いわゆるクリエイティブな作業にいそしむ人間、小説家、作曲家、画家、デザイナー、建築科etc....。彼らが作品を生み出すときには、悩んで、混乱して、辛い状態に陥る。この作品は、創作に苦しむ主人公、映画監督グイド・コンティーニが苦しみの果てに生み出された妄想のコラージュである。

 

  アイディアが浮かばず、固まりかけた構想が飛んでいってしまい、考えがあちこちに散らばってしまって、まとまらない。

 自分の脳内をあれこれ検索しているうちに、昔のこととか、過去の恋人とか、成功した作品とかが思い浮かぶ。

 苦しいので、逃げようとして、楽しい思い出とか、おいしいワインとかを、思い浮かべる。

さらに、助けを求めて、ママのこと、それに引きずられて、子供時代の怖いことを思い出したりする。

 

 この混乱するイメージを見える化したのがこの作品。面白かったですねえ。

 

 

 ラストにピストルが現われのを解釈すると、

①死ねば創作の苦しみから解放される、死への願望。②自分はなんと不信心な人間なのかという自責の思い。③いろんな人に迷惑かけてる自分の罪業を悔いる。加えて芸術家一般の罪深さの象徴と見ることもできる。グイードコンティーニの個人的な体験が、普遍的なものに昇華されているのが奥深いです。

 

 鳳月杏さんが、素晴らしすぎ。一つ一つの、動きが素敵すぎる。

チャーミングで艶やかでありながら、品があって、可愛らしいさもあって、女性にすぐに甘えてしまう狡さもあるのだけれど、許されてしまう男。自己愛、自己中男なので、男性俳優が演じたら、許せないキャラクターかも。ちなつさんだから、ニコニコと見ていられる。

 

 対する女性陣も充実。天紫さんの妻ルイーザ。妻の貫禄十分で、愛人があまた居てもドンとしているようで、苦しみで溺れそうな悲しみが溢れていました。

 輝月さんはもう、言うことなしの存在感。夢奈さんの包容力あるママや、女優の礼華さんの往年のハリウッド女優を思わせる豪華さ。皆さん高音がしっかり出ていて驚きと共に感激しましたね。娘役さんたちも、上手で美しすぎ。

 

そして、演出の指田珠子さんの腕の冴え。この作品を演出する人は、イメージが沢山湧いてきて楽しいだろうと思う。

終始、華麗で、豪華、素敵な夢を見せてくれました。

 

 物語性の薄いこのような一見、難解作品を宝塚で上演する必要がないとか意見もありますが、こういう作品をすると、生徒のやる気が高まり、隠れた才能が見いだされたりして、宝塚全体のレベルが上がると思います。

 鳳月杏さんの名前と共に、忘れられない名舞台になりましたね。