今東宝系の映画館で宝塚の『巡礼の年~リスト・フェレンツ、魂の彷徨』が見られるんですね。見逃した方、もう一度劇場での興奮を味わいたいという方是非映画館へいらして下さい。

S8  巡礼の日々・1(ジュネーヴの森)アルプスの大自然と接して、マリーとリストは本来の自分を取り戻す。
 趣旨としては結構だと思うのですが、事実はというと
 1835年6月14日バーゼルを出発した2人は7月19日ジュネーヴに着くまで、あちこちスイスを旅行しています。『巡礼の年 リストと旅した伯爵夫人の日記』(青山ライフ出版)の中の「スイス旅行」はこの間マリーがつけていた日記です。p.77~p.78にはその詳しい旅程が載っています。リストの『巡礼の年』には『ヴァレンシュタットの湖で』という曲がありますが、ヴァーレン湖を訪れたときの記述もあります。p.79には原著の注が「ヴァレンシュタット湖」となっているのを「ヴァーレン湖」と訂正しておいた、という訳者の注がついています。ヴァーレン湖の畔にある町がヴァレンシュタットWalenstadtです。ドイツ語を囓った人ならStadtが「都市、町」という意味だというのはごぞんじでしょう。ついうっかり間違えてしまいやすいので気をつけましょう。」閑話休題。
  「自然」についていうと、マリーは貴族のお嬢様だったわけですが、とても自然豊かな中で村の子供たちと一緒に遊んだり、父親にくっついて釣りや狩に出かけたりして育ちました。自然が大好きでした。一方リストはあまり自然に興味がなく、マリーとつきあっていた頃だけ自然に関心を向けたと言われています。

S9 巡礼の日々・2(フランツとマリーの山荘)パリから芸術家仲間が押しかけてくる。
事実:ジュネーヴでは街中に暮らしていました。自然の中で暮らしていたと言えるのはむしろジュネーヴに落ち着くまでの期間です。しかしサンドが子供連れでやって来て、リスト、マリー、アドルフ・ピクテとともにシャモニーへ小旅行をしたという事実はあります。この頃はサンドとマリーも仲がよくて、とても楽しい旅行だったようです。ピクテはこのときのことを『シャモニー旅行 幻想小説』Une course à Chamonix, Conte fantastiqueという小説にしました。ユーモアも幻想味もあって愉快な作品です。当時好評だったようです。