奄美大島の16歳の高校生、界人と杏子の二つの家族をたどりながら、大きなテーマ、死と再生を描いている。海に囲まれ、波や風雨、樹木や花が直に人々の生活や精神に入り込んでくる。村落共同体が未だ生きている島、ほのかに呪術的な香おりが残る島でこそ、語ることのできる物語。

 人は、自然の営みの中の一つであり、その侵し難い力の中に生活している。人の生も死も大きな繰り返しの中にある、ものすごく東洋的な世界が語られる。500年もの時を経たガジュマルや、荒波、風の音、岸壁に打つ寄せる荒波、祭りに屠られるヤギ、映像は生々しく映し出す。

 そこは素敵なんだけれど、界人と杏子たち本人や家族の物語が、月並みなのだね。よくあるお話だし、最もいけないのは、杏子の父とかが語る、人生訓みたいな言葉、登場人物が口にする言葉や会話が陳腐で、聞いていられないくらい恥ずかしい。

 「萌えの雀」の圧倒的な自然、呑み込まれそうなみどりの深山、日差しの中にほとばしる水しぶき、縁側に黙って座る老婆、寡黙なのに、いっぱい語りかけてきたあの世界はどこにい行ってしまったのかい。

 常田富士男さんの存在感が素晴らしかった、彼が語るなら許せるのよね。