中学生の頃ゲーテの「若きウェルテルの悩み」を新潮文庫で読みました。
当時中学に一人しかいなかった若い女性の国語の教師―当然男子生徒全員の憧れの的―から、「ウェルテル」を読んで分かるのか、と聞かれたことを覚えています。僕はけっこう早熟でフロイトやニーチェも読み出していた頃だったので、何故哲学書でもない小説を読んで分かるかと問われるのかといぶかしく思ったものです。
中学生の国語力に対する不信感からか、自殺するまでに思い詰めるほど激しい恋愛感情が分かるのか、といいたかったのか。
amazonで高橋義孝訳の新潮文庫版をチェックすると、「昭和26年1月刊行、125刷215万部の超ロングセラー。」だとか。文学部にとっていい時代だったようですね。
あれから半世紀以上を経て、ドイツ語で「ウェルテル」を読んでみました。
大学ではドイツ語をとらず、NHKラジオのドイツ語講座で勉強し続けたものの、英語やフランス語ほどの語学力はないのですが、とても強力な味方がありました。
第三書房、ドイツ名作対訳双書「若きヴェルテルの悩み(全)」を持っていたのです。 「あとがき」には1951年8月となっているので、おそらくその年のうちに発行されたのでしょう。僕の本は「1976年8月30日 29刷発行」のものです。部数は分かりませんが、25年間に29刷、とは語学書としては大ベストセラーですね。
学部生の頃買ったのか、もっと後か分かりませんが、少なくとも40年は書棚に鎮座したままだったわけです。
積ん読万歳!
303ページで定価1000円。もちろん消費税などという忌まわしいものがなかった頃のはなしです。
ところがインターネットで調べると、第三書房は昨年倒産してしまったようです。
第三書房版の編者星野慎一氏は「元来、この小説は、ドイツ語としても、かなりむづかしいのである」と書いています。
第三書房の本がなければとても最後まで読み切れなかったろうと思います。
僕のわずかな読書経験からいうと、ヘッセの「デーミアン」、ヘルダーリンの「ヒュペーリオン」よりも難しかったです。
ありがとう、第三書房。