女優で見るか、監督で見るか、
なんていう問題をあっさり解決してくれるのが、
シネ・ヌーヴォの「奇跡の女優 芦川いづみ映画祭」だ。
好きな女優が出ている映画が見たいに決まってるだろー。
朝10時から午後4時55分まで4本を一気見しての、
ちょっとした感想文。
「喧嘩太郎」:
芦川いづみの婦人警官姿の小さな写真を、
みなみ会館の月間スケジュールかなにかで見かけて、
一目で参ってしまった覚えがある。
婦人警官役で出ているのがこの作品だった。
1960年/カラー/シネスコ
「誘惑」:
千田是也演ずる50代の画廊の主人を
中心とした若者たちの群像劇。
芦川いづみが演じるのは
千田がキスさえできずに別れた初恋の人とその娘の二役。
左幸子、渡辺美佐、中原早苗、轟夕起子などが
出演している中で、
芦川の清涼感のある美しさがひときわ際だっている。
キーとなる娘役を担当したのも納得。
左幸子は子供の頃、
なんとなく個性的なオバさん、というイメージだったが、
その個性的な容貌のせいですぐに分かった。
なんとなく小林聡美を思い出した。
中原早苗ともども若い。
この中では渡辺美佐は
唯一舞台でも見たことのある女優だが、
轟夕起子とともに誰か分からなかった。
千田是也という名前を聞くと演劇界の偉い人、
というイメージしかわかなかったが、
お金はあるけどお腹の出たさえない中年、
という役どころで、そういうイメージしか抱けなくなった。
画家の岡本太郎、東郷青児が画家役で出演している。
東郷青児は顔を知らなかったので分からなかったが、
岡本太郎には台詞もある。
例のぐいぐい前へ出ようとする迫力ありすぎの演技だった。
当然カメラは引き気味。
やっぱり面白い人だなあ。
中平庚の最高傑作と言われているそうだ。
1957年/白黒/スタンダード。
「知と愛の出発」:
芦川いづみは女子高生役で、
夏なのに長袖のホワイト・セーラーを着ている。
袖とセーラーには2本の白いライン入り、
なにかレースのようなスカーフを結んでいたような気がするが、
なかなかおしゃれな制服である。
半袖にしようとすると
デザインがうまくいかなかったのかもしれない。
長袖でもホワイト・セーラーなのであまり違和感はない。
芦川いづみのセーラー服が見られるだけでも
ありがたい映画であるが、
ホテルのウェイトレスの制服姿もあるし、
私服のAラインのワンピースなど
50年代のファッションも素敵だ。
舞台となっているのは諏訪湖と南アルプス。
チラシを見ると、「待望のカラー版が復活」となっているのだが、
灰色の服かと思ったら、赤くなったり、色彩がふらふらしている。
どうか4Kリマスター版を作って下さい。
1958 年/カラー/シネスコ。
「無鉄砲大将」:
芦川は和田浩治演ずる高校生が
「お姉さん」と慕う年上の女性を演じている。
和田浩治は顔立ちといい、体型といい、
裕次郎ダッシュという感じで、
台詞の歯切れがあまり良くなく、幼さを感じさせる。
こういう設定の場合、やはり和田の思いは届かず、
芦川はヤクザ稼業
から足を洗った葉山良二と結ばれるというハッピー・エンド。
まあそれはどうでもよくて、
監督が鈴木清順だという点が特筆される。
清順は
松竹時代から芦川いづみを気に入っていたのだとか。
芦川は、清順の映画にはもう1本
「散弾銃の女」にも出演しているそうだ。
鈴木清順は浪漫三部作が京都シネマなどで上映中だ。
これも忘れず見に行かないと。
やっぱり監督も無視できないな。
1961年/カラー/シネスコ。