという頭のよさかと思った。

見たものを一瞬で記憶してしまう

写真記憶の持ち主だったのだろう。

それには感心するが、

和歌と着物の色が

物語の進行を阻害しているのは間違いない。

その点、すいすい進む玉蔓の物語は面白かった。

結末はがっかりだったが。

 なにしろ

20年以上前に読んだときの感想なので

勘違い等もあると思います。

 

 

でも、とにかく、読んでなきゃ悪口一ついえないでしょ。