1930年代にあったであろうクーデター事件をテーマにしているのだが、リアルではなく、おふざけタッチで描いていく所が見どころだ。

結末は「あぁ又、あれなのね」的に興ざめになってしまうのだけれど。それまでの半ばミステリアス、半ばサスペンス、半ばコメディ、半ば愛の物語、半ば反戦という要素を、ノンシャランなタッチで描いていく様は興味津々で、監督の才覚に感じ入ることしきり。

 車のひき逃げシーンや、内臓の腑分けとかで度肝を抜き、血みどろの野戦病院、変な看護師、義眼コレクション等々、おかしなシーンの連続で監督はウエスアンダーソン?とか思ってしまったくらい。デビットOラッセル監督、有名だったのは知らなかった。

 

 加えて、俳優のしたたかさ、カメレオンと言いきれるクリスチャンベール、彼の怪演が、なかったらこの作品は成立しない。

 凄い業師だったのねと再発見したマーゴットロビー。こんなに美しかったとは、スケート選手とはまったくちがってた。彼女の出演作を待つという楽しみが増えた。。

 立ってるだけで大物、ロバートデニーロ、そのほか、くせ者だらけで演技合戦も見もの。デンゼルワシントンの息子さんは面白くなかったけどね。

 アムステルダムで、はっちゃけた青春を過ごす三人は、当時の思想運動「ダダ」運動を連想した。既成の価値観をぶち壊す芸術、社会運動。自由な生活を捨てて、故郷に帰ってしまうあたり、望郷の念を抱いてしまうのは自由であることは不安でもあるのだろう。

 面白い映画だし、キャストは素晴らしいのだけれど、日本ではヒットしないだろう。文化的成熟度というかな。