Christophe Lindenlaubはこの村で唯一の自然派ワイン生産者。
12ヘクタールのぶどう畑を持ち、1759年からのワイナリーだが、彼の代までは牛も飼っていた農家だったそうだ。
自然派ワイン生産は2012年からで、なんと10種類ほどの自然派ワインが揃っており、今では自然派ワインに特化した生産者。
けれど昔からのお客様もいるため、簡単に自然派ワインのみに変更することは味的にも値段的にも難しく、他にも通常ワインも生産している。こちらの通常ワインは値段もかなり安く、Christopheさんのお勧めでもないようで、テイステイングはしなかったのだが、通常ワインは昔ながらのアルザスワインという印象だった。
「昔ながら」というのは、これがアルザスワインの一つの問題でもあるのだが、ひと昔前はアルザスにはドイツを含めて多くのお客が車でワイナリーに直接ワインを買いに来て、大量にワインを買っていた時代だった。なので、値段も安く、大量に販売していた時代があった。
それが最近では若者もそこまでワインを消費しなくなり、大量購入をしていたドイツからのお客も減り、ただワイナリーでお客を待っているだけではワインが売れない時代になってきている。
その為、ワイナリーから飛び出し、外に出てマーケテイングやセールスに力を入れているワイナリーは販売を伸ばしていくし、世代交代でSNSなどを有効活用しているワイナリーもある程度注目され顧客を掴むことができるだろう。
という事は生産数で薄利多売を目的とするのではなく、ワインそのもの質を上げ、値段もある程度上げて、良いものをちゃんと販売していく必要があるのかもしれない。
また、今こうしてオーガニックワイン、ビオデイナミワイン、そして自然派ワインなども注目されており、通常のワインよりも料金が多少高いこともあるが、これから日本からもこういった個人ワイナリーの個性あるワインが注目され、インポーターさんが新しいワインを探しに来ている気がする。
こちらのワイナリーは自然派ワインらしい味わいで、日本には北海道のインポーターさんが輸入しているそうで、ここ数年前から日本にも入り始めているそうだ。しかしながら、全体の生産本数は50000本ほど、そのうちの5000~6000本ほどが日本に輸出されているそうなので、日本での購入もかなり限られているとも言える。
なによりの特徴はこちらのエチケット。
後ろのエチケットも読めば品種も分かるが、とにかくアート重視で可愛い柄のものが多く、また、詩的ネーミングのワインばかりだ。こういった所にブランディング化、差別化が伺える。
飲みやすいシルバネール(Sylvaner) のMatin fou (直訳はバカな朝だけれど、意訳すると騒がしい朝、みたいな、そんな感じだろうか…)。名前に似合わず、のみやすい口当たりも良いワインだった。
Je suis au jardin と同じ品種のmo mintara もmuscat だが、日本用の特別キュベだそう。日本はやっぱり限定ものとか,好きだなあという印象だ。
エチケットもインポーターさんが制作されたそで、もちろんこのワインはフランスでも買えない。アルザスワインなのに日本限定キュヴェ。
「フランスでは買えない、アルザスでも買えないワインなんだよ。」と言うことでボトルだけ見せてもらった。
En Equilibre (バランスよく、という感じの意味)。品種はリースリングだが名前の通り、色んな意味でバランス良いワイン。
そして同じくリースリングだが、こちらはA GRIFFES ACEREESという鋭い爪の意味を持つワイン。名前のごとく酸味が強く、ちょっと辛口な、そんなリースリングだった。
Un Jour Je Serai (ある日私は知るだろう)はなんだか意味深なネーミングだがこちらも品種はリースリング。こちらのリースリングは品種ではなく、逆に土壌を大切にしたワイン。土壌の味が楽しめるワインとも言える。
この三種のリースリングの飲み比べをするだけで、今までのリースリングの固定観念が吹き飛ぶような、そんな3種全く違うワインだった。同じ品種でもこんなに違うワインができるんだと改めて感じた。
リースリング好きなら、是非この3種全部試して、リースリングの味に驚いてもらいたい。
ELLE FANTA あの、ジュースのファンタと掛けているネーミング。ELE FANTA CITRONはリースリングのマセラシオン
ELE FANTA ORANGEはAUXERROIS(オクセロワ)のマセラシオン。
2種お試しすると、確かにCITORONの方がリースリングの酸味を感じ、ORANGEの方がまろやかな味わいだ。
余談だが、私はワイン初心者だ。実際はワインのプロでもなんでもない。けれど、私みたいな初心者でも気軽に飲めるのがアルザスワインだと思っている。今回の訪問でも、Chritopheさんが色々説明してくれている時に、自然派ワインでも意外とスッキリとすんなり飲みやすいワインがあって
「口の中に優しいワインですね。」というワインの表現らしくない表現を使ったら、
「その表現、分かりやすくていいね!」と気に入ってくれた。
まろやかな口当たりで、まあるい味がして、ツンと突き出た味や香りなどがなく、口の中でとても「優しい」感じがした。
Christopheさんのワインはそんな優しい味わいのワインが多かった。