昨日みなみ会館で『眠る虫』(金子由里奈監督)、『にわのすなば』(黒川幸則監督)、『大阪古着日和』(古山武士監督)と三本の映画を見た。
三本目の『大阪古着日和』は見るかどうか迷っていた。人気のお笑い芸人主演で古着の話という内容だが、お笑いにも古着にもそれほどの興味はないからだが、見て良かった。
『眠る虫』。ギターケースを背負った若い女性(松浦りょう)が、バスの中で聞いた鼻唄に惹かれる。鼻唄の主である黄色い服を着た女性を追跡して、生きていた頃その女性が住んでいた家に行き着いて一泊するというストーリー。その女性は幽霊だったわけだ。ギターのメロディーが印象的な音楽映画でもある。生が死によって断絶されるのではなく、本作では「幽霊」という存在で生が延長、もしくは変容している様を描いているようだ。去年やはりみなみ会館でみた甫木元空監督の『はるねこ』を思い出した。
主演の松浦りょうは第一印象ではけっこう存在感を感じたのだが、思い返すと幽霊の追跡をしている間圧倒的な闇に呑みこまれそうだったような気がしてくる。公式サイトの「儚くも圧倒的な存在感を放つ」という評言も納得できる。
『眠る虫』は6月1日(木)までの一週間限定上映なので、気になる、という人はお早めに。
『にわのすなば』。サカグチは友人の紹介で十函(とばこ)という町を紹介するショートムーヴィーを撮る仕事の面接に来る。その仕事は断るものの、町の様々な人物と知り合ううち町をふらふら彷徨って行く。その最初の面接の場面で、どうして監督はこのカワシママリノという女優を主演に据えたのかという疑問を感じた。顔を見ると若いような、そこそこの年のような、台詞回しは棒読みとまではいかないが他の出演者に比べると心許ない感じ。わりと主体性なく出会った人に合わせてふらふらしている主人公なので、あまり存在感があり過ぎる人ではまずかったのかな、という程度のことしか思いつかなかった。インターネットで見つけた記事、「映画『にわのすなば』黒川幸則監督、カワシママリノ、村上由規乃インタビューhttps://www.1st-generation.com/?p=7717#outline__2_1」では、監督は「配役に少し迷いましたが、カワシマさんなら性別に拘らない役作りができると思いサカグチにしました。」と語っている。「性別に拘らない役作り」。うーん、そのあたりにポイントがあったのか。映画はきままに知らない町をぶらつく楽しさを味わわせてくれて地味めな旅の味わい。
古着をリフォームする教室に行って見るというエピソードがあって、個人的には『大阪古着日和』に偶然つながってしまったのがほんちょっと秘かに楽しかった。一日に三本くらい映画を見たり、映画を見てから演劇を見に行ったりするとときどきそんなこともある。