土台がしっかり固まっているので、その上に構築された物語は、ぶれずに、しっかりラストまで運ばれていくがために、お話が気持ちよく収まっていく。構造が緻密に計算されていて、沢山のシーンが交通整理されているので、物語の展開に戸惑うことがない。

 物語は渤海という歴史上あまり耳にしない国を舞台にした貴種流離譚をベースにしている。

 身分の高い者が放浪して世界を見て国に帰って善政をするというパターンを見事に使いこなし、哀しく切なくもドラマティックなお話を展開している。

 

 細部の仕掛けもたくさん考えられている。インソンと王妃の結婚式の髪の毛の袋が、別れにまた出てきたりして涙を誘うとか、妹の結婚衣装の赤が、再会したセオンとインソンのラストシーンに使われたり、渤海の歴史書とか、セオンが絵描きというのも後から意味を持ったりして、細かいアイディアに満ちている。

 宝塚は上田久美子さんという、素晴らしいストーリーテラーを失くしたけれど、新たに、平松さんを得て幸いです。

 

 上田さんと平松さんとの違いは、細やかな心理描写が平松作品にはあることです。上田さんは恋愛感情の機微とか、行動の奥に潜んだ心理のあやとかにはあまり興味がないようなのですが、平松さんは少女コミックのようにその辺を大事にしていて、そこが乙女心を刺激します。

 役の配置も見事で、沢山の役を作って、それぞれの見せ場を作っています。ここいらあたりは柴田先生を思い出します。

 

 

 彼女の戯曲は一般の男性作家とは違います。平和主義、フェミであり、宝塚史上初めての主役がBLでありました。フィナーレのデュエダンは男役同士でびっくりです。

 

 乱世を扱う場合には我が国とか、国家とかが声高に叫ばれて、国の為に戦うシーン等の勇壮な話が多いのですが、平松様は、平和主義、個人の命を大事にし、高麗へと、国をあげてエクソダスをします。軍事力が跋扈するきな臭い今の世界の中で、しっかりと、人道主義を主人公に選択させています。

 そして、王妃もディズニーの主人公のように聡明で政治に参加し、刀を抜いて戦います。

 

インソンとセオンの関係は最初は恋と気づかない。しかし、世間や、自分の偏見から自由になって、恋心を発見するのです。成長物語でもあります。

 

 役者さんも、やりがいのある役をもらって、全力で演技してました。作品は役者を育てるのです。

 礼華さんは、時に力が入りすぎがちなのですが、自然体の国王で一皮むけました。彩海さんも、朴訥で、心根の優しい青年をうまく描き出して良かったです。王妃の乃々さんにはびっくり、気品と強さがしっかりと表現されて、演技も歌も抜群で研3とは驚きです。瑠皇さんも美しい悪役でアピールしてました。

 夢奈さんはいつの間にか貫禄十分になっていました。

 やはり、重ねて言いますが、作品は役者を育てますねえ