パサージュ巡り④パサージュ・ジュフロワその2<後編・人はなぜ蝋人形に惹かれるのか> | PARISから遠く離れていても…

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わが心の故郷であるパリを廻って触発される数々の思い。
文学、美術、映画などの芸術や、最近では哲学についてのエッセイなども。
時々はタイル絵付けの仕事の様子についても記していきます。

Stopこの記事は後編になります。まだ前編をお読みでない方は先に、コチラからどうぞ!

 

(後編)

前回はミュゼ・グレヴァンの蝋人形たちの写真の数々を御紹介したが、楽しんで頂けただろうか?!

ところでちょっと原点にかえって、蝋人形とはいったい何なのかを考えてみよう。

蝋(ロウ)で作られる彫刻。その通り。

少し資料を当たってみた。

マダムタッソーでは、蜜蝋(働き蜂の巣を構成する蝋を精製したもの)と植物性の蝋を混ぜた200年前から続く方法を取り入れている。眼 目の色は水彩絵の具で着色、髪ヒゲ髭は人間の髪を使っているという。一体を作るのに20人編成チームで4ヵ月ほどかかるそうだ。

 

          ビヨンセのモデルを使って紹介されている

                     蝋人形の作り方

 

歴史としては

●古代からデスマスクが作られ、中世には社会的身分の高い人の風貌を後世に伝えるための手段として蝋面が用いられるようになった(フンフンなるほどー)。

●蝋人形の直接的原型は、医学的必要性から研究用の死体保存のための「蝋解剖模型」として誕生した。17世紀にはこの死体を蝋人形化する技術がヨーロッパで完成された。

ええっ?死体を蝋人形化する!!

この言葉にピンと反応した自分。幼い頃の恐怖の理由が無意識にここにあったことをもう認めないわけにはいかない。

さらに次の記述を見つけたとき、(さかなクンではないが)目力ギョギョギョとなったのだった。

 

個人が、キライな人物に致命的なケガをさせたいという願望を蝋で表現する習慣があった。

 

より効果的になるよう、犠牲者の爪や髪もつかわれた(単に本物に似せるためではなかったのだ…)。

そしてこれは17世紀まで行われ、19世紀まで迷信として残った…。

迷信といえばまだ少し聞こえはいいが、これはあきらかに呪いではないか。

普段は奥に隠しているが人間というものが持つ心の闇の深さというものをいやでも考えずにはいられなくなる。蝋人形の作家は女性が多かったというが。

ちなみに、グレヴァンで最初に作られた蝋人形は、彫刻家ロダンと作家のヴィクトル・ユゴーだったという。ユゴーのほうはともかく、ロダンは、弟子で愛人だったカミーユ・クローデルに深い同情を寄せた女性蝋彫刻師が、カミーユの代わりにロダンに密かに呪いをかけるために作ったのでは?と好き勝手に想像してしまうのだ。

 

さてここで、最初のタイトルを今一度思い出してほしい。

<人はなぜ蝋人形に惹かれるのか>

好奇心。どれほど人間とそっくりなのか観てみたい!

だがその純粋とも無邪気ともとれる思いの底に存在しているのはやはり怖いもの見たさなのではないか。蝋人形の単なる見た目のことではなくて…ここまで言えばもうわかると思うが、私が言う恐怖とはただいま上に挙げた理由により、己の隠された秘密にしておきたい心の闇を見つめずにはいられなくなることへの恐怖を指す。無意識であるにせよないにせよ。

これが怖いものみたさの本当の正体ではないだろうか。

最後に現代の日本でも、もしあなたがお望みならば、(理由は問わず)個人でも蝋人形を製作してくれる場所を見つけたので紹介しておこう。

 

東京都杉並区にある蝋人形製作所 右コチラ 「蝋プロ」

一枚の写真や絵からでも制作可能。期間は1ヵ月~半年。

たとえば、女房、旦那、別れた恋人などをプライベート発注すると幾らかかるのか?

一体、150~800万だそうだ。

 

これは高いか安いのか、自分がいちばん気になる人の顔を思い浮かべて考えてみたらどうだろう。

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