京響のコンサートに行って来ました。といっても定期ではなく、

ワーグナー生誕120年×没後140年『ニーベルングの指輪』より(ハイライト・沼尻編)という

とても長いタイトルのついた特別な演奏会です。
 

『指輪』は上演に4日もかかる大作なわけですが、

1時間程度の管弦楽作品に編曲する試みは様々に行われてきました。

大フィルと大阪交響楽団の定期演奏会で管弦楽のみの『指輪』を聞いたことがあります。

今回は4部作のそれぞれから1曲か2曲チョイスされているのですが、

「ヴォータンの告別と魔の炎の音楽」ではバリトンの青山貴さんが、

「ブリュンヒルデの自己犠牲」ではソプラノのステファニー・ミュターさんが歌う

というのが特色になっています。
ミュターさんは前半で「イゾルデの愛の死」も歌われました。

1曲目は「マイスタージンガー」の前奏曲で、演奏が終わってから、

ソリストを入れるためにヴァイオリンの席を少し移動させる作業が必要でした。


京都コンサートホールでは

オーケストラは階段状の台の上で演奏することになっています。

客席からはすり鉢を真っ二つに割った断面を見ている感じです。

ソリスト抜きだと第1、第2プルトまでが平地で、第3プルトは1段上、第4プルトはさらに1段上…

となっているのを、平地を第1プルトだけにして、順繰りに後ろにずらす感じです。

他のホールではヴァイオリンとか、ヴィオラだとかは一番手前の人しか見えないとこもよくありますが、

こういう配置だと演奏者全員がよく見えるようになります。

第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン合計26名のうちなんと23名までが女性でした。

わりと女性が多いなとは思っていましたが、これほどとは。

男性はコンサートマスターとその隣とその後ろの一人だけでした。

そのほか、ホルン4本+ワーグナーチューバ4本(たぶん持ち替えありかな)、

そして何とハープが4台(全部女性)、という大編成でした。

 

開演前には4人のハーピストのうち唯一の京響メンバーである

松村衣里さんによるロビーコンサートが行われました。

最初の方のお話を聞き逃してしまったのですが、ベックメッサーハープという珍しい楽器による演奏です。

「マイスタージンガー」の中でちょっと調子外れのハープが聞こえてきますね。

あれです。小型の白いハープでペダルはついていました。

酒井健治作曲『チャーム』(2022年)と

川上統作曲『亜竜木』(2023年)という委嘱作2曲を演奏されました。

珍しい楽器が見られて幸運でした。

 

さて準備が終わると、

大変体格の立派な女性が舞台の袖から姿を現したと思うと、

客席へと階段を下りてしまいました。

演劇では俳優が客席に下りる演出はよくありますが、

どうする気かと見守っていると、

その女性は中央まで進むと階段を上って、舞台に立ちました。

これがミュターさんでした。

指揮者の沼尻さんは第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの通路を通って、

まあ小さな丘を越える感じでやって来たのですが。

オケの乗っている台は舞台の端まで来ていてオケの前を通るわけにはいきません。

超豪華客船はスエズ運河を通過できなかった、というわけです。

管弦楽だけというのも好きですが、

ミュターさんと青山さんの歌唱が加わったせいで

オペラを堪能したかのような気分になれました。

 

びわ湖ホールで足かけ4年がかりの『指輪』の全曲演奏という大プロジェクトが

コロナのせいで『神々の黄昏』が配信になってしまったのはかえすがえすも残念です。

いつかリベンジ公演をしてもらいたいです。

来週11月25日(土曜)2時半からは定期演奏会があります。

モーツァルトの 交響曲 第31番 ニ長調 K.297 「パリ」と

ブルックナーの交響曲 第4番 変ホ長調 「ロマンチック」(1888年稿 コーストヴェット版)です。

 

 

 

 

 

 

お暇な方は是非京都コンサートホールにお越し下さい。