今年になってまだ7本しか映画を見ていない。
その中で、ベストは『PERFECT DAYS』
次点は『枯れ葉』。
 

名匠ヴィム・ヴェンダース監督とカウリスマキ監督の作品の中でもそれぞれわりと入っていきやすい作ではないかと思う。

『PERFECT DAYS』は主演の役所広司以外にも石川さゆりや三浦友和が出ているし、

異次元の色彩に眼は釘付けになってしまうが、内容はいつも暗いカウリスマキ作品だが、ハッピーエンドだし。

しかし、正直な話、一番気楽に楽しめたのはウッディ・アレンの『サン・セバスチャンへ、ようこそ』だった。

 

<ストーリー>

主人公モートは以前大学で映画を教えていたが、今は人生初の映画を執筆中。

映画の広報担当の妻スーとサン・セバスチャン映画祭へやって来るが、妻

とフランス人監督フィリップとの浮気を疑い、

ストレスから診療所に行くことになる。

そこで知り合った浮気性の夫との生活に悩む医師ジョー

(ジョー役のエレナ・アナヤが可愛かった)に恋心を抱く…

といったストーリーで、

モートが映画の夢を見るようになるというのが映画祭にちなんだ趣向である。

フェリーニの『8 1/2』、ゴダールの『勝手にしやがれ』など映画史に残る名作ばかりだが、

『PERFECT DAYS』や『枯れ葉』をあらがたりがる筆者の趣味と一致している。

しかし名作もコメディーのネタとして使われているだけで、軽い扱いである。

ざっくりいうとわりと裕福なインテリの世界なので、

それが現実を忘れて楽しむというエンターテイメント性のベースになっている。

一方、『PERFECT DAYS』の主人公はトイレの清掃員だった。

映画を見てから、
ビルなどのトイレに入るたびに、

このトイレ、役所広司さんのような人が掃除してくれたのかな、

それとも柄本かなと考えるようになった。
 

 『枯れ葉』は厨房の下働きとか工員とか、すぐクビにされたりする底辺の労働者の世界。
 

ついでに他の作品も職業チェックをしてみよう。

『流れる』…置屋が舞台なのでおもに芸者さんたち。

成瀬巳喜男監督1956年公開の作品。

田中絹代、山田五十鈴、岡田茉莉子などスター女優勢揃いの傑作。
 

『笑いのカイブツ』…構成作家。
 

『燈火(ネオン)は消えず』…ネオン作りの職人。

香港ではネオンが法律で禁止されて激減しているらしい。

それにもめげずネオン作りに情熱を燃やす職人の世界。
 

『葬送のカーネーション』…無職のおじいちゃん。

老いたムサは亡き妻の遺体を故郷に埋葬するという約束をはたすため、

孫と一緒に棺を運ぶ旅をする。

棺を背負って、幼い孫娘に端の方を持たせて、歩いて運ぼうとするんだから。

ムリだー。
 

もちろん『葬送のフリーレン』とは何の関係もありません。

『サン・セバスチャンへ、ようこそ』のモートも実質的には無職だが、

美人医師とデートしたり暢気なものである。

ウッディ・アレン作品としては平均点といったところかな。

とはいっても美男美女が予定調和的結末へ向かって

障害物競走を繰り広げるだけの

ラブコメとはひと味違ったスパイスが効いている。

ウッディ・アレンを知らない人にはちょうどいい入り口の一作となるでしょう。