本との出合い方、向き合い方 | PARISから遠く離れていても…/サント・ボームの洞窟より

PARISから遠く離れていても…/サント・ボームの洞窟より

わが心の故郷であるパリを廻って触発される数々の思い。
文学、美術、映画などの芸術、最近は哲学についてのエッセイも。
たまにタイル絵付けの様子についても記していきます。

 本とは私にとってはかけがえのない友のような存在である。

 物心ついた時からその年代による興味に応じて様々なジャンルの本をそれなりに読んできたと思っている。ここで私が言う本とは主に小説やエッセイ、ノンフィクションなどである。具体的には日本や海外の小説を中心に、評論集、心理学、宗教、哲学、芸術、旅に関するものなどだろうか。

 人はどういうふうに読む本を選ぶのだろうか。どういう本と出合うかは人との出会いのように重要で、その後の人生にも多大な影響を及ぼすものだと思う。それは最初の一歩からおそらく始まっているのかもしれない。

 私が初めて自分の意志で自分のお金で初めて買った本は、アンドレ・ジッドの「狭き門」(新潮文庫)と、ほぼ同時期に購入した三島由紀夫の「仮面の告白」(新潮文庫)である。いずれも高校一年の時にタイトルに惹かれ偶然手に取ったものだった。(中学までの読書体験は今振り返ると貧弱なものだった) 

 

 

 これを機に私の読書人生はスタートしたといってよい。

 両作家については元より何の予備知識もないままの偶然による出合いであったが、この二冊をきっかけにまず同作家の他の作品に始まり、その後は同時代の作家による作品などへと展開していった。それに関連し私が非常に拠り所としたのは、文庫の巻末に必ず付いている作家の著書と名前だけが整然と並んだ出版社による本の紹介ページだった。「ここに載っている本なら間違いはないだろう」と思いつつも、さてどれから読み始めたらよいものかと思案に暮れた日々が今思えば懐かしい―。

 

 その後、たまにベストセラーなるものに触れる機会もあったが、やはり読んで良かったと思えるものは数少ない。最近では特に自己啓発本と言うものが随分話題に取り上げられたりもするようだが、私は正直この手の本は苦手である。

 中には手に取るのはこの手のものばかりという人々もいるようだが、手っ取り早く人生の指南書ばかり読んでも身に付くものでもない。例えばこうしたら絶対異性にモテるとか金持ちになれるというなら誰もが人生はバラ色に満ち悩みなどないはずである。そういう人に限ってやたらに読んだ数ばかりを得意げに吹聴したがる傾向にあるように思える。遠回しに言ったけれども、私にとって読書は量より質の方が大事なことは自明である。

 尚、一応断わっておくが、世の中には例えば推理小説や、歴史小説ばかりを片端から読んでいくマニアというのが存在するようで、これは今回の自分のテーマと異なるので除外させて頂く。

 最近の傾向としては、他人に「何か面白い本あったら教えてほしい、読書したいが何を読んだらいいのか自分ではよくわからず困っている」という人も多いとよく耳にするが、私にはこれが不思議でならない。

 そもそもそこの<他人>というのがまず問題で相手が誰でもいいというわけにはいかない。面白さというのはあくまでも主観によるものが大きい訳だしその種類もさまざま。ネット書店による読者の感想というものもそういう意味では同じである。私ならこの人が勧めるモノなら間違いはなさそうだと思える相手でなければ決して尋ねはしないだろう。

 

 何を読んだらいいのかわからずに困っているという人がいれば、私ならまず本屋で半日でも数時間でもぶらぶらとコーヒーでも飲みながら棚を眺めることを提案する。今は昔では想像もできなかった形式の本屋というものが存在するようだから。

 

本よろしければコチラをご参考までに。

以前書いた記事のリンクになりますが、先に挙げた写真の2冊の紹介もあります

下矢印

 

 

 

 

 

 

 それでタイトルでも作家名でもいいからとにかく気になった小説かエッセイでも一冊買い求め、つまらなくても(面白ければラッキー)最後まで読み通すことをお勧めする。身銭を切ったものであれば人は多少忍耐を強いられる結果になろうとも我慢し最後まで読み通すことができるのではないかと思っている。そうやって最後のページを捲る頃には少なくともある結論は出るはずだ。

 つまり面白ければ続けてその作家の本を読めばいいし、つまらなければそれはそれで自分が読みたいのはこういうものじゃなくて…というものが少なくとも掴めるわけだ。そういう作業を繰り返すことにより、だんだんと自分の求めているモノに近付いていく…。

 大事なのは<自分で読む本を選ぶ>という行為なのだ。

 先に挙げた最近の読書傾向の例を人に当て嵌めてみればよくわかるだろう。

 「誰(何)かいい人(本)がいたら教えてほしい。誰(何)かと付き合いたいがどんな人(本)を選んだらいいか自分ではよくわからずに困っている」

 かけがえのない友を見つけ出すのにはもちろん勘に頼る場合もあろうが、ある程度の失敗や経験を重ねることも必要。決して人任せにはできないものなのだ。

 

 さて最近の私の本との向き合い方は、主に昔読んだお気に入りの小説を読み返したり、以前は難しくて理解できなかったエッセイなどをじっくりと味わったりと旧交を温めているといったところだろうか。出合いの方に関しては、お気に入りの作家が一目置いている作品や影響を受けた作家のもの、また新聞の読書欄でチェック済みの気になるリストの中から探すことも多い。

 

 今後の人生でどんなかけがえのない友と出会えるか、またその出会いはどのようなものであるのかが楽しみである。

 

 

 

よろしくお願いします

下矢印

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